- 2010-10-26 (火) 15:00
- 女
女「……」
少しだけ肌寒い風が吹いている八月の夜。
夜が始まったばかりの空には、キラキラと瞬く無数の星が、僕たちを見つめている。
空っぽの気持ちで空を見つめていた僕は……この告白が成功するとは正直思っていなかった。
ネガティブな考えでこう言っているのではない。
彼女は……。
誰から告白をされても、絶対に付き合ったりはしない。
僕はそれを知っていたから。
女「……」
彼女はただ、地面の方を向いて黙っているだけ。
それだけ言うと、彼女は暗闇の中へ消えてしまった。
ああ、やっぱり……。
僕「これで、明日から彼女とは話もできない、か」
僕「……」
一人ただボーッと、残された僕は、さっき彼女に表れた変化……それを思い返していた。
両手を前の方で合わせて座り、僕の言葉に反応するように、少しだけ体を震わせた彼女……。
何かを呟いていたように思うけれど、僕の耳には彼女のごめん、という言葉しか残っていない。
僕(……まあ、今さら考えても仕方ないか)
そう、いない彼女の事を想っても何にもならない。
僕は少しの間歩く事もできず、また黒い空だけを見つめていた。
残された虚無感と、明日から彼女と話す事のできない不安が、一気に押し寄せてくる。
僕「ハァ……」
ため息だけが、夜の闇に溶けていく。
頭上で輝いている星々の美しさなど、今の僕には気付く事がでるはずもなかった。
はい
……。
僕と彼女が出会ったのは、僕が大学三年生の時の事だ。
四月の入学式や、五月の慌ただしい連休が終わって……大学全体が少し落ち着いたようになったある日。
いつものように、学生食堂でお昼ご飯を買おうとしてた。
その時の僕には、彼女を見過ごして会わずにいる事もできたのに……。
それでも彼女と会ったのは、けっして恋愛感情から来る行動ではなかった。
それだけは、今もはっきりと覚えている。
最初の頃は……彼女の事など、全く頭にはなかったんだ。
僕は、授業から解放された嬉しさを胸に、食堂の中を歩いていた。
カウンターのすぐ横にある食券の販売機が目的地だ。
僕(昨日はカレーを食べたし……今日は無難に定食かなあ)
こうやってお昼のメニューを悩む事ができるのは、贅沢な事なんだ、と最近考えるようになってきた。
僕(よし、今日は鮭定食にしよう)
……といって、頭の中で決めたメニューの食券をすぐに買えたわけではなかった。
女「ん?、何にしようかな?」
どうやら、先客がいるみたいだった。
メニューが書かれた枠を、右に見ては左に見ては……。
後ろで一本に縛られた長い髪がその度にフリフリと小さく揺れている。
女「ラーメン……ハンバーグ……唐揚げ」
呪文のような、ブツブツとした声が後ろにまで響いてくる。
僕「……」
誰かか僕の後ろにいれば多少は焦るが、並んでいるのは僕たちだけだったから……。
あまり気持ちも急ぐ事もなく、素直に後ろで待っていたんだ。
女「……決めた、鮭定食にしよう」
ピッ、とボタンを押す彼女の姿。
食券を取ると、駆け足にカウンターまで向かっていく。
僕(同じ鮭定食か。なんだか運命感じちゃうよ)
ははっ、と軽く冗談を心の中で呟きながら、お金を入れて『鮭定食、四百円』のボタンを押す。
受け取り口に、今日のお昼ご飯が書かれた「鍵」一枚出てくる。
それを取り、僕はまるで宝探しにでも出発するような笑顔でカウンターまで向かっていた。
僕「すいませーん」
奥から、白エプロンに給食帽子を被ったいかにも、という格好をしたオバチャンが出てくる。
僕は食券をカウンターの上に差し出し、少し元気に注文を。
僕「オバチャン、鮭定食を……!
女「し、鮭定食じゃないじゃないですかっ!」
……僕のちょっとだけ元気な声は、隣にいた彼女の目一杯の反抗的な声に消されてしまった。
目をやると、彼女の手にはお盆……その上には白い湯気と美味しそうな匂いを辺りにまいている、カレーライスのお皿があった。
女「な、なんでカレーが……え、食券? あ……?」
もう一人のオバチャンに、先ほど彼女が買ったと思われる食券を見せられている彼女自身。
女「と、隣のカレーと押し間違えちゃったの……?」
女「そんなぁ……」
肩を落とし、泣きそうな彼女のか細い声が聞こえてくる。
そんな僕の視線は、カタリと置かれたお盆一枚に簡単に奪われる。
今の僕を動かしているのは、鮭定食を食べたいという欲だけなんだから……当たり前だ。
僕「どうもー」
お盆を持って、席に座ってこれを食す。
今日のお昼にやるべき事は、それだけ。
女「鮭……」
僕「……」
しかし、そんな簡単な事すら実行できなかったのは、彼女の背中があまりにも可哀想に感じたから……だけじゃないはず。
その時は、本能のような……多分、守りたくなったとでもいう気持ちだと思う。
僕「あ、あのさ……」
僕は、落ち込んでいる彼女にそっとお盆を差し出して。
彼女は、すぐに笑顔を見せてくれて……。
これが、僕たちの最初だった。
僕「……いただきます」
小さな丸いテーブルでお互い向かい合いながら、僕はスプーン、彼女は箸を必死に動かしている。
お盆を交換したら、僕は別の場所に座るつもりだったのに。
女「よかったら、一緒に食べませんか?」
彼女がぜひ、と言うからこうしてテーブルを囲んで、二人で食事をとっていた。
女の子からの誘いだ、悪い気はしない。
大学生活ニ年を経験したという事もあって、僕も幾らか気持ちに余裕が出ていたんだろう。
こうして女子と並んでいても、変に動揺する事なく、普通にスプーンを動かせている。
女「鮭美味し?。ご飯美味し?」
小さな天使みたいな笑顔と言葉、皿に乗っている鮭がどんどん小さく、薄く。
小骨だけを残して、彼女の口の中に消えていく。
僕「そんなに魚が好きなの?」
思わず、僕は聞いてみた。
それに、無言で食事をするよりはいいだろう。
女「うん。アッサリしているから、好きなんだよ」
彼女はサラリと答える。
僕「ふ?ん……」
女「ごちそうさまっ」
いつの間にか、彼女の皿は空っぽに。
僕のカレーはまだ半分以上が残っている状態だった。
……少々冷ましすぎたかな。
女「食べるの遅いんだ」
食器を重ねながら、人懐っこい笑顔で僕を見つめてくる。
僕「いいんだよ。早く食べ過ぎると体によくないんだから」
口から出任せの、適当な言葉を彼女に返す。
女「ん?……」
僕(……これは、ちょっと跳ねっ返りの強い言葉だったかな?)
気持ちに余裕はあるとは言え、女性とこんな風に、二人で食事をした事なんて僕には殆ど無かったから……。
チラリ、と彼女の方を見る。
女「そっかそっか?」
僕の心配など気にする様子もなく、窓の外を見つめながらそんな呑気な口調で返してくる。
その姿は、僕になんてまるで興味がないような印象すら受けくらいだった。
僕(……変なの)
そんな姿を見て、僕は彼女に一つだけ質問をしたくなった。
僕「ねえ、どうして一緒にご飯を食べようって言ったの?」
女「んっ?」
体を僕の方に向け、柔らかい口調そのままに彼女は答える。
女「一人で食べるより、美味しいかなって」
女「カレーと定食交換してくれたじゃん!」
僕「……背中があまりに憐れだったから、ついね」
軽く、皮肉を言ってみる。
反応次第で彼女がどういう性格は少しはわかるのだけれども……。
女「えへへっ、助かったよ。ありがとうね?」
僕の言葉にも、また無邪気な子供みたいに、彼女は優しく笑ったんだ。
本当に助かった、というような安心しきった顔を僕に見せていてさ。
僕(ずいぶん……素直なんだな)
その時の僕は、いたって冷静に彼女の笑顔を見つめる事が出来ていた。
どんどん変化して、様々な表情を見せてくれる彼女が……とても魅力的に感じていた。
素直ないい子だな、とその時僕は思っていた。
と、後ろからいきなりポン、と肩を叩かれた。
友「よ、ここにいたのか。テーブルに来ないから今日は休みかと思っていたよ」
そこには、同級生の友が僕の後ろに立っていた。
入学当初から一緒にい、何だかんだでもう二年を共に過ごした友人だ。
面倒見はいいのだが、明るいと言うかお調子者というか……。
しっかりとした面は見えるけれども、普段の行動からは適当な性格、と思われるような印象も受ける。
三年生になっても、その雰囲気は相変わらずのようだ。
女「ん、友達?」
僕「あ、うん。同じ学年……の?」
いや、そう言えば彼女の学年や学科を聞いていなかったな。
いい機会だから尋ねてみようか?
友「……彼女? 紹介してよ」
普通の会話をしようと思った矢先に……これだ。
ああ、これじゃあ言葉が足りない。
友「なんだ、もうそんな仲なのか。大学三年目にして彼女持ちか。羨ましいよ、全く」
……悪気は無いとはいえ、茶化すような軽い言葉遣い。
まあ、慣れている。
女「……」
僕(……ん?)
一瞬彼女の顔が、ちょっとだけ難しく……何だか、笑顔が消えたような空気を、僕は肌で感じた。
僕(もしかして、こういう話……苦手な子?)
パッチリとした目に小さな唇……身長の低さも相まって、美人というよりは本当に可愛い女の子だった。
彼女は何年生なんだろう。
大学生……二十歳近くになれば、見た目だけでは正確な年齢は分かりづらくなってしまう。
少し幼い彼女の顔立ちからは、年齢はともかく、何年生かまでは正確にはわからない。
僕(意外に先輩なのかもしれないな)
表情を強張らせたままの彼女を見つめながら……。
僕はなんとか友人に返事をした。
僕「違うっての。券売機の前で偶然……な」
そのまま軽い感じで、話題を女の方にふる。
本当にまあいいや、という感じで話している所から、事の経緯にそこまで興味は無いのだろう。
女「うん、よろしくね?」
彼女も軽い感じで返事をしている。
あれ?
先ほどまで曇っていた表情は、もう見えない。
僕(見間違い……?)
確かに、さっきまでの彼女はこんな優しい顔をしていなかったはずなのに。
先ほどの話題のまま、この子が僕と仲が良いという話が続いていたら……彼女は、ずっと同じ表情をしていたんだろうか?
僕(……自分が彼氏だと、嫌なのかね)
思わず考え込んでしまう。
女「はいっ、ごちそうさまでした」
そうこう考えているうちに、彼女はお盆を持って、席から立ち上がっていた。
やっときたか
9月に一本落とすって言ってたから、いつかいつかと楽しみにしてたんだ
また会えて嬉しいよ
女「定食交換してくれて、ありがとうね。じゃあ、私授業あるからいくね」
だからこそ、明るいく礼を言って去っていく彼女の背中を、大した感情も持たずに見つめる事ができたんだと思う。
友「な、可愛い子だったな」
僕「……だな」
友「いやあ、大学らしい出会いじゃないか」
僕「まあ、友達が増えるのは嬉しい事だよな」
友「へえ友達、友達ねえ……」
僕「……なんだよ」
ニヤニヤと、彼はこちらを見つめている。
先ほどの彼女の笑顔に比べて、えらく汚ならしい……が、やはり憎めないような雰囲気を醸し出している。
悪気のない嫌味だからこそ、僕もこうして、こいつと付き合っているんだ。
彼はまだ何かを言いたそうだったが、授業の時間、という事を思いだし、この話題を終了させてしまった。
僕「そうだな……そろそろ行くか」
多少の不満は残ったが、遅刻になっても困るので。
言われるままに席を立ち、僕たちも教室へと向かう。
目的地である広い教室の中には、もう席の半分くらいを埋めるだけの人数が集まっていた。
入学当時は、この人がたくさんいる雰囲気に圧倒されていたが……ニ年もすれば、まあ慣れるもので。
友「これは座ってればいい授業だから、楽勝だよな」
僕「な」
こうして、余裕な顔で教室に入っていけるというものだ。
言われた方を見ると、確かに。
長い髪の後ろ姿、着ていた服の雰囲気も見覚えがある。
彼女はやや前の席に座っている。
そして、ちょうどいい具合にその後方の席が空いていた。
僕「あそこに座るのか?」
友「座りたいのか?」
僕「スペースがあったから、尋ねただけだよ……ま、どっちでも」
友「や、さっきはどうも?」
僕の言葉が終わらないうちに、友はズカズカと歩き出して彼女に声を掛けてしまう。
最初から座るつもりだったんだろう、彼はそういう性格だ。
女「はいっ? ああ、さっきの……同じ授業だったんだね」
友「後ろ、大丈夫?」
自然な友人のような振る舞いで、彼は言う。
女「うん、平気だよ」
よかった、あからさまに嫌な扱いはされていない事は、なんとなくわかった。
それでも、僕の頭には彼女が学食で見せたあの表情が忘れられなかった。
……冷たくて、相手の全てを拒絶するような彼女の表情を。
授業が始まってからも、僕は小さく揺れる彼女の黒髪を見つめながら……その表情ばかりを思い出していた。
友「おい、もう授業終わったぞ」
考え事をしている間に、講義が終わりっていたようだ。
あれだけ教室いた人たちも、今は疎らに数人が教室に残っているだけだ。
友「じゃ、俺たちも帰るか」
友は机のルーズリーフやシャーペンを既に片付けたらしく、もう手にカバンを持って帰る支度を済ませていた。
僕はまだ荷物を全部しまいきっていない。
友「ねえ、女ちゃんはまだ授業ある?」
その間に、友は話し相手に彼女を選んだようだ。
女「うん、私はこれで終わりかな」
友「そっか。よかったら、途中まで一緒に歩かない?」
女「あ、いいよ?」
あっさりと、彼女はこれを承諾する。
男嫌い……というわけではないんだろうか。
友の言葉一つ一つに対する反応をさりげなく見ていても、先ほど見せた冷たい顔は微塵も見る事が出来なかった。
僕(本当に自分の事が嫌なだけだったのかな?)
また、そんな事を考えてしまう。
友「じゃあ……行こうか」
いつの間にか、教室には僕たち三人だけが取り残される形となっていた。
僕は少し慌ててカバンを持ち上げる。
僕「お、おう。もう大丈夫」
女「ふふっ」
静かな教室に、かすれたような声で小さく笑った彼女……。
本当に『とりあえずは』嫌われていないようだ。
僕は二人の後ろを付いていくように、教室から出ていった。
目の前には、彼女の長い髪の毛が……会った時と変わらない様子で、揺れていた。
僕たち三人、並んで学食に向かっている。
帰りの方向とは逆なんだけれども……まあ、帰ってもやる事がないので、暇潰しに歩いていた。
僕「他の授業も被ってるかもね」
女「ね?」
友「あ、そう言えば、何年生? まだ聞いてなかったよね」
女「一年生だよ?」
ふわりとした感じで、彼女は言う。
ああ、一年生だったのか。
僕「じゃあ、僕たちのニ個下だね」
女「あ、先輩だったんだ……ですね」
友「ははっ、言葉遣いなんて気にしないでいいよ」
女「わかった、気にしない?」
僕「あ、あとで受けてる授業教えてよ」
女「うん、いいよ?」
その顔には、冷たさの欠片も見えない。
さっき、彼女が見せた一瞬の顔。
僕(……そんな事、聞くのは変だよな)
僕は頭にパッと浮かんだ質問を飲み込み、そのまま歩いていた。
女「……あ、じゃあ、私電車だからもう行かなくちゃ。またね?」
学食に着いて数分、彼女はそう言って去ってしまった。
男二人が、残ったこのテーブルで次は友が口を開く。
友「……友達にでもなる気か?」
僕「ん、何が?」
友「いや、授業聞いてたからさ」
僕「ああ……話題の一つだよ。無難な所から、ね」
友「ほうほう、いつかは突っ込んだ話もするわけですな」
友「べっつに?」
僕「ノートを見せてくれる人間は一人でも多い方がいいだろ?」
友「まあ、そう言う事にしといてやるよ」
僕「……」
何を言っても、本人がそういう印象を持っていれば、それを覆すのは難しい。
だから、僕はこういう時は無駄に言葉を喋らない。
ただ、面倒な押し問答が続くだけだからだ。
僕「じゃあ、今日は帰るよ」
友「お。乗ってくか?」
僕「自転車だからいいよ」
友「そうか、じゃあまたな」
僕「ん、また」
僕は、一人で放課後の道を走っていった。
一人きり、部屋の荷物が少ない、小さな学生アパートの一室。
誰もいない部屋にただいまを言っても、返事はあるはずも無く。
帰ってからやる事と言ったら明日の準備をする事くらいで……。
バイトも遊ぶ約束もしていない今は、ただ体を休める事しかなかった。
僕「ふぅ……」
フローリングの床に座り込み、僕は一息。
何を考えるでもなく、天井を見上げていた。
僕「新しい、友達ね」
自然と、今日話した彼女の事が頭に浮かぶ。
食券を間違えて、それを交換して一緒にご飯を食べて……。
暖かい笑顔と、一瞬だけ見えた冷たい真冬のような彼女の顔。
その対照的な二つの顔を見た僕は、帰ってからもこうして彼女の事を思い返していた。
強張った、というだけでは足りないくらいの一瞬の表情を。
それとは逆に、美味しそうにご飯を食べて笑顔になっている彼女の姿を……僕はずっと考えていた。
彼女が自然に頭の中に浮かんでは、消えて。
また浮かんで、消えて。
今日一日だけで見る事が出来た、様々な感情を、僕は思い返していた。
いつの間にか、カーテンの外から部屋に暗闇が入り込んでいる。
僕「考えても仕方ないか……」
すぐに僕は一人分の夕食を作った。
僕「……いただきます」
一口、大好きな味付けのお肉を食べてみる。
なんだかその味は、初めて一人暮らしをした日に食べた肉の味に、よく似ていた気がした。
僕(お昼ご飯はあんなに美味しかったのに)
思った事は言葉に出さず、僕はお皿に持った惣菜を一気に口に詰め込んだ。
味はよくわからなかったけど、今の僕は何を食べても、同じ感想を多分持ったんだろう。
明日の学食で……お昼ご飯を食べたい。
もう一度、彼女と話ながらご飯が食べたい、という変な感想を。
僕(明日になったら……また彼女に会えるのかな)
僕「おはよ。あれ、友は?」
女「まだ来てないよ?」
僕「またサボりかな? これで何週間連続だか……」
彼女の隣に座りながら、いつものそんな話をしていた。
もう、一ヶ月近くもこうして彼女とは授業を受けている。
それだけ時間が経てば、最初に知り合った時とは距離感も変わっているわけで。
……たまに、他の友人からは「恋人?」とよく聞かれる。
その度に否定はするのだけれど……やはり、悪い気はしない。
僕(そんな仲に見えるのかな?)
授業は大体一緒、お昼はお昼で、他の友達に混じって彼女も同じテーブルを囲んで……。
大学にいる間、彼女と共に過ごす時間が増えていたのは確かだった。
でも、僕たちの間にはそんなカップルになる気配など全然無いのが現状だった。
大学の時間の中で、よく一緒にいる。
ただ仲がいいだけの……そんな関係。
この一ヶ月で縮まったのは友達としての距離感だけ。
彼女からの恋愛アピールも無いので……向こうもそんな感じなんだろう。
僕は僕で、積極的に話したりは出来るのだけれども……いまだに、彼女の冷たい顔が心から、離れない。
距離感を測って生活しているような……踏み込んだ行動、というのが出来ずにいた。
女「……あ、先生来ちゃったね」
勢いよく、教室のドアが開く。
僕の思考も、彼女との会話もそこで終わり。
この講義が終わるまで……僕たちは何も話さないで、遠いお昼ご飯の時間まで、我慢をする。
一ヶ月、彼女とはそんな授業風景を繰り返していた。
女「今日は早く終わったね?」
僕「いつもこれくらいの時間に終わればいいのにな」
定められた時間より二十分も早い、お昼休み。
僕と彼女は並んで学食までの道を歩いていた。
僕「今日は何食べるの?」
女「……ラーメンかな」
僕「ふう?ん」
受けていた授業が、実はよく被っていたのを知り……休み時間の会話もよく弾む。
フィーリングが合った彼女とは、そのまま自然とよく一緒に行動するようになっていた。
僕(嬉しいけれど、彼女にとっては先輩でお友達……なんだろうなあ)
女「ラーメン、楽しみ?」
ふにゃっ、とした笑顔。
僕(でも、この笑顔が近くで見られるなら……今の関係だって悪くないか)
僕は、そう考えながら学食に向かっていた。
友「よう、お疲れ」
僕を見つけるなり、スッと右手を挙げ挨拶の言葉を投げ掛けてくる。
僕「サボったのか?」
座りながら、僕は言う。
友「あの授業はいいんだよ。朝の必修科目は出たんだから、それで、な」
なるほど、これが生活に慣れていくという事なんだな、と僕は心の中で納得した。
友「あれ、女は? 一緒じゃない?」
僕「ああ、ラーメン買ってから来るってさ」
友「ん……おっ、きたきた」
友の言葉で振り向くと、お盆を持った彼女がこちらに向かって歩いているのが見えた。
人はたくさんいても、彼女だけはすぐに見つける事が出来るんだ。
華奢な体ながらも、その腕と足はふらつく様子も無く真っ直ぐこちらに向かっている。
カタリとお盆を置き、彼女はそのまま席に座る。
友「よ。お昼食べたらさ、どこかに遊びにいかない?」
そのまま、箸を動かす前に、友が彼女に話し掛けた。
僕「遊びにって、授業はどうするんだよ」
友「どうせ午後は出なくて大丈夫な授業なんだしさ。時間がある時くらいは、な?」
一応、横槍を出してみたけれど。
僕「はっは……息抜きは大事だものな」
友「おうよ」
友も、ここで出掛ける事を本気で止めるとは思ってないんだろう。
その軽い反応から、それがわかった。
ん。
次に口を開いたのは彼女だった。
目が見開かれ、キラキラした表情がそこにはあった。
……何となく横目で見てしまったのは、彼女が体を乗り出し、いかにも出掛けたいという仕草を見せたからだ。
友「そうだな?。この辺り……まあ、俺が車あるからそれで行けばどこでもいいんだけどな」
大学周辺の地理は、入学してからの一年でそこそこ覚えてはいたけれども。
僕「その点は、地元のお前に任せる。女はどこか行きたい場所とかある?」
僕は、彼女の希望を聞いてみる事にした。
女「そうだなあ……遊ぶ場所かあ?」
彼女は、この辺りの人間なんだろうか?
女「ん?……あまりわからないかなあ……」
必死に、何か答えを出そうと悩んでいるその様子から……それは違うという事がわかった。
……僕らがそんな話していると、背後から活発的な声をした、誰かが話しかけてくる。
「ねね、なんの話っ?」
活発「おはよ、女」
友「なんだ、お前か」
活発「お前って言うな!」
シュッ、とクリアケースの大学カバンが友の腹の辺りを小突いた。
友「いててっ。乱暴するなよ」
活発「まったく……」
呆れた表情で立っている、強気な女の子。
彼女も僕たちと同じ三年生で、学食ではよく一緒のテーブルを囲んで食事をしている。
この歳になると、男女であるという事はあまり意識しないようで……気が合った友人、として彼女とは付き合っている。
活発「今日も可愛いね、女ちゃんてば……もう」
女「えへへ」
ズズズ?ッ。
僕「……麺すすってる時に頭撫でるのは止めろってば」
ちなみに、女が可愛くてお気に入りだそうだ。
学校内で二人一緒にいる時間も多かったみたいだ。
活発「それで、なんの話だっけ?」
友「ああ、午後暇だから遊びに行くかって話でな。どこに行くか、考えてたのよ」
活発「あ、じゃあ私も行く行く?」
友「だから、行きたい場所をまず言えっての。それからだよ」
活発「ん?」
女「……」
ん?
下を向いて、考え込んでいる女の姿。
なんだろう、何か意見があるのだろうか?
僕「女は、どこか行きたい所があるの?」
もう一度、僕は彼女に聞いてみる。
女「私は……」
女「あの、私、あまり遊ぶ場所とか方法がわからないから……ちょっと困ってる」
僕(方法?)
友「ははっ、気にしないで大丈夫だよ。遊んでいくうちに慣れるよ」
活発「そうだよっ。お姉さんが何でも教えてあげるから……安心して」
女「ん……」
友「ま、あとは移動しながら考えるか」
活発「そうだねっ。とりあえず駐車場まで行こう行こう?」
僕「女、大丈夫?」
女「んっ? 何が?」
僕「いや、なんだか……元気なさそうに見えたから」
女「うん、大丈夫。元気ないと言うよりは、ちょっと戸惑っちゃってさ」
僕「戸惑うって?」
女「ん?、内緒」
僕「なんだよそれ」
女「ふふっ、ラーメン美味しかった?」
たまに、元気に言葉を発する彼女の顔にも、少しの陰を見つけてしまう。
どこか無理しているような、気持ちの奥底では何かをずっと考えているような……。
そんな不思議な彼女の表情を、僕は忘れる事が出来ない。
僕「……ま、無理だけはしないでな」
女「うん、ありがとう?」
車を運転しながら、友は言う。
後ろに座っている女の子二人は、仲良くお喋りをしていてこの言葉は聞いていない。
僕「そうだなあ。ここは無難に……ボウリングとか?」
友「人数が人数だしな。他にも一通りは施設はあるけれど……」
活発「ボウリング賛成賛成?。女ちゃんもそれでいい?」
女「う、うん。大丈夫だよ!」
バックミラーに映る、無理をしたような表情が一つ。
何だか、気になってしまう。
友「いきなり後ろから乗り出してくるなっての!」
活発「女ちゃんは、ボウリング初めて?」
女「な、何となくはわかるよ?」
友「聞いてない……」
僕「ははっ、安全運転で頼むよ」
友「……おうよ」
活発「ホントホント。前に来たのは去年の……暮れだっけか?」
友「ちょっとした、忘年会もどきで来た時だな。まあ一年の時はあまり遊ばなかったし、二年でもここには来なかったよな」
女「そうなの?」
僕「まあ、みんな真面目だったんだよ。そんなに遊び遊びはしなかった感じで」
女「ふ?ん……」
僕(何だか、やっぱり元気無い?)
活発「でも、今考えるとちょっと時間もったいなかったかもね。遊べる時に遊んでおけばって……最近そう思うよ」
活発「まあまあ。今は目先の事を楽しまないとさ!」
元気な声と共に、バシッという肌を叩く音が響いた。
友「いっつ!」
女「……っ、あははっ。活発ちゃん強い?」
活発「ふふん」
友「と、とにかくレーンを借りようか。名前書いて、レンタルシューズ借りて……」
女「……
笑っていた彼女が、ヒソヒソと僕の耳元で囁いた。
女「靴のレンタルってなあに?」
ポソリ。
女「おおっ……」
機会の前まで案内すると、彼女は驚愕した様子でそれを見ていた。
何に驚いたかは、わからない。
僕「サイズわかるよね。それを履けばいいだけだからさ」
女「……」
女「……ねえねえ僕ちゃん、ちょっといい?」
耳打ちが、もう一度。
女「あのさ、そもそもボーリングって何すればいいの?」
僕「……え?」
女「ボ、ボールを使うのは何となくわかってるよ。でも投げ方とか、ルールとか……ね?」
僕も、彼女の耳に言葉を返す。
僕「何となくわかるって言ってたのは?」
女「……ウソ」
ポツリ。
そこから、ボールの投げ方からルールまで、遊ぶのに困らない範囲で彼女に教えてあげた。
友と活発は、隣のレーンでどんどんゲームを進めている。
僕「で、なるべく真ん中を狙って。あ、その線は踏まないの」
女「むう……」
僕「じゃあ、とりあえず投げてみなよ」
女「んっ……おおっ、なんだかゴロゴロするよ!」
ボールが転がってピンを倒す度に、一人で興奮した歓声をあげていた。
女「わ、真っ直ぐ真っ直ぐ?」
はしゃぐその姿は、初めて遊びを覚えた、子供みたいなそのままの姿で……。
その無邪気さが、やはり可愛らしく思えてしまう。
自販機の前で休憩をしていると、活発が声をかけてくる。
活発「や、ラブラブだね」
僕「急に、なんだよ」
活発「あんなにはしゃぐ女ちゃんの姿なんて、初めて見たからさ。二人とも楽しそうだったね」
活発「まあ、コーチがいいからかな、あははっ」
僕が喋る間もなく、言いたい事だけをただ話している彼女。
僕「ラブラブとか、そんなんじゃないの」
活発「そうかな?? 端から見てるといい感じに見えるんだけどさっ?」
僕「女が元気だから、そう見えるだけだよ。自分はいたって普通の反応」
活発「いやあ……相当顔がニヤついてましたよ、お兄さん」
僕「……それは、女が可愛いから」
活発「あははっ、バレバレな反応するね。嫌いじゃないよ、そういうのってさ」
そういう気持ちは何となくわかるけれども……。
僕(彼女のあの表情を見てからは……)
いまだに、僕の頭の中には冷たい彼女の顔が浮かんでいる。
会ったあの日から、その表情だけはどうしても消えてくれていない。
僕(だから、僕はそういう感情をいまいち持ててないのかもしれない)
活発「……まあ、他人の恋路に口出すのは野暮だよね」
僕「そんなんじゃないって」
活発「ははっ、そういう事にしておくよ。野暮はしないけど、応援はさせてねっ」
僕「……ん」
結局最後には、頷いてしまった。
女「おかえり?」
僕「ただいま。はい、これジュース。友のはこっち」
友「お、ありがとよ」
女「ありがと?」
女「……えへへっ、ミルクティー美味し」
僕「それは、よかったよかった」
多分、今日はあの冷たい彼女にはならないのだろう。
僕は何となく、そう思った。
活発「ね、僕ちゃん。アタシのジュースは?」
僕「……」
その代わりに、嫌に甘ったるい笑顔でこっちを見つめている活発がいた。
女「ふふっ」
おしぼりで手を拭きながら、活発は言う。
ボウリングが終わって、僕たちは近くのファミリーレストランにやって来ていた。
僕「何食べようかな。気分的には、カレー辺りを……」
友「またカレーか。好きだなお前も」
僕「好きなんだよ、仕方がないだろうが」
活発「……はぁ、女ちゃんとも、ご飯食べたかったなあ」
一人で座っている向かいの彼女は、うなだれた様子で空いたソファーの空間を見つめている。
友「仕方ないさ、帰らないと行けないって言うんだからよ」
活発「そうだけどさ?、残念だよ。まだ夕方六時前なのにさ……」
活発は、本当に落ち込んだ様子でメニューを見ている。
ここに来る前に、彼女がもう帰らないといけないという事で……大学近くの駅に降ろしてきたのだが。
活発は、さぞ名残惜しい様子で彼女が改札口に消える背中を見つめていた。
多分、僕も同じような目で女の背中を見つめていたんだろうか。
僕(野菜カレー……いや、やはりシンプルに普通のカレーが)
だからこそ、こうしてメニューに集中する事でいない彼女を忘れようとしていた。
活発「彼女がいないと悲しいわよね? 僕君もさ?」
友人の語りが、僕の目をメニューから外させる。
僕「何で、そうなるかわからないんだけど……」
活発「だって、仲良くボウリングやってたじゃないの?」
僕「絡みやすいんだよ、よく話しかけてきてくれるから」
活発「授業でも結構一緒にいるよね?」
友「おまけに、よく昼飯もさ」
それは大学という空間の中の話であって……。
同じ時間に授業があって、同じ時間にお昼休みがあるから。
知り合った人間と一緒にいるのは、ある意味では当然というか、仕方ない事というか……。
僕「まあ、友達としてな」
気にしすぎだ、と思い……最後には結局、こういう言葉で片付けてしまっている。
活発「ね。なんか、ちゃんと一線を引いてる男女の付き合いかただよね」
友「大学が終わったらすぐに帰るし……今日だって結局は大学が終わる時間とあまり変わってないもんな
僕も、何度か夕飯やら放課後の遊びにやら誘ってはみたのだけれど……。
その度に、彼女から来る返事は「ごめんね」の一言。
やっぱり嫌われているのか、何度そう思ったか、わからない。
でも今日だって、さっきまで彼女は僕たちと遊んでくれていた。
僕(ちゃんと線引きをしている子なんだな……ちょっと寂しい気もするけどね)
友「家が厳しいのかな?」
活発「ん?、今度会ったら少し聞いてみようかな。一年生の時は授業も多いから……遊び歩かせないようにしてるのかもね」
僕「箱入り娘?」
僕「娘が可愛いんだよ。きっとさ」
友「そんなもんかねえ。もう少し、のびのびと遊ばせてもいいとは思うけどさ」
活発「ね?……あ、遊びと言えば。夏休みとかさ、みんなでどっか行きたいよね」
僕「夏休み……そういえばもうすぐだね」
友「何も考えないで遊べる夏休みは、これが最後かな」
その、開放された時間で、彼女は僕たちに会ってくれるんだろうか?
情報が無い今は、夏休みという単語を聞いただけでも、ただ不安になるだけだった。
友「ま、何でもいいか。先の事はその時に考えればさ」
活発「そうだよっ。今はご飯にしよう。お腹が膨れれば、考えも変わるよ」
僕は一言、店員にカレーライスとだけ喋っては、しばらく無口になっていた。
僕(女と一緒の……夏休み)
彼女の事を、頭の中でボーッと考えて、思考がぐるぐる回り。
僕(箱入り娘?)
まだ知らない彼女の事情を、勝手に頭で考えて……。
彼女の、魅力。
不思議な彼女。
ミステリアスな部分にも、僕は惹かれていたのかもしれない。
また明日、彼女に会える事を楽しみにしながら……僕はまだ何も来ていないテーブルの前で、銀色のスプーンを強く握った。
僕「そ。よかったら、またみんなで遊びに行かない?」
女「そうだねえ?……」
お皿の上のチャーハンを頬張りながら、彼女はモグモグと考え事をするように僕の方を見つめている。
そんな姿も、やはり可愛らしい。
僕「まだ、遊ぶ場所は決めてないんだけどさ。少しくらい遠出とかしてみようか、って話が出ていて……」
女「遠出って?」
僕「ちょっと車で行動範囲を広げる感じで、さ。余裕があればどこかに泊まったりとか……」
この提案は、必要以上に僕を応援してくれる友と活発の考えだ……とりあえず誘ってみなよ、と背中を押された感じだった。
僕「どう……かな?」
女「うんいいね、そういうのもさ! なんだか楽しみだよ」
ほっ、と一安心。
女「ふふっ、遊びの相談なら大歓迎だよ?」
初めてこの学食で会った時の……あの冷たい表情が、まだ僕の胸に刺さっていた。
僕(あれから、女の冷たい顔を見る事はないけれど……)
僕(本当に、あれは彼女の表情だったんだろうか?)
そんな事すら考えてしまう。
普段一緒にいる時の彼女は、明るくて何にでも一生懸命で……優しくて、とても綺麗で。
それが、ただの友達に振り撒くような表情だとしても、裏表があるような雰囲気ではなくて……そのままの彼女がそこで笑っている。
そんな気がした。
女「……あ、でも夏休み前のテストがちょっと不安かな??」
僕(彼女の表情は、暖かくて……柔らかい)
僕「ん?、ノートや教科書持ち込める授業ならなんとか。まあ、出席がよければとりあえず大丈夫だよ」
女「あ、じゃあ私平気?」
ふふん、と言った様子で彼女はまたチャーハンを食べ出す。
僕「……え、それで勉強の話終わり?」
女「終わり?。真面目に授業受けてるから、考えすぎても逆効果かなって」
僕「まあ、女なら大丈夫だよ」
女「ねね、遠出ってさ、一体どこに行くの!?」
出かける事には否定的ではないらしい。
僕はまた一人で心の中で安心をする。
活発「相変わらず、楽しそうだね?」
女「あ、おはよ二人とも」
僕「今、ちょうど夏休みの話をしていたんだよ。女も出かける事自体は大丈夫だってさ」
活発「まだ、予定も何もたててないけどね」
友「全員参加出来そうという事で……じゃあ次は場所を決めるか」
僕「それは、一番大事な部分だな」
友「とりあえず、候補地だけでも挙げていこうぜ?」
活発「はい、アタシは海がいい?」
活発「あ、やっぱこう別れるんだ……ちなみに、女ちゃんはどっちに行きたいかな?」
僕「二択限定はひどくないか、活発」
活発「ああ、ごめんごめん。どこか行きたい希望ある?」
女「私は……そうだね。星が綺麗に見える場所に行きたい、かな」
星……?
僕「綺麗に見える場所?」
女「うん。海でも山でも……夜空を見る事が出来れば、それで」
彼女は、どうして星が見たいと言ったんだろう。
根本的な理由は、好きだから……なんだろうけど。
僕は、その彼女の回答に惹かれてしまい……。
僕「僕も、星が見える所に賛成」
彼女と一緒に空を見る事を……夏が始まる前から、ずっと考えるようになった。
友『遊びに行く場所、海に決まったから』
そう電話で知らされたのが、今から三日前。
僕たちは今、その海に向かう数十キロの道を……車に揺られながら走っていた。
活発「いやあ、暑いけどいい日和だよね」
友「おう、まさに絶好の海日和ってやつさ!」
国道を真っ直ぐ、真っ直ぐに……。
いつも元気な活発が、夏の陽気を浴びて更に元気な姿になっている。
僕「なんだか、女がオシャレしてる」
白いワンピースの上に、薄布のマンダリンオレンジを羽織る姿が可愛らしい……。
気付いたからこそ、バックミラーの向こうにいる彼女を、つい誉めてしまう。
女「あ、ありがとう。わざわざ新しいの買っちゃったんだよ?」
パチリ、とミラー越しに彼女と目が合った。
反転した小さな空間で、彼女と僕はお互いを見つめあっていて。
女「海、楽しみだよね僕ちゃん」
ニッコリ笑う、彼女の頬には窓から射し込んでる陽の光が貼り付いて……ぷっくりとしたその笑顔が余計に輝いて見える……。
友「おっ、お前もノッてきたな」
活発「あはは、いいねいいね?」
一気に僕も元気になってしまい……つい柄でもなく騒いでしまった。
……でも、僕は。
女「ふふっ」
小さな世界で笑う、彼女の笑顔を見る事ができたから。
それだけで、僕の心臓は夏の太陽にも負けないくらいに、熱く元気になっていたんだ。
僕(女は、太陽みたいな子……)
少し暑くなった車内で、僕は人一倍の笑顔で外を見つめていた。
もうすぐ、海が見えてくる。
照り付ける日射しが、地面のアスファルトを刺激し、二重三重にも重なるような暑さで僕たちに降り注いでいる。
まだ立っているだけなのに、ほんのりと汗が全身に吹き上がってくる。
女「着いたね! うわあ、本当に海だよ!」
活発「太陽が反射して……キラキラ。すごい綺麗……」
歩きながら、僕は海と彼女を交互に見つめていた。
海の光も見応えはあったけれど、風に揺れる彼女の髪は……普段見ている髪より、美しく感じた。
女「ほら、僕ちゃんも。海、綺麗だね」
僕「興奮しすぎだよ、海は初めて?」
僕「そっか、やっぱり珍しいのかな」
僕も海の無い場所に住んでいたから、その気持ちだけはよくわかる。
女「ふふっ、お友達と来られるのが楽しいんだよ!」
いつの間にか、彼女は横に並んで歩いている。
その口調は、公園に遊びに来た園児のような……少し幼さを感じさせるような雰囲気もあった。
僕(この顔が本当の彼女のような気がする……)
最近の僕は、そう考えるようになっていた。
会話に合わせるように、前を歩いていた活発が発言をする。
女「うん!」
友「何気ない日々が幸せだよな、うんうん」
活発「アンタってさ、いつもオッサンみたいな事言うよね」
友「うるさいな。楽しいんだから、それでいいだろ?」
活発「……くすっ。うるさいよ、バカ」
笑いながら、活発は友に怒っていた。
僕たちの間には、見えない明るい輪が広がって……笑顔が連鎖されていく。
浜辺まではもうすくだ。
みんなが幸せになりながら……僕たちの足が、海に続く熱砂に、その一歩を踏み込んだ。
僕「人がたくさんって言うか、浜辺がちょっと狭いんだな。人口密度のせいだよ」
活発「有名な海水浴場ってわけじゃないからね?。ほら、海の家だって……二軒しか開いてないみたいだし」
女「……ねえねえ」
また、彼女からの耳打ちだ。
僕はゆっくり耳を近付ける。
女「海の家ってなあに?」
初めての海なら、こんなものか?
僕「……浜辺で色々売ってくれる、海のお店だよ」
女「へぇ、なんだか面白そう?」
彼女は、ワクワクとした顔で二軒のお店を見つめている。
僕(後で、アイスでも買ってあげよう)
そんな事を考えながら、浜辺を歩き、みんなが座れそうな場所を探していた。
手頃なスペースを見つけ、僕は言う。
友「あ、じゃあパラソルだけ借りようぜ。ちょっと行ってくるから、これ敷いといてくれ」
そう言って、友は僕に大きめのレジャーシートを託し、海の家まで走っていった。
すぐにパラソル用の穴を地面に開けてもらい、大きな傘が立ち……日陰のスペースが出来上がる。
女「これなら暑くないね?」
友「パラソル借りたら、ロッカーはタダって言ってたからさ。みんな、貴重品だけ入れておくか?」
活発「賛成賛成?。誰かが留守番は寂しいからね」
女「ふふっ、みんなで海だね」
活発「お?」
砂浜を元気に駆ける男女四人。
年甲斐もなくはしゃいでしまったのは、多分まだ僕たちが若いからだろう……。
女「ま、待ってよ?」
一人、スタートダッシュの遅れた彼女。
こんな時にも、彼女の事は放っておけない。
僕「ほら、転ばないようにさ。波に足をとられないで……」
彼女の横で、腰の辺りに手を添えてあげる。
白いワンピースと彼女の髪が、ふわふわと潮風に揺れて……。
女「……ありがと」
女「これが海なんだね……」
足に絡み付く小さな波を、彼女は何度も踏んで、蹴りあげて。
海の感触を、一人で楽しんでいるようだった。
ザザーン。
女「ひゃうっ!」
流れる波が、彼女の足を襲う。
活発「あははっ、あまり奥行くと服にかかっちゃうよ?」
ザザーン。
活発「おっと。ちょっとグラグラ?」
可愛らしい格好をしている女とは対照的な、ショートパンツから伸びる、活発の生足。
その脚にも、同じように波が襲いかかっている所だった。
活発「んっ、そんなに見ちゃって、どうかした??」
僕「べ、別に!」
活発「ん?、足とか見とれちゃった? それとも……こっちの方かな?」
Tシャツをあばらの辺りまで捲り、露になった肌からヘソ出しの格好をしている活発が……そのおヘソを軽く指差した。
そんな事をされたら……やましい気持ちはなくても、僕は余計に焦ってしまう。
僕「み、見てないから。そんな格好しても見てないから!」
普通の水着を見るより……なんだか艶やかに感じてしまうのは、どうしてだろうか。
僕(……とにかく、言い訳でも何でもいいから、何か反論を……)
女「えいっ、えいっ?」
僕が口を開くよりも早く、パシャッとした衝撃が僕の体に走る。
僕「うあっ、冷た!」
女「僕ちゃんのエッチ?」
口と手、その両方を動かしながら、彼女は僕に水と言葉の攻撃を仕掛けてきた。
冷たく、塩辛い水はさっきから僕の体に容赦なくかかっている。
女「あははっ、ほれほれ?」
僕「……やったな、この!」
女「へへ?ん、そんなの効かないよ?だ」
パシャパシャと、水の欠片が僕の体に降り注ぐ。
僕も負けずに、海の塊を作り出し、それを彼女に向けて押し返す。
女「あははっ、全然弱々?」
僕「子供か! このっ!」
女「あ、やったな、こいつ?」
足元の海が、僕と彼女を包んでいた。
これだけ太陽が暖かいんだ。
僕らの体にくっついたこの海は……すぐに乾いてくれるだろうか。
キラキラの中で笑う彼女に、僕の目は簡単に盗まれる。
女「……あっ!」
僕「あ……あぶな!」
だからこそ、少し乱暴に彼女を押した波の存在にだって気付く事が出来て……。
彼女が海に落ちる前に、僕はその体をつかまえて……しっかりと抱き寄せる事ができたんだ。
女「あ……」
彼女が波に負けないように、その体を抱きしめて。
僕らの足にもう一度、大きな波が来たけれど……海で遊ぶ二つの体は、もう揺れる事はない。
真夏の太陽の下と波の間で……時間が止まったような夢を見た。
彼女の耳と頬が、夏色に染まっていた……ああ、これも。
海で遊ぶ二つの体は、もう少しの間だけ、波と一緒に揺らめいていた。
女「ごめんね?。支えてくれてありがとうね」
鮭おにぎりを頬張りながら、彼女は言う。
あれだけの事があっても、海から出た彼女は、すぐにその様子を元に戻してしまう。
活発「ふふっ、僕くんヒーローだね」
友「ナイスだったな。ほら、褒美のツナサンドだ」
僕「……そりゃあどうも」
心なしか、友も活発も笑顔でこっちを見つめている気がする。
僕(笑顔と言うよりは何かを考えている、ニヤニヤ顔か……)
女「はぁ、唐揚げ美味しいよ?」
彼女だけは、気にせずに少し時間のずれた夕飯を食べていた。
僕(あまり、気にしていないのかな)
僕(……まあ、彼女がびしょ濡れにならないで何よりか)
今は、そう考える事にした。
柔らかな肌の感触が、腕に、胸に、お腹に……触れ合った部分全てに余韻として残っている。
友「いやあ、夏だねえ、夏」
相変わらず、ニヤニヤと僕を見つめる憎たらしい友人と。
僕(……活発だって笑ってるに決まっている)
活発「……」
僕「?」
変だ、少し前までは笑顔でこちらを見ていたはずなのに。
遠い目をしながら、何かを考えて……静かに、僕の方を見つめている。
女「ねね、活発ちゃんも食べなよ。美味しいよ??」
しかし、女が唐揚げを活発の目の前にヒョイっと箸で差し出すと。
活発「……ふふっ、はくっ」
満面の笑みで彼女の唐揚げを頬張り、そこからは終始笑顔の活発に戻っていた。
女「えへへっ」
女を見ながら、優しく微笑むいつもの活発だ。
また、僕の思い過ごしだろうか。
……
僕(女の問題と同じ、考えても仕方ないか……)
僕は残りのおにぎりを口に詰めて、それをお茶で無理やり流し込んだ。
そのまま寝転がって、太陽が隠れ始めた空を見上げた。
空には、もううっすらとオレンジ色が混ざりはじめていた……。
ただ、地面に背中を合わせている僕の目には……雲が無くて、空の境も何も見えない、ただのラベンダー色の空。
友「……夏が終わったら、就活しなきゃな?」
ポツリと、海を見ながら友が言う。
活発「そうだね?、早め早めに始めないとね」
今年が終わって、来年になって……残りの二年足らずなんて、あっという間に過ぎていくんだろうか。
僕「あっという間、なんだろうね」
頭の中ので思った事を確認するように、僕も言葉を発した。
友「八月が終わってさ。九月に学校が始まって……すぐに来年になるんだろうな」
活発「時間の流れって、早いよね。今は、こんなにゆっくりに感じるのに」
「……」
穏やかな波の音だけが、沈黙の間に流れている。
友「今は想像もできないな?。でも、俺は多分地元かな」
活発「そっか。僕ちゃんは?」
僕「ん……」
活発「まだ希望とか出してないの?」
僕「大まかには、考えてあるけどさ。どこに行くかまでは……ね」
空を見ながら、僕は答える。
活発「そっ、か……」
それから、その場にいる全員がしばらく押し黙ってしまった。
その沈黙を、気まずいとは思わなかったけれども……やはりどこか、流れる空気全体に寂しさが漂っていた。
友も、活発も、女も、誰もいない場所で。
僕は、一人で生きていく、なんだかそんな気がした。
僕(……なんで、こんなにセンチに考えてるんだろう)
夕焼けが残る海の向こうと、少しだけ寒く感じる空気の流れが、そうさせているんだろうか。
……こう考えると、気分は落ち込んでキリがない。
僕は、考えるのを止めて空を見る事に意識を向けた。
一つの明るい星が浮かんでいるのが、見えた。
その光が、僕に彼女の存在を思い出させてくれる。
僕は、視線を空から下に持ってきては、座っている彼女を見つめた。
女「……」
彼女も、先ほどまでの僕と同じ……あの、空で大きく光っている一番星を見つめていた。
ただ真っ直ぐに……空の向こうに想いを馳せているような、そんな目をしていた。
僕「……」
僕は、少しだけ星を見るのをやめて彼女を見ていた。
まだ夕焼けが終わりきっていない今は……なぜだか、空よりも彼女を見ていたかった。
活発「そうだね。帰りもあるし」
女「ん……帰っちゃう?」
空から目線を外した彼女が、帰るという言葉に反応した。
活発「一旦、車にね? とりあえず、荷物とかまとめたりはしないとさ」
女「そう……だね。わかったよ?」
テキパキと、片付けを始める僕たち。
これで浜辺には、誰一人として残っている人はいなくなった。
女「……」
僕「女、行くよ」
女「ん……」
浜辺の向こうに見える、いくつかのリゾートホテルが照らす、弱々しい明かりだけが僕らの目に入ってくる。
それ以外は殆ど光のない、本当に寂しい海岸だった。
僕「……」
女「……」
帰りの砂浜の上を、僕と女は何も話さないまま歩いていった。
座っている途中、話を聞いているようで全く話を聞いていない……そんな彼女の面影が見えた。
その目は、僕と同じように空に向かって……彼女もまた、同じ色を見つめていた。
僕(何かに魅入られたように、ただ空を見ている彼女は、とても神秘的で……)
僕(不思議な雰囲気に、僕は負けて……こうして静かに、何も言えない)
そのまま僕は、昼の熱を吸い込んだアスファルトを踏んでいたんだ。
活発「……」
車に乗り込み、運転席に座っていた友が言った。
友「ここから、また数時間かけてさ。移動するのