- 2011-02-26 (土) 20:16
- けいおん!
「やっぱり、だめ、かな…。」
「…。」
練習が終わったあと、忘れ物に気付いて教室に戻ってきた。
置き勉なんてするからこうなるんだと澪の小言を右から左に流しながら、私は走った。
教科書を鞄にしまっていると、ガラリと引き戸の開く音がした。
振り向くとそこにはムギがいて、真剣な顔で私にこう言った。
「りっちゃん、私…りっちゃんのことが好き。」
にぶい私でもこれには流石にピンときて。
何言ってんだよと笑い飛ばすことすらできずにただ佇んでいた。
「だからね、その…付き合って、欲しいな、って…。」
そうして冒頭。
間抜けな声を発しながらムギを見る。
消え入りそうな声。
ムギは今にも泣きそうだ。
私だって、結構困った顔をしているはずだ。
だけど、夕日の逆光で私の顔はちゃんと見えないんだろうな。
きっとそれがムギをさらに不安にさせているんだ。
だから私はムギに近づいた。
私を好きというムギを気持ち悪いとは思わなかった。
不安を感じているなら安心させてやらないと。
私はそのことで頭がいっぱいだった。
「ムギ…。」
どうしていいのかわからなくなって、
どう言ってあげたらいいのかわからなくなって、
その場しのぎでムギの頭に手を伸ばした。
ドンッと音がして。
視界にいたはずのムギが見えなくなった。
だけど、その姿は探すまでも無い。
「…お、おい、ビックリしただろ?」
ムギは私に勢い良く抱きついていた。
元々は頭を撫でるために伸ばした手が、
行き場をなくしてムギを抱き締め返す。
「ありがとうな。」
こんなことしか言ってやれない私はきっとバカだ。
こんなことしか言ってやれない私を好きになったムギはきっともっとバカだ。
「ごめんね…変なこと言って…。」
「変なことか、確かにな。」
そう言って私は誤魔化すように笑った。
「こんなこと急に、迷惑でしょう?」
「迷惑なんかじゃ、ない。ただ、ちょっとビックリしてる。」
「…。」
「時間をくれないか。」
「え…?」
「考えさせて欲しい。」
考えさせて欲しい、なんてよく言ったもんだ。
残酷な現実を先延ばしにしているだけじゃないか。
傷つけたくないんだ。
傷つきたくないから。
そんな私の気持ちには気付かず、ムギは私の胸で泣き続けた。
「ありがとう…、私、嫌われちゃったら…どうしようかと、思って…。」
途切れ途切れ、喋るのもやっとといった様子で
不安を吐露するムギを少し可愛いな、と思ったものの
これはそういう気持ちではないと妙に冷めたもう一人の自分が耳元で囁く。
返事を先延ばしにされるのも想定内だったのか、
とりあえずは最悪の事態は免れたと安堵しているみたいだ。
「心外だな。」
思ったままを口にした。
「え?」
「嫌いになんて、なるわけない。」
「でも…。」
「それとこれとは話が別。とにかく、ムギを嫌いになったりはしない。」
「そう…ありがとう。」
「お礼言うところじゃないぞー?」
ムギの頭を軽く小突く。
何故か嬉しそうな表情を浮かべて、一呼吸置いてから。
「ありがとう、りっちゃん。」
ムギはまた私にお礼を言った。
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それから数日が経った。
ムギへの返事は、まだだった。
どうしていいのかわからない。
酷い話だけど、最初は断り方を考えていたんだ。
だけど、なぜ断らなければいけないか、その理由を考えれば考えるほどわからなくなっていった。
考えていく内に、ムギと付き合うということに私は何も抵抗を感じなくなっていく。
でも、ムギのことが好きなわけじゃないんだ。
要するに、付き合うってことが具体的にどういうことなのかが私にはわからないんだと思う。
澪に相談…はしなかった。
ムギはきっとずっと一人で悩んで、一人で考えて、一人で決めたんだ。
あの告白からそれは容易に想像できた。
私も同じようにしたい。
単純だけど、そう思ったんだ。
「……。」
こんな時期に屋上に一人、ただの不審者だな。
寒さに震えながらそんなことを考える。
「りーっちゃん!」
「のわぁ!?」
「えへへ、ビックリした?」
「…心臓止まるかと思ったぞ。」
声の主はムギだった。
これまたすごいタイミングでお出ましだ。
「ねぇ、りっちゃん。何してたの?」
「うーん、考え事。」
「そうなんだ。何を考えていたの?」
「お前のこと。」
「……!」
なんちゃって、そう言って誤魔化そうと思ったのに。
あんまりムギが嬉しそうにするもんだから私はその言葉を飲み込んだ。
その表情が無性に可愛かったからかな。
この先の人生、いつ振り返っても今の私の気持ちをズバリ言い当てることは出来ないだろう。
今まで迷ってたのが嘘みたいに。
霧が晴れるように。
「あのさ、ムギ。付き合って…みないか?」
私は提案した。
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「ねぇ、りっちゃん。今度の日曜日、買い物に行かない?」
「はは。ムギ、今日が何曜日か知ってるか?」
「えっと、土曜日かしら。」
「今度の日曜日って明日だぞ。」
あはは、と笑い合う。
あれから私たちは『一応』恋人同士だ。
私はまだムギのことが好きじゃないけど、付き合っている。
どれだけ考えても結論が出なかったから。
二人で話をしてこういう形に落ち着いた。
?私は、ムギのことが好きだけどまだ好きじゃない
?…
?ごめん、意味わからないよな
?ううん、わかるわ
?…私な、考えたんだ。人を好きになるってどういうことか
?うん
?だけどな、まだわからないんだ
?そっか…
?だから、私に…教えてくれないか?
?え…?
?だからさ…
簡単に言ってしまうと所謂『お試し期間』。
だけど、合わなければすぐにポイッな関係になりたかったわけじゃない。
好きじゃないから本当の意味では付き合えないかもしれない。
だけど、できることなら気持ちに応えたい。
その上で二人で導き出した道なんだ。
私は本気だぜ。
今まで気付かなかったムギのいいところや知らなかったことにたくさん気付きたい。
一つでも多く見つけて、少しでも好きになりたい。
ムギには申し訳なかったけど、
『その気持ちが嬉しい』とこの関係を快諾してくれた。
その時の笑顔を見て、ちょっぴりムギを可愛く思ったのは内緒。
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ある日の部室。
ティータイムの和やかな雰囲気の中で澪が口を開いた。
「なぁ、これ。」
そう言って机の上にチラシを置く。
私達はそれを見て固まる。
「澪、これ…。」
「ガールズバンドしばりのライブイベントだ。出てみないか?」
耳を疑った。
私たちは三年生、つまり受験生だ。
唯や私ならともかく…。
まさか澪が率先してこんなことを言い出すなんて思ってもみなかった。
「でも、これ…思いっきり受験シーズンじゃないか。二ヶ月後って…。」
「あぁ。でも持ち時間も少なめだし。新曲じゃなくて今までやった曲の中から選んで出ればいいと思って。」
確かに。
転換込みで30分っていう短めの持ち時間も今回ばかりは有り難い。
「あぁ、私このイベント知ってますよ。」
「へ?なんでだ?」
「純が前にこのフライヤー持ってきてくれたんですよ。HTTで出たら?って。」
「そうなの?初耳だよ。」
「だって受験勉強忙しそうでしたし…。」
「そうだったのか。」
「はい。だから、澪先輩が言い出してくれてすごく、その、嬉しいです…。みなさんはどうですか?」
「……。」
賑やかだった部室が急に静かになる。
唯は、言うまでもなくやる気だろう。
なんの曲がいいかなーなんて言いながらやりたい曲を指折り数えている。
ムギを見る。
イタズラを思いついた子供のような表情をしている。
よし、決まり。
「やろうぜ。」
久しぶりに私達はバンドという形で話し合いをした。
選曲はあれがいいとか、それだとこの曲とノリが被るとか。
セットリストはこうしようとか、MCに澪も挑戦してみれば?とか。
もちろん速攻で断られたけど。
そんなやりとりすらも久々で、私達は笑い合った。
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私とムギの関係はあの日からあまり変わっていない。
たくさんの時間をムギと過ごした。
だけど未だに私の気持ちは変わらないままだった。
日を増すごとにどんどんと焦りを感じていた。
いつまで待たせるんだって、自分に苛立つ夜は増えていった。
「ねぇ、りっちゃん。」
「どうした?」
「明日、お買い物に行かない?」
ムギは『お買い物』が好きだ。
月に数回は必ず行っている。
でも大抵は何も買わずに二人で街をぶらぶらしておしまい。
こんなことを何度も繰り返して、ムギは楽しいのかな。
もしかしたら私が何かアクションを起こすことを期待しているのかも知れないとも考えた。
だけど結局、何も思いつかなかった。
「あぁ、いいぜ。どこいく?」
「いつものところでいいわ。」
いつものところ、駅前のことな。
「あぁ、わかった。何時にする?」
「いつもの時間でいいわ。」
いつもの時間、これは朝の11時。
ちょっと街をぶらついて、一緒に昼食をとってまたぶらぶら。
それが私達のデートの『いつもの』。
果たしてこれはデートと呼んでいいのか、それはわからない。
だけどムギはなんだかんだで楽しそうだし、今はとりあえずそれでいいのかなと思っている。
そう、今日は大切な話があるんだった。
「なぁ、ムギ。ちょっと聞いて欲しい話があるんだ。」
「どうしたの?」
首を傾げるムギはいつ見てもやっぱ可愛い。
「軽音部のメンバーにな…。」
「う、うん…?」
「私達のこと、話したんだ。」
怒るかな。
怒るよな。
ごめん。
「それは…どうして?」
「昨日、ムギは練習来れなかっただろ?」
「えぇ。家の用事で…。」
「い、いやそれはいいんだよ!えっと、そのときに…澪に聞かれちゃってさ。」
「聞かれたって、何を?」
焦っているような、泣き出しそうな、そんな様子で私を急かす。
そりゃ、そうだよな。怖いよな、ごめん。
「お前ら最近なんか変だ、って。だから、実は付き合ってるって言った。」
「……。」
「む、むぎ…?」
「どうして…?」
「え?」
「どうして、言っちゃったの…?」
やはり私はまずいことをしたらしい。
「ごめん。澪達に、隠し事したくなくて…。」
「……。」
「…ごめんな。」
「……。」
ムギは何も言わなかった。
普段、私は人を怒らせるとヤバいと感じる。
だからなんとか取り繕ってその場をしのごうとする。
だけど今は違った。
怖かった。
勝手なことをしたせいで、ムギに嫌われてしまったら…?
そんな風に考えると、無性に怖くなって私も何も言えなくなった。
「……。」
「……。」
なんでだろうな。
これが澪や唯、他の親しい人達だったら…
ごめんって!なんて言って、半ば強引に許しを乞えるのに。
なんで、こんなに臆病になっているんだ。
ムギが私を好きだと言ったから?
なんか違う気がする。
「ねぇ、りっちゃん。」
思考がまとまる前にムギは私の名前を呼んだ。
「な、なに?」
かっこ悪ぃ。
どもってしまった。
「澪ちゃん達は、なんて?」
今にも泣き出しそうだ。
あぁ、そうか。
ムギは知らないのか、この話の結末を。
だからこんなにも不安そうなんだな。
「別に、知らなかったってビックリしてたよ。」
「それだけ?」
「いんや。」
「……。」
私を見つめるその視線が少し痛い。
続きを聞きたいんだろう、だけど怖いから聞きたくないんだろう。
私は構わず続ける。
早くこの話をして安心させてやりたいから。
「あとな、怒られた。」
「え?」
「どうしてもっと早く教えてくれなかったんだ、って。すげー怒られた。」
「…!」
「唯と梓はおめでとうって言ってくれた。」
「そ、そう…なんだ…。」
すごく、嬉しそうだった。
信じられないといった様子で口元を両手で隠しながら、今度は嬉し泣きしそうだ。
問題は私だ。
この件に関して大きな罪悪感を抱いている。
それはムギのいないところで勝手に話をしてしまったということだけではなくて。
まだムギのことを「そういう意味で」好きになってはいないのに。
隠し事をしたくないという私の我侭を押し通して、
我慢できずに軽はずみに付き合っていることを話してしまった。
それが本当の罪悪感の正体だと思う。
「ムギ?」
「よかった…よかったぁ…!」
嬉しくても悲しくても結局泣くのか、お前は。
急にどうしようもない衝動に駆られてムギを抱きしめた。
ムギはしばらく私の腕の中で泣いていた。
得体の知れない充足感で満たされる。
これはなんだ?
気持ちの正体を探るように私はムギを抱く腕に力を込めた。
だけど結局わからずじまいだった。
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???
その日の夜。
ベッドに横たわりながら最近のことを振り返る。
先日、澪がイベントに参加しないかと言い出してくれたことをきっかけに
私たちはバンド活動を再開させた。
澪には感謝しなければならない。
昔の澪なら、バンドをやりたいって気持ちがあったとしても、あんなことは言い出せなかったと思う。
すごく勇気がいる提案だっただろう。
私ですら躊躇う、と思う。
自分がライブやりたいって言い出したせいで誰かが受験に失敗したら…なんてな。
周りを振り回したり巻き込んで何かをやる、なんてことが澪にも出来るようになったらしい。
あいつもあいつで成長してるんだな。
そう思うと嬉しくもあり、ちょっと寂しくもなった。
「勝手だなぁ、私。」
だけど、そんなこんなでバンドは順調だ。
セットリストも決まったし、演奏し慣れた曲ばかりだからそれぞれの負担も少ないだろう。
なんだか物足りない感じもするけど、それは仕方ないだろうな、うん。
「……。」
今日の、あの感覚はなんだろう。
思考がジャンプする。
ここで、私はムギを抱きしめた。
今までだってそんなことしてきた。
だけど、今日の感覚はいつものそれとは明らかに違った。
どうしてだろう、どうしてだろう。
私は告白されたあの日以上に自問した。
どうして?、と。
そういえば最近、ムギのことばかり考えている。
もちろん、好きになれるように努力するんだから、それは当たり前なんだけど。
じゃあムギに『もう考えなくていいよ』って言われたら…。
私はムギのことを考えないまま生きていけるのかな。
「……。」
明かりのついていない暗い部屋にも目が慣れてきた。
不意に隣にムギがいるんじゃないかという錯覚に陥る。
首を少し動かす、布がこすれる音が妙にうるさく感じる。
「…いるわけ、ないよな。」
何をやっているんだ、私は。
「阿呆らし、寝よ。」
そんな風に言い放ったくせになかなか寝付けない夜だった。
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「おーっす、待ったか?」
遠くから話しかける。
私は待ち合わせでいつもムギを待たせている。
「ううん、私も今来たところだから。」
振り返って、私の姿を見つけるとそう言って微笑んだ。
なんて幸せそうに笑うんだろう。
どうしてかわからないけど、今日のムギはとても可愛く見えた。
「そっか。あのさ、今日は行きたいところができたんだ。」
言いながらムギの手をとる。
そしてそのままコートのポケットに手を突っ込んだ。
「えっ…。」
少し恥ずかしそうに顔を伏せている。
ぶっちゃけ私もちょっと恥ずかしい。
「手、冷たいかなって、思ったから。こうしたら暖かくなるだろ?」
だけど、今日はそうしたい気分だったんだ。
傍から見たらちょっと阿呆みたいだけど、私たちはそのまま街を歩いた。
「ねぇりっちゃん、行きたいところって何処なの?」
目を輝かせながら質問するその姿はまるでわんこだった。
頭をぐしゃぐしゃっと撫でたくなったが、なんとか堪えた。
どうしたってんだ、私。
「えっとな、下見しようと思って。」
どうせこれといって行くところがないんだ。
今日のデートは下見を兼ねたライブ鑑賞。
それを伝えるとムギはすごく嬉しそうだった。
「りっちゃんが考えてくれたデートコース…うふふ。」
「バカ、大げさだって。」
コツンと頭を小突いた。
ムギはいたっと嬉しそうに声をあげた。
叩かれて嬉しいなんて、変わってるなぁ、ムギは。
「りっちゃん、最近よく私のこと叩くよね。」
「えっ。」
もしかして、嫌だったのか?
「その調子よ。」
どの調子だ、ばか。
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ライブハウスに辿り着くにはそれほど時間はかからなかった。
フライヤーの地図がわかりやすかったお陰だ。
「へぇ、ここか。」
「今はリハーサル中かしら。」
「だな、よし。そこら辺で飯食おうぜ。」
場所を確認すると私たちは適当にファミレスに入った。
最近はこういう外食での出費がなかなか痛い。
「りっちゃんはどれにするの?」
「私はこれかな。」
「えっ、これだけ?」
「あんまお金ないし…ライブハウスに入るのだってお金かかるだろ?」
なんて貧乏臭いんだ、私は。
一緒にいる相手がムギなだけに、妙に恥かしく感じるぜ。
「…りっちゃん、ちゃんと食べないと大きくならないわよ?」
「お前、私のどこを見て言ってるんだ?こら。」
胸を凝視された。
最近、ムギは私にこういう冗談を言うようになった。
もちろん、イヤじゃない。
なんだか距離が近づいてきているのかな、なんて思うと嬉しくもなる。
私がムギを気兼ねなく小突けるようになったのも、きっとそういうことなんだろう。
「ねぇ、りっちゃん。これ押していい?」
「ん、いいぜ。」
ムギはいつも店員を呼ぶボタンを押したがる。
ピンポンと音が鳴ると一瞬満足気な顔をするんだ。
そうしてソワソワと辺りを見渡して店員がどこからくるのかチェックする。
ま、それをずっと観察する私も大概だけどな。
「お待たせしました。ご注文をどうぞ。」
「えーと、私はこれ。」
そう言って唐揚げセットを指差す。
なんかちょっと恥ずかしい。
「はい、かしこまりました。お客様は?」
「私も同じものを。」
「はい、かしこまりました。唐揚げセットを二つですね。」
ピッとメニューを打ち込む音が聞こえる。
そうしてすぐに店員がいなくなった。
さて、問いただそう、今すぐ問いただそう。
「おい、ムギ。なんで唐揚げセットなんて…。」
「『同じものを』って言うのが夢だったの。」
「あほ。」
そう言って私は少し乗り出してムギの頭をまた小突いた。
夢ってなんだよ、夢って。
「15分もすればきっとテーブルの上は唐揚げだらけになるわね。」
「なんか馬鹿っぽいな。」
10分後。
見事に私達のテーブルは馬鹿っぽくなった。
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???
時間は4時半、ちょうどライブの会場時間だ。
「おぉ、ちょうどよかったな。」
「そうね。それじゃ、行きましょうか。」
「ん、だな。」
受付で料金を払う。
ワンドリンクと引換にできるチップを受け取る。
「……。」
「ムギ?どうした?」
「これ、よくカジノで見るチップよね。」
「ん、まぁそうだな。私はカジノには行ったことないけど。」
ムギはどういう環境で生きてきたんだろう。
たまにスケールがでか過ぎてついていけないことがある。
「じゃあ、自分でチップを用意すればここではドリンク飲み放題ね…!」
「多分バレないだろうけどやめような。」
そんなやりとりをしながら扉を開ける。
開演は5時だからまだ会場は静かだ。
どんなバンドが出るんだろう。
出演バンドの書かれた小さな黒板を見つける。
「これが今日出るバンドか。」
「6バンド、ね。」
「あぁ。」
バンド名の雰囲気がてんでバラバラだ。
きっとオリジナル縛りのブッキングか何かだろう。
「あれ、これって…。」
「LOVE CRYSIS…マキちゃんのバンドじゃん。」
偶然ってすごいな。
っていうかこの時期にライブ活動してるのか。
気合入ってるなー、マキちゃん達。
「しかも一発目だな。よっしゃ、前に行こうか。」
ムギの手をとって走った。
ステージは少し高くなっていて、客席とステージはポールで隔てられていた。
そのポールに肘をかけて辺りを見る。
「なんていうか、いい雰囲気のところだな。」
「……。」
返事はなかった。
ムギを見ると、真剣にステージを見つめている。
こんな真面目な表情のムギ、あまり見たことがないかもしれない。
真面目というか、なんだろう…。
ちょっとカッコいいかも知れない。
「って、何考えてんだ、私。」
「え?今なんか言った?」
「っわぁぁ!?な、なんでもないなんでもない!」
「…そう?」
「そ、それよりも、マキちゃん達が終わったらちょっと話に行かないか?」
「そうね、久しぶりだものね。」
「あぁ。それに、ステージに立った人にどんな感じか、ハコの感想も聞きたいだろ?」
とっさに話を逸らした。
これでもかってくらい、ぎこちなく。
「……。」
さっきのムギの表情が頭から離れない。
なんだろう、妙に気になる。
「まぁ、いっか。」
会場のBGMが徐々に小さくなる。
そして消えたかと思うと、違う曲が流れる。
どこかで聴いたことのある曲だな。
きっと、一年前のライブで聴いたんだ。
LOVE CRYSISのSEなんだろうな、きっと。
SEが大きくなるにつれて会場のざわめきが小さくなる。
みんな、今か今かと待っているんだろう。
最前列はいつの間にか熱心そうなファンでいっぱいだ。
はぐれてしまわないようにと、私はムギの手を握った。
そう、はぐれてしまわない為にだからな。
って…何に言い訳してるんだ、私は。
別に付き合ってるんだから手ぐらい繋いだっていいじゃないか。
ジャーン!!!
ジャッジャッジャー!
ギターの音に驚いて顔を上げる。
そこには一年ぶりに会うLOVE CRYSISの姿があった。
「みんな、来てくれてありがとう。それじゃ、一曲目…いくよ…!」
涼しい顔で激しいドラムを叩くマキちゃんに見惚れてしまった。
ハイハットがぐわんぐわん揺れている。
バスドラがずんずん私の中に響く。
耳を劈くクラッシュシンバルの音も心地いい。
ピッタリと息の合った演奏。
みんなが堂々としていて…。
曲はオリジナル曲だろうか、むちゃくちゃカッコいい。
「すっげ…。」
間抜けな感想、だけど本当にそう思ったんだ。
それくらいカッコよかったんだ。
だけどちょっと悔しかった。
私達もこんな演奏したいって、ちょっとだけ対抗心を燃やしてしまった。
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??????
???
「いやぁ…すごかったな!!」
私は興奮しながら言った。
できる事なら30分といわず1時間くらい演奏を聴いていたかった。
「そうね…。」
一方、ムギは元気がなかった。
「どうした?具合悪くなっちゃったか?」
「ううん、そんなことはないわ。ほら、友達のところ行こう?」
「あ、あぁ。そうだな…?」
その原因はわからなかった。
もしかしたら私の杞憂かもしれない。
帰り際だとファンの子にもまれてまともに話せないだろうから、
その前にマキちゃん達と話をしないと。
そんな風に考えていると、後ろからこんにちはと声をかけられた。
振り返ると、LOVECRYSISのベーシスト、アヤちゃんがいた。
「おつかれ!いやぁ、すっげぇいい演奏だったよ!」
「そうですか?ありがとうございます!」
「私も、感激しちゃった。」
「いやー、あはは照れますね…あ、よかったら楽屋に来ませんか?」
「いいのか?」
「えぇ、大丈夫ですよ。ここの楽屋、結構広いんで。」
私たちはお言葉に甘えて楽屋にお邪魔した。
通路の曲がり角、ムギの表情を盗み見た。
やっぱりどこか暗い表情をしている、ような気がする。
?????????
??????
???
通された楽屋は確かになかなか広かった。
部屋の奥の方、ソファに腰掛けている見覚えのある後ろ姿に話しかける。
「おーい、マキちゃーん!」
「…りっちゃん!」
私は駆け寄った。
ステージは暑かったのか、マキちゃんはタオルで汗を拭いていた。
「来てくれてたんだよね?ステージに上がってすぐに気付いたよ。」
「えぇ?あちゃー、バレてたかー。」
「あはは、そりゃわかるよ。」
久々に会ったマキちゃんは少しだけ大人っぽくなっていた。
だけど、笑った顔は相変わらずでちょっと安心した。
「で?別に私達のライブ観に来たわけじゃないんでしょ?」
「うお、なんでわかるんだ?」
「そりゃわかるって。だってライブの日程とか教えてなかったじゃん?」
「まぁな。だけどそれくらい調べるには私には朝飯前なんだよ。」
「いいから、で。どうしたの?」
さらりと冗談を躱されてしまった。
私はここに来た理由を説明した。
「なるほど、あのイベント出るんだ?」
「おう、もしかしてマキちゃん達も出るの?」
「いいや。うちのギタボが受験勉強だからね。今日のライブで数ヶ月間活動停止なんだ。」
「なるほどな。あれ…?マキちゃん達は…?」
「大学なんて行かないよ。」
「あ、そうなのか。」
「嘘だよ。推薦決まってんの。」
「そういうわかりにくい嘘やめろ。」
まるで中学の時に戻ったようだ。
私は一歩下がって談笑を見守っていたムギの腕を引っ張る。
「うちのキーボードの」
「うん!覚えてるよ、ムギちゃんだよね?」
「はい、さっきはお疲れ様でした。」
よかった、いつも通りのムギだ。
さっきのは、私の気のせいだったのかな。
後で聞いてみよう。
??????????
??????
???
楽屋をあとにして、会場に戻る途中。
短い廊下で、気になっていたことをムギに問う。
「なぁ、ムギ?」
「なぁに?」
「さっき、怒ってなかったか?」
「……。」
やっぱり、か。
薄々は気づいていたけど、実際そうだったとするとちょっとショックだったり。
「私、何か悪いことしたか?」
「……。」
ムギは何も言わない。
自分で気付けということか。
「私が、マキちゃんと楽しそうに話していたから?」
「……。」
思いつくことを挙げてみた。
実際、これくらいしか心当たりはない。
「半分、当たり…かな。」
「えっ。」
しかし、正解したのは半分だという。
でも確かに演奏後には既に機嫌悪そうだったから、タイミングから考えてもおかしいよな。
…難し過ぎるだろ、この問題。
琴吹先生、正解を教えてください。
「怒っていたんじゃないの…私ね、不安になっちゃったの。」
「え…?」
「りっちゃんは、私のことをなんて…やっぱり好きになれないじゃないかなって。」
「え…。」
おい。
なんだよ、それ。
「意味がわかんない。何言ってるんだ?」
「りっちゃんの周りには魅力的な人が、たくさん居て…私なんかが、図々しいのかなって…。」
「はぁ…!?ふざっけんな!」
つい大声を上げてしまった。
だけどムギは怯むことなく、真っ直ぐ私を見つめていた。
睨みつけるんじゃなくて、ただただ真っ直ぐに私を見つめていた。
「…りっちゃん、私達…やっぱり別れた方がいいね。」
「…え?意味が、わからないってば。」
展開の早さについていけない。
ムギは何を言っているんだ?
「え、だって…いつから?」
「え?」
「いつから、そんなこと考えてたんだよ…!」
「今さっきよ。やっぱり、私といたって…りっちゃんは幸せになれないと気付いたの。」
「何、言ってるんだよ…。」
なんだよ、それ。
ムギが、わからない。
「ムギは、私といて…幸せじゃないのか?」
「……。」
何を言ってるんだ、私も。
今はムギが私を幸せに出来るかって話だろう。
私といてムギが幸せか、は別問題じゃないか…。
「りっちゃん…そういう聞き方、ずるい…。」
「……。」
「私が、りっちゃんと一緒に居て、幸せなのは…りっちゃんだって、わかってると思ってた…!」
「ごめん、そうだよ。…その通りだ。」
「私は…りっちゃんの『お荷物』に、なりたくないから…。」
「おい、ちょっと待てよ。お荷物ってなんだよ。」
無性に頭に来た。
それにしても、こんな狭い通路で痴話喧嘩なんて、主催者もいい迷惑だよな。
トイレのためにここを通りがかった人が気まずそうに、そそくさと個室に入っていくのを見てそう思った。
「だって、そうじゃない…!りっちゃんにはたくさん友達がいて、広い世界があって…!」
「だから言ってる意味がわかんないって言ってるだろ!?」
「私だってわからないもん…!」
「んなっ…!そ、それじゃわかるわけないだろ!?なんでムギ自身ですらわからないことが」
「わかってよ!!」
「……!?」
思わず黙ってしまった。
ムギがこんなに大きい声をあげたところを初めて見たから。
ムギが、また…泣いているから。
私は…。
何度ムギを泣かせれば気が済むんだ。
「わかってよ…、私ですらわからないことも全部、全部…りっちゃんに気付いて欲しいよ…!」
「ムギ…。」
理由はわからないけど、また無性にムギを抱き締めたくなった。
この衝動には勝てなさそうだ。
「……。」
だけど、出来るだけじっと堪えた。
有耶無耶にして先に進みたくないから。
二人の間に、曖昧なものを挟みたくないから。
だから、私はムギと向き合ったまま、ムギの名前を呼んだ。
「なぁ、ムギ?」
「な…な、にぃ…?」
泣きじゃくっているせいでまともに喋れないんだろう。
やっとの思いで声を出しているのが伝わる。
なんで、今なんだろう。
どうしてこんなところで…。
私は、ムギが好きだ。
どうしょうもなく、いつの間にかムギに惹かれている。
それに今、気付いた。
「あのさ、私…。」
「……?」
「ムギのこと、好きだ。」
「え…?」
「私には広い世界があるとか、わかって欲しいとか、ムギの言ってることの意味はよくわからないけど。」
「……。」
あ、今ちょっと不機嫌そうな顔した。
ムギはすぐに顔に出るよな。
今から告白するからな、よく聞いてくれ。
あ、やっぱりよく聞かなくていい、恥ずかしいから。
枝毛の手入れの片手間にでも聞いてくれ。
「だけど、ムギが好き。これだけはハッキリと言える。」
「で、でも…。」
「なんでだろうな…今、気付いたんだ。この気持ちに。」
可愛いとか、カッコいいとか、そういうのじゃなくて。
ただ、ムギが愛しいと、そう思ったんだ。
それはムギの見せた涙のせいで。
二人が今まで重ねてきた時間のおかげで。
このところずっとムギのことを考えていた私の脳みその終着駅で。
とにもかくにも、私はムギが好きなんだ。
きっと、今この瞬間、はっきりと私はムギを愛したんだと思う。
上手く言えないけど、今日ここに来なければ、私はまだムギのことを好きになれずにいたと思う。
さっきムギと口論をしなければ、まだ…。
「嘘じゃない?」
「嘘じゃない。」
「本当に?」
「本当に。」
「私が、好き…?」
「あぁ、大好きだ。」
しばらくこんなやりとりを繰り返した。
私達が我に返ったのは、用を足し終わった人に後ろから声かけられてからだった。
ムードもへったくれもない。
それをムギに謝ると、りっちゃんらしくていいと思う、
なんて言われたからまた一つ小突いておいた。
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????
そして帰り道。
私たちは手を繋いで歩いていた。
「ねぇ、りっちゃん。」
呼び止められて、視線をムギに移した。
どうした?そう言うように。
「あのね、聞いて欲しい話があるの。」
「なんだよ、改まって。」
ムギは少し緊張した様子だった。
握っていた手に力が入るのがわかる。
一体どうしたっていうんだ。
「私ね、みんなと…りっちゃんと同じ大学行けないの。」
「…は?」
一難去ってまた一難。
さらに今回は話のスケールがデカすぎる。
「海外にね、行かなきゃいけないの。」
「……。」
何を…言っている?
「三年後、私は結婚するんですって。」
「……。」
「すごいでしょ?私のことなのに、私が聞かされたのもこの間なの。」
「むぎ」
「おかしいわよね。どうして自分の選んだ好きな人と一緒にいることすら許されないのかしら。」
「ムギ!!」
淡々と呟いているようだったが、私はムギの目に光るものを見た。
「それ、どういうことだよ…!」
「…今日、会ったらすぐに話そうと思ったの…。」
「……。」
「だけどね、やっぱり…りっちゃんの顔見たら…言えなく、なっちゃって…それで…。」
「……なんだよ、それ。」
話が、色々飛び過ぎじゃないか。
「実は、こんなことが起こる予感はしていたの…でも、私は、りっちゃんが好きだから…。」
「ムギ…。」
「だから、あの日…勇気を出して、告白できたの…。」
「……。」
知らなかった。
そんなことを考えて私に気持ちを打ち明けたなんて。
脳天気な自分に腹が立つ。
私はムギの話を聞きながら拳を強く握りしめた。
「私ね、お父様に…初めて反抗したの…好きな人がいるって…だけど、もう決まってしまったことだから、どうにもできないって…。」
「そ、そんなのおかしいだろ!ムギの人生はムギが決めるべきだ!」
「私の世界は、りっちゃんの世界ほど広くないの…。」
「…!じゃあムギはそれを受け入れるのかよ!」
「……。」
強く言いすぎてしまった。
ムギが悪いわけではないのに…。
「私は…ムギが好きだ。遅くなったけど…今なら本当にムギのことが好きだって胸を張って言えるよ。」
「…りっちゃん。」
「私は…ムギに、行って欲しくない。」
「……。」
「だって、あんまりじゃないか…そんなの…。」
「……。」
「……。」
「ごめんね…。」
ムギは謝りながら、子供みたいに泣きじゃくる私を抱き締めた。
抱かれたまま、温かい胸の中で私はまた泣いた。
私を抱きながら、ムギもきっと泣いている。
ムギだって、甘えたいハズなのに。
ここ一番でムギを甘やかしてやれない。
私はなんて弱いんだ。
そんな私に、泣かないで、なんて声をかけてくれた。
優しくて強いムギが好きだと、また強く想った。
出来れば、いつまでも二人でいたい、そう強く願った。
??????????
??????
???
その日の夜。
また寝付けなかった。
二日連続での寝不足は免れないようだ。
「ムギ…。」
私はやはりムギのことを考えていた。
卒業と同時に、ムギは海外に行ってしまうらしい。
そして、今はまだ顔も知らない十も歳の離れた男と結婚させられるらしい。
こんなことがあっていいのか。
ムギが言っていた。
私の世界は広くていいね、と。
今ならその言葉の意味も痛いほどにわかる。
そんなに『私の世界』ってやつがいいなら。
連れ出してやりたい。
「……。」
でも、ムギは海外に行くと決めた。
もう、きっと…何をしても今更なんだろうな。
ムギだって、私のことが好きだ。
私も、今日やっと本当の意味でムギと向き合えた気がする。
これからだって、思ってた。
「なのに、なんだよ…。」
何を考えても、どんな風に考えても。
まとまらなかった。
いつの間にか寝ていた。
夢の中でもムギのことを考えていた、ような気がする。
夢の中で、夢の中で…。
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?????
???
「新曲がやりたいです、先生…!」
「はぁ?」
唯が突拍子もなく、とんでもないことを言い出した。
ライブまであと一ヶ月くらいってところで、新曲がやりたいだと…?
コピー一曲くらいなら余裕で間に合っちゃうじゃないか、やめてくれ。
そんなことを考えていると澪が口を開いた。
「新曲って…今回は今までやった曲の中で」
「わかってるよ。でもさ、今までやった曲だけだったら、もうほとんど完成しちゃってるでしょ?」
確かに、唯の言うとおりだ。
時間も案外使い分けが出来ているし、この調子なら新しい曲をやるのも問題なさそうだ。
ただし、コピーに限る。
「唯、気持ちは分かるけど、今から作詞して作曲して…っていうのは流石に厳しいぞ?」
「そうだな。私も落ち着いて歌詞書けないし…。」
「うん!だから、コピーとか、どうかな?」
まさか唯からそう提案してくるとは。
私たちは意外過ぎて声が出なかった。
「私は構いませんけど、先輩達はどうですか?」
「うーん、実は私もちょっと物足りないなーとは思ってたんだよな。」
「一曲くらいならいいんじゃないかしら。どう?」
そんなこんなで私たちは一曲コピーをやることになった。
といっても転換込みの30分だ。
MCを入れると出来て大体4曲といったところか。
そんな負担にはならないし、みんな問題ないだろう。
やっぱりバンドは楽しい、と。
打ち合わせの途中、そう思った。
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????
次の休み。
いつもの場所、いつもの時間。
私たちはまた待ち合わせをした。
「…りっちゃん!」
「よっ。」
今日はムギの方が遅かった。
正確にいうと、私が早く来たんだ。
「それにしても…まだ待ち合わせ40分前だぞ?早すぎないか?」
「私よりも早く来ていたりっちゃんに言われたくないわ。」
口では不貞腐れているけど、嬉しそうだった。
それにしても、ムギはいつもこんなに早く待ち合わせに来ていたのか。
「…ムギ、お前さ。」
「なぁに?」
「私のこと好きすぎ。」
「…同じこと二回言わせるの?」
「え?」
「『私より早く来ていたりっちゃんに言われたくないわ。』」
「…ぷっ、あはは。」
それもそうだな。
言いながら私たちは自然と手を繋いだ。
きっと今日もいつも通り、街をぶらついて終わりになるんだろう。
だけどいいんだ。
ムギが好きだって、そう感じながら街を歩くだけで。
なんとなく幸せだと思えるんだ。
数ヵ月後、私達は離れ離れになってしまうけど。
だけど、自棄になって時間を無駄にするのは勿体無いと気付いたから。
今ある時間を大切にすること、それがまだ子供な私達の精一杯の抵抗なんだ。
体はくれてやる、だけど心までは渡さない。
それが私達の結論だった。
物分りのいいフリをして、心の中で舌を出す。
そんなささやかな仕返し。
どうせ強がりさ。
だけど、そのまま大人達の都合のいいように身も心も流されるなんて御免だ。
「なぁ、ムギ?」
「なあに?」
「…なんでもない。」
「えー?…あ、そうそう。りっちゃん?」
「んー?」
「えへへ、なんでもない。」
「あはは、なんだよー。」
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??????
???
練習のために部室へ足を運ぶ。
扉を開けようとノブに手をかける。
既に中には人がいるらしく、話し声が聞こえた。
「それ、律は知ってるのか?」
ノブを回した状態で固まってしまった。
澪の真剣な声が聞こえたから。
私の話をしている…?
「うん…だけど、時期が早まったのは…まだ…。」
「えぇ!?言わないと!」
「……。」
時期が、早まった?
おい、それ、どういうことだよ。
私は扉を開けた。
メンバーは私以外、全員揃っていた。
「…おい、時期が早まったって…どういうことだよ。」
「律…!?」
怒っているわけではない。
だけど、焦りとショックから強い口調になってしまう。
「りっちゃん…今朝、お父様に言われたの。色々と準備があるから、向こうには早めに行くって…。」
「……!」
「それでね、それが…ライブの日なの…。私、みんなと演奏できるの…すごく楽しみにしていたのに…。」
「私だって楽しみだったよ…!ムギちゃん、お父さんに言って遅らせたり出来ないの?」
「…お父様は…ライブの日だから、その日を出発の日にしたの…。」
「なんですか、それ…あんまりですよ!」
梓が吠える。
ライブの日だから、あえてその日を出発の日にした?
それって…。
「つまり、ムギのお父さんは私達のことを良く思っていないのか?」
「…ごめんね。」
「なんでムギが謝るんだよ…!」
「私…前に、お父様に話したの…最後に、もう一度ライブが出来るって…嬉しくて…。」
私たちは静かにムギの言葉に耳を傾けた。
「海外に行くって…結婚相手まで決まってるって…そう言われた時に…お父様と口論になったの…。」
「…そりゃ、普通そうなるよ。ムギは悪くないよ。」
澪がムギの頭を撫でる。
私はというと情けないことに、事実を上手く受け止められなくて呆然と立ち尽くしていた。
「高校を卒業したらっていう話だったんだけど…きっとその口論がきっかけで、お父様は…。」
「なんだよそれ。当て付けってことか?」
「お父様は…きっと私とりっちゃんが付き合っているのを知っているわ…。」
「そう、なのか?」
「えぇ、きっと…。軽音部から、りっちゃんから、私を引き離したいんだと思うの…。」
「……。」
その後、どうにかしようと、色々な話し合いがされた。
だけど、当のムギは父親の決定に逆らうつもりはないらしい。
ライブ、私は参加出来ないけど頑張ってね、と。
今にも泣き出しそうな表情で私達に言った。
当日は何がなんでも見送りではなく、ライブに出て欲しいと、そう言った。
唯は泣いていた。
梓は悔しそうにしていた。
澪は怒っていた。
私は…ムギの手を握って、離そうとしなかった。
私はいつからこんなに弱くなったんだ。
いつもなら、後先考えずに突っ走って、誰かに止められるのに。
「……。」
きっと、そんなことが出来なくなるくらい、私はムギに惚れてしまったんだな。
好きだという感情が大きくなればなるほど、臆病になる自分がいる。
きっとムギだって、こんな私を好きになったわけではないのに。
だけどやっぱり、ムギの将来のことを考えると余計なことをするべきではないと考えてしまう。
ムギがそれを受け入れるというなら、私だって…。
正解はわからない。
だけど。
私たちは『ライブの当日、ムギがいなくなってしまう』という事実をなんとか受け入れようとした。
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??????
???
ある日。
それは突拍子もない提案だった。
「律、歌…歌わないか?」
私が?
なんで?
「ムギちゃんに、伝えたいことがあるんじゃない?」
だからって…私がボーカルっていうのは、違うだろ。
「…でも、ドラムボーカルなんて無理だって。」
「えぇ?たまにコーラスやったりするじゃないですか。」
「あれはお遊びだろ?本番で歌ったことなんてほとんどないし…。」
すかさず梓が揚げ足をとる。
私は必死に言い訳をする。
するとその様子をみていた澪が口を挟んだ。
「まぁそう言うだろうと思って、頼んどいたから。」
「は?」
「だから、ドラム。」
こいつはたまにもの凄く強引になる。
何年もずっと一緒にいる親友だけど、それにはいつも驚かされる。
「だ、誰に?」
「私、そんなにたくさんドラマーに知り合いいないぞ。」
「…!!まさか、マキちゃん…?」
そのとき、扉が開く音がした。
「おー!りっちゃん、久しぶりだね!」
「って、マキちゃん!」
まさかのマキちゃんの登場に私は素っ頓狂な声をあげた。
澪とマキちゃんがヒラヒラと手を振り合っている。
「みんな、この間のライブ以来だね。LOVE CRYSISのドラムのマキです。」
「え…マキちゃん、澪から」
「うん、事情は聞いたよ。協力させてもらうね。」
「うそ…。」
待て待て待て待て、ちょっと待て。
「というわけだ。律、歌うんだ。いいな。」
随分といい顔をするんだな、澪しゃんや。
「わ、わかったよ…。」
ここまでされたら断れないだろう。
私は観念して、項垂れたまま返事をした。
私が歌うのは一曲だけ。
どうせムギがいない時点でHTTではないんだからと、
最初にこの提案をしたのは唯だったらしい。
唯らしいというか、なんというか。
それで同調したのが梓、ならばとマキちゃんに声をかけたのが澪。
事情を聞いて助太刀してくれたマキちゃん。
はは、私たちは幸せものだな、ムギ。
最初は驚いたけど…せっかくだからさ。
ムギのために歌うよ。
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???
明日はライブ。
つまりムギがいなくなってしまう日。
日本へいつ帰ってくるのかはわからないらしい。
残念なことだけど、きっとなかなか帰ってこないだろう。
ムギのお父さんが私達のことを快く思っていないんだ、すぐに帰国っていうのは難しいと思う。
明日の朝、家を出発すると聞いた。
空港での見送りは無理でも、せめてムギの家で見送りたいと申し出たのは梓だった。
私は言わなかった。だって、その答えをなんとなく知っていたから。
案の定ムギは梓にこう言った。
『ごめんね…お父様がいるから…。』
やっぱりな、私はそう思った。
梓は残念そうに下を向いて、そのあとムギに抱きついた。
大人は理不尽だ、そう言って梓は泣いた。
確かにその通りだと思う。
だけど、私達もいつかそんな『大人』って生き物になるのかと思うと、複雑だよな。
だから、先日お別れパーティをした。
ムギは嬉しそうだったけど、少し寂しそうだった。
いや、それは私達にも言えることだろう。
ムギとはそれっきり、会っていない。
それが心残りだった。
今、私はムギの家の前にいる。
会えなくてもいいんだ。
行動を起こさないと、私はこれから一生後悔することになると思うから。
自己満足と言われても構わない。
私はムギに逢いたいという気持ちを出来る限り行動に移したかった。
ケータイを取り出す。
発信履歴の一番上は、ムギ。
着信履歴の一番上も、ムギ。
ピッとボタンを押すとケータイを耳にあてた。
しばらくの沈黙。
回線を探しているのか、なんなのか。
とにかくこの時間が妙に緊張する。
「かかってくれ。」
呟いたあと、コール音が鳴る。
第一段階クリア。
ケータイの電源は入っているみたいだ。
ムギの部屋の窓を見る。
電気がついている。
きっと、部屋にいるはずだ。
息をする度に白い息があがる。
そのままムギの部屋まで届けばいいのに、なんてくだらないことを考える。
コール音はまだ続いている。
プルルル、プルルル…。
音の繋ぎ目の度にムギが電話に出てくれたんじゃないかと、少しドキッとする。
せめて、声が聞きたい。
出てくれよ。
「……。」
頼むから。
「……。」
プツッ…。
「…りっちゃん?」
「!?」
「こんな遅くに、どうしたの?」
「む、むぎぃ…!」
ただ電話に出てくれただけなのに、私は今にも泣き出しそうだった。
「りっちゃん…?」
「なぁ、ムギ…明日は、出発の日だな。」
「…えぇ。私、りっちゃんと離れたくない。」
「でも、行くんだろう?」
「…えぇ。」
「知らないヤツと、結婚もするんだろう?」
「…えぇ。」
「……。」
「だけど、りっちゃんのことは…ずっと、ずっと大好きよ。」
「……。」
「どんなときだって、りっちゃんのことを考えているわ。」
「……。」
「きっと、その人に抱かれているときだって、私はりっちゃんのことを考えているわ。」
「…ムギ。」
「なあに?」
「逢いたい。逢いたいよ。」
「……。」
ケータイが濡れている。
私の涙で故障するんじゃないかってくらい。
だけど、ムギのケータイも危ないかもな。
あはは、私ら泣きすぎだろ。
「ムギ、ベランダ…出れるか?」
「え?うん…。」
「出てみ。」
ガサガサと音が聞こえる。
きっと移動しているんだろう。
私はじっと窓を見つめる。
今か今かと待ち続ける。
ケータイからがらりと音が聞こえる。
窓が少し動いたように見えた。
「…よっ。」
「りっちゃん…!?」
あはは、驚いてる驚いてる。
ムギのあのビックリした顔。
可愛いな。
連れて帰れたらどれだけ幸せなんだろう。
「最後だから、逢いに来た。」
「ありがとう…ありがとう…。」
「やっぱり、行っちゃうんだよな。」
「…うん。」
「だよな。ごめんな、何度も同じこと聞いて。」
「ううん。…ねぇ、りっちゃん?」
「なんだ?」
ケータイがないと、普通に会話するにはちょっとキツい距離だけど。
まるで隣にムギがいるかのように話しているぜ。
ムギも、そうだったら私は嬉しい。
「私、りっちゃんのこと…好きになってよかった。」
「なに、言ってるんだよ。」
「りっちゃんに気持ちを伝えてから、たった数カ月だけど…私はすごく幸せだった。」
「おい、やめろよ…。」
「ずっと、ずっと不安だったの…付き合っても、りっちゃんは私のことを友達以上に見てくれないって…。」
「……。」
「だけど、りっちゃんも、私のこと、好きになってくれて…二人で出かけて…。」
「ムギ…。」
「そんな毎日が、とても幸せだったよ…。」
「私も、そうだよ。」
「あのライブハウスで、りっちゃんと、ちゃんと両想いになれて…多分、これ以上の幸せは、一生味わえないわ…。」
「……私も、ムギを好きになれて、よかったよ。」
「…りっちゃん。」
「ずっと、ムギの優しさに甘えてるって、心の何処かで後ろめたかったんだ。だけど、あの日からそれもなくなった。」
「うん…うん…。」
「ムギ。」
「なに?」
「好きだよ、何があっても。」
「……!」
そう言うと私はすぐに電話を切った。
ムギはケータイから耳を離して、画面を確認しているようだ。
「ムギー!!!!」
声を張り上げた。
明日ライブで歌うっていうのに。
そんなこと、お構いなしで叫んだ。
「向こうに行っても、元気でなー!!」
「私も…!」
「ずっごい、幸せだったぞー!」
「私、えっと…!」
『愛している。』
簡単だろ。
早く言え、私。
「ムギのこと…!」
「何者だ!」
言い終わる前に、何処からか警備員の格好をしたおっさんが追いかけてきた。
やべっ、そう言って私は逃げ出した。
その光景を見て、ムギは笑っていただろうか。
それとも、泣いていただろうか。
?私も、すげぇ幸せだった。愛してる。
心の中で言えなかった言葉を反芻しながら、
逃げ続けた。
気付いたらもう家の前だ。
振り返って誰もいないことを確認する。
「幸せ、だった、よ…愛して、るぜ…。」
家に入る前に、もう一度だけ口にした。
もう届くことはないかもしれないけど。
これが私達の、高校生活最後の逢瀬だった。
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??????
????
「りっちゃん、おはよ。」
「あたっ。」
挨拶と同時に後ろからぽんっと頭を叩かれる。
今日はライブハウスに現地集合。
マキちゃん、澪と一緒に来て、梓もさっき到着した。
みんなリハーサルの準備をしている頃だろう。
最悪の場合、唯は迎えに行かなきゃいけないと思ってたんだけど…。
「一人で来れたんだな?」
「ひどい!」
「おはようございます。」
「あずにゃん!」
そう言って唯は梓に抱きついた。
「唯先輩、一人で来れたんですね。」
「さっき言われたばかりだよ!」
いつも通りのやりとりを見ているとなぜだか安心する。
「律先輩…。」
「ん?」
梓が気まずそうに私に話かける。
わかってるさ、ムギのことだろ。
「気にすんな。」
ポンっと、梓の頭に手を置きながら言った。
「おーい!そろそろ私達の番だぞー。」
澪がベースを抱えながら歩いてくる。
もうそんな時間か。
「へいへーい。」
リハーサル、か。
いつもはドラムのセッティングの心配だけしてればよかったけど、
今回ばかりはそうはいかない。
曲数が少ないからゆっくりとリハーサルが出来た。
唯と梓のギターの音色をチェックした後に待っているもの、それは…。
「それじゃ、最後の曲は…ボーカルさんが変わるんですよね?」
PAの人が先程提出したリストを見ながら確認する。
「はい、そうです。ドラムはセッティング変えずに叩くんで、一応マイクチェックだけ。…ほら、何やってるんだ律。」
「へいへい…。」
ドラムの席を離れ、ステージの真ん中に立つ。
いつもはもっと後ろから眺めていたステージ、
ちょっと場所が変わるだけでこんなに見晴らしが変わるんだな。
私の周りを囲んでいる楽器がないせいか、急に心細くなった。
振り返るとマキちゃんがスティックを回しながらこっちを見ている。
いつでもいいよー、ということだろう。
イントロは本当はムギのパートだった。
私が歌うと決まってから、選曲はし直したけど、
やっぱりキーボードのある曲を選んでしまうところが私達らしいな、と思う。
ムギがいないからといってカットするわけにはいかない。
梓がその分をところどころカバーするという形で丸く収まった。
つまり入りはドラムのカウントではなく、ギターから。
梓は私の方を見て、いいですか?と無言で確認してくる。
大丈夫だぜ、と私も目で合図を出す。
可愛い音色、とぼけたリズム。
これが、私の歌う曲の始まり。
ムギは…もう空港に着いた頃かな。
??????????
???????
????
本番10分前。
私たちはキーボードの準備をしていた。
ムギが来れないのはみんなわかっている。
だけど、キーボードがステージ上にないと落ち着かないんだ。
HTTとしての演奏は出来ないけど、せめてムギの場所くらい用意したっていいだろう。
そうこうしている内に前のバンドの演奏が終わる。
客の入りはなかなかだ。
ノリも良さそうで、前の方がガラガラという最悪の事態は免れそうだ。
ステージが暗転する。
前のバンドと入れ替わりでそれぞれ楽器をセッティングする。
すれ違うときに、お疲れ様でしたなんて簡単な挨拶を交わした。
内心はそれどころじゃないんだけどな、一応それくらいの余裕はあるみたいだ。
準備が終わると一旦はける。
一応SEを用意したから、それをかけてもらって出て行くような形になる。
「…みんな。」
そう言って振り返った。
「ムギは…いないけど…頑張ろうぜ。」
情けない。
自分でも思う、私らしくないと。
「あぁ…!頑張ろう!」
「はい!ムギ先輩にも届くように演奏しましょう!」
「頑張るよー!」
「私も頑張るからさ。…ね?りっちゃん。」
マキちゃんがニヤニヤしながら私を見る。
何が言いたいのかはわかる。
わかるぞ、くそー…。
「えっと、ボーカル…上手くいかなかったら、ごめんな?」
「気負わない気負わない!りっちゃんのボーカルが上手くいくと思ってないからさ!」
「マキちゃんそれはあんまりだぜ!」
次第に大きくなるSE。
そろそろ行かないと。
「よっしゃぁ!それじゃ、頑張るぞー!おー!」
円陣組んでエンジン全開、マキちゃんの言う通り気負ってもしょうがない。
私は私にできる精一杯をする、そんだけ。
よし。
「それじゃ、行ってくる。」
出番が最後だけのマキちゃんはステージ裏で待機。
私たちはマキちゃんに手を振ってステージに歩みを進めた。
ステージから見る客席には憂ちゃんや純ちゃん、和の姿があった。
当然だけど、ムギの姿はない。
まぁ居たらステージに引っ張り上げるところだけどな。
それでも、ふとした瞬間にムギを探してしまう私は重症なんだろう。
????????
?????
???
3曲目のふわふわ時間が終わり、ついに私が歌う番だ。
客のノリは上々、演奏しているこっちも最高に気持ちいい。
「えーと、残念ですが、次で最後の曲です!」
唯がそう言うと、えぇー!?という声が客席から聞こえてくる。
唯は嬉しそうにえへへと笑った。
私はマキちゃんに席を譲って、セッティングを手伝う。
これ、マキちゃんのセッティングとは全然違うんだけどな。
時間がないからこれでおしまい。
自分に合わないセッティングじゃ叩きにくいはずなのに。
何から何まで、マキちゃんには世話になりっぱなしだな。
「りっちゃん。」
「ん?」
マキちゃんにぼそりと呼び止められる。
「頑張れ。可愛い彼女に届けてあげなよ。」
「……!」
マキちゃんはにかっと笑って、それ以上は何も言わなかった。
視線を落として、ペダルの踏み心地を確かめている。
言葉はいらない、まるでそういうように、
私と目を合わせようとはしなかった。
おう、とだけ答えて、私は前に出た。
「…というわけで!最後はりっちゃんがボーカルなのです!えっへん!」
マイクを握った瞬間、歓声が沸き起こる。
全く唯のMCを聞いていなかった。
「え?何?」
私は唯に小声で聞いた。
だけど、マイクを通してしまったようで、ライブハウスに私の声が響いた。
どっと、今度は笑い声が聞こえる。
くそ、和まで爆笑してやがる。
恥ずかしいのと困ったので顔が赤くなった。
「それじゃ、そういう訳だから。りっちゃん、頑張ってね。」
「いや、どういう訳だよ。」
「いいから!」
「強引だな!?」
まぁいいや、とマイクを握り直す。
よし、行くぞ。
そういうように梓を見…ようとしたところに唯が口を挟んだ。
「りっちゃん!ほら!歌う前に何か言わないと!」
「でぇい!今歌おうとしてただろぉ!」
また会場が笑いで包まれる。
私たちはコントをしに来たんじゃないぞ、全く。
だけど、唯のおかげで少し緊張がほぐれた。
というかどっか行った。
「りっちゃん、準備はいい?」
マイクから口を離して、私だけに聞こえるように唯が言った。
そうか、そういうことか。
声が裏返っててもおかしくないくらい緊張してたもんな…。
唯、ありがとう。
「あぁ、いいぜ。サンキュ。」
私も今度は唯だけに聞こえるように返事をした。
澪の方を見る。
黙ったまま、澪は頷いた。
たったそれだけなのに、すごく気持ちが落ち着いた。
そして、梓の方を向く。
せーの…そういうように、梓がギターを弾き始めた。
最後の曲の始まりだ。
???????
?????
???
曲が始まった瞬間、脳裏にムギの顔が過る。
この歌が…ムギに届いてくれれば、それでいい。
私は息を吸って、歌い出しに備えた。
「振り向くといつも君がいる」
今はもういないけど。
「当たり前の時間になる」
それが、本当は当たり前の時間じゃなかったんだよな。
「振り返ると君が笑う」
「つられて笑いそうになる」
?えへへ
?な、なんだよ、急に
?別に。なんでもないの。笑いたくなって笑っちゃった
?あはは。なんだよ、それ
「1 step 2 3 I Love You」
あいらびゅー。
恥ずかしくてあの時は結局言えなかったけど。
今なら、いくらでも言ってやる。
だから逢いに来てよ。
「君がいるだけで世界は」
こんな偏見や差別やその他汚いものにまみれたクソッタレな世界だったとしても。
「僕に優しくなるんだよ」
悪くないかな、なんて思えたのはきっとムギのおかげ。
?ねぇりっちゃん、もう帰っちゃうの?
?うーん…今日は家に家族もいるし、あまり遅くなれないんだ
「当たり前の日が終わること」
「そんな当たり前のこと」
?そっか、じゃあ仕方がないね。
?あぁ、ごめんな。
?ううん、また明日逢えるもの。どうってことないわ。
「振り返ると君が笑う」
「つられて笑いそうになる」
あの日、私達が何気なく過ごした『当たり前』の日々をやり直せるなら。
蔑ろにしていた訳じゃなくて、
あの時の私達はあの時の私達なりに丁寧に時間を重ねていたさ。
だけど、ムギに会えなくなると知った日から、
時間はもっとずっと尊いものになった。
結局、それまでの私は大切なものと本当に大切なものの区別のつけ方を知らなかったんだ。
?わかってよ…!
?ムギ自身ですらわからないこと、私にわかるわけが…!
?それでも、わかって欲しいの…!
「この場所にくると君のこと、君を好きになった日のこと」
なんの因果なんだろうな、本当に。
この場所で、私が歌うことになるなんて。
「君と出会った僕は誰よりも」
そう、この世に存在する全ての、『誰よりも』。
「誰よりも幸せだったよ」
断言してやる。
今だって幸せさ。
「あの日の続きの世界があるなら、僕らをいさせてよ」
出来れば永遠に。
それが出来ないなら、せめてあの日に閉じ込められてしまえればよかったのに。
「夕暮れの終わりに泣いてたベイビー」
教室で告白されたときは驚いた。
あの時の私には、こんなこと予想できなかったんだろうな。
あの日の私が少し羨ましいぜ。
「二人の世界が終わるときに僕のことを抱き締めて泣いてたベイビー」
ムギがいなくなると知った日。
ムギは弱っちい私を抱き締めて泣いていた。
首筋にムギの涙が伝う感覚を、今でも私はハッキリと覚えている。
梓がギターを抱えたままネックを持ち上げる。入ってくると同時に振り下ろすのかな。
唯はバスドラに足を掛ける。きっとサビに入ったと同時に飛ぶつもりなんだろう。
大人しくてわかりにくいだろうけど、澪もかなり曲に入ってる。
マキちゃんの姿は見えないけど、きっとノリノリで叩いてるんだろうな。
演奏者不在のキーボードをちらりと見る、どことなく寂しそうだった。
息を思い切り吸い込む。
マイクをぎゅっと握り締める。
?届け
「夢で何千回も何万回も君の名前呼んで過ごした日々」
気付くのが遅すぎて。
「戻れない夜を超える度に、また逢いたくなる」
後悔しながら、愛しい気持ちを抱えたまま。
「せめて何千万分の一でも、あなたとの恋を繰り返して」
時間が戻せるなら…と願った夜もある。
だけど、私達は私達なりにこれ以上ない時間を過ごしたんだと、今なら思えるよ。
「夢の中でいつかサヨナラするのさ、ベイビー」
ムギ、好きだ。
大好き、愛してる。
本当は、離れたくないんだ。
いつまでも、一緒に居たいんだ。
陳腐な言葉でごめん。
だけど、何度だって言うよ。
だから、何度だって聞いて。
???????????
???????
????
演奏が終わって、楽屋で一休み。
ミネラルウォーターはこれで2本目。
どれだけ飲んでもこの乾きは満たされなさそうだ。
「…律、お疲れ様。」
「……。」
ソファの隣、澪が座る。
私は無言で頷いた。
「…よかったよ、律の歌。」
「…届いたかな。」
「…あぁ、きっと。」
「そっか。」
抜け殻のようになった私を
少しでも元気づけようとしてくれているみたいだ。
「なぁ、澪。」
「なんだ?」
「ちょっとさ…胸、貸してくれないか。」
「すけべ。」
「そういう意味じゃないって。」
「ふふふ、わかってるよ。ほら。」
そう言って澪は腕を広げた。
私は構わず飛び込んだ。
泣いて泣いて、泣きまくった。
澪はそんな私の背中を子供をあやすように撫でていた。
「律、頑張ったね。…よく、頑張った。」
終わった。
本当に終わったんだ。
私とムギは、これで…。
自分にそう言い聞かせることは出来ても、
それを理解できるかどうかはまた別問題だ。
きっとこの先、私がムギ以上に愛する人なんていないんだろう。
そう思うとまた涙が溢れてきた。
いつかムギにこう言った。
?人を好きになるって気持ちがわからないんだ
?だから、教えて欲しい
ムギは確かにそれを私に教えてくれた。
だけど知ってから後悔したこともあった。
知らなければよかったと。
だけど、それを知ったからこそ、
私達はほんの少しの間だけど、幸せな時間を過ごせたんだ。
笑い合ったり、喧嘩したり、一緒に泣いたり。
その全てが私にとってかけがえのない大切なものなんだ。
ムギ、ありがとう。
本当に、ありがとう。
?????????
??????
???
あれから数年が経って。
私たちは大人になった。
もちろん、中身はまだまだ未熟で子供で、
たまに小さなことで真剣に悩んだりしている。
そう、つまりは成人したっていう、
ただそれだけのことなんだよ。
今日はムギちゃんが帰国する日。
この間、知らないアドレスからメールが届いた時はビックリしちゃったけど。
あの時はメールアドレスをずっと変えてなくてよかったと心から思ったよ。
りっちゃんはあれから誰と付き合っていないみたい。
言い寄られてはいたみたいだけどね。
それも女の子の方が多いみたい。
りっちゃんってやっぱり女の子にモテるタイプなのかな。
こんなに可愛いのに。
『かっこいいりっちゃん』しか目に映らない人はムギちゃんには全然及ばないなぁ、なんて思っちゃう。
ムギちゃんはりっちゃんの全部が好きだったと思う。
優しいところも、弱いところも、強いところも、ずるいところも、全部全部。
ムギちゃん以上にりっちゃんにふさわしい人なんていないよ。
私が勝手に断言しちゃうもんね。
「時間、そろそろだね。」
「あぁ。そうだな。」
りっちゃんは緊張しているみたいだった。
予定ではムギちゃんはフィアンセと一緒に帰国するんだって。
ムギちゃんとりっちゃんの関係を良く思わなかったムギちゃんのお父さんのインボーかな。
意地悪だよね、本当に。
りっちゃんの顔がいつも通りじゃない。
顔っていうか、目かな。
腫れてて、疲れているみたい。
寝不足なのかな。
もしかしたら泣いていたのかも。
「……。」
その原因は明白だけどね。
今日、りっちゃんは来なくていいって澪ちゃんが言った。
だけどりっちゃんは『見れば、思い知れるから。きっと、諦められるから』
そう言って空港まで一緒に来た。
あずにゃんも心配そうにりっちゃんを見つめる。
だけどね、私は心のどこかで信じてるんだ。
「あ!ムギだ!おーい!」
こんなにはしゃいでる澪ちゃん、いつ振りだろう。
やっぱりみんなムギちゃんに会いたかったんだね。
なんて当たり前のことを痛感しちゃう。
「みんな!」
嬉しそうに駆け寄ってくるムギちゃん。
高校生の頃に戻ったみたい。
「ムギ先輩、お久しぶりです!…って、あ、あれ?」
あずにゃんが不思議そうに辺りを見渡す。
ムギちゃんは相変わらずニコニコ。
癒されるなぁ、この笑顔。
澪ちゃんもりっちゃんですらも、『話が違うぞ』というようにキョロキョロ。
だけど私はそんなことしない。
来る予定だったムギちゃんのフィアンセがどうなったかなんて、大体予想がつくから。
「ムギちゃん、おかえり。」
「えぇ、ただいま。」
私はいの一番にムギちゃんにおかえりを言った。
ムギちゃんも笑顔で返してくれた。
ちょっとりっちゃんに悪いかなって思ったけど、ニブチンなりっちゃんが悪いのです、なんてね。
「……!」
当のりっちゃんはと言えば何かを見つけて固まっているみたい。
あ、泣きそう。
私はその視線の先に何があるのか辿った。
あぁ、なるほどね。
ムギちゃんの左手の薬指にきらりと光るもの。
りっちゃんはそれを見つけちゃったんだ。
「ムギ…えっと、ただいま。」
「……。」
「……。」
りっちゃんのボケにみんなが固まる。
だけど本人はそのボケに気付いていないみたい。
「律先輩、それ…本気で言ってます?」
「ただいまじゃなくて、おかえりだろ?」
「…あっ。」
間違いに気付いて赤面するりっちゃん。
それを見てみんなが笑う。
ホント、高校の頃に戻ったみたい。
ほんの数年前のことなんだけどなぁ、妙に懐かしく感じちゃうよ。
「そういえば、ムギ。婚約者は…?」
澪ちゃんの質問で空気ががらりと変わる。
りっちゃんの瞳が揺れている。
だけどね、きっとそんなに心配することじゃないよ。
「あぁ、あの人ね。…飛行機から投げ捨てちゃった。」
「「えっ。」」
珍しいムギちゃんの冗談に私たちは固まった。
「え、えっと…、確か予定では2週間後に向こうに…。」
「帰らないわ。」
そう言ってムギちゃんは薬指のリングを外してゴミ箱に捨てた。
「「えっ。」」
あはは、ムギちゃん。
信じてたよ。
「ずっと、ずっと会いたかった。」
りっちゃんに抱きつくムギちゃんはちょっと大人っぽかった。
「ム、ムギ…!」
泣きながら抱き締め返すりっちゃんはちょっと子供っぽかった。
しばらく二人は抱き合っていた。
お互いの存在を確かめるように名前を呼びながら。
あの日、届いたのはりっちゃんの『サヨナラ』という歌声じゃなくて、
『離れたくないよ』っていう気持ちだったんじゃないかって。
幸せそうな二人の後ろ姿を眺めながら思った。
ほら、ムギちゃん。もう見失っちゃ駄目だよ。
りっちゃんも、絶対に離さないであげてね。
二人が振り返って、私達に何処へ行こうか?と笑いかける。
なんだか幸せな気持ちになって、私達三人もつられて笑いそうになった。
おわり
曲はピアノゾンビのベイビーベイビー
ゴイステじゃない
文章が綺麗で読みやすかったよー
ハッピーエンドでよかった!
とりあえず、作中の曲を聴いてみるかな
ありがとう、乙
コメント
- SS図書館の名無しさん 2011/02/27 (日) 0:59
-
3回読んで3回とも
「どんなときだって、りっちゃんのことを考えているわ。」
「……。」
「きっと、その人に抱かれているときだって、私はりっちゃんのことを考えているわ。」で泣いた。
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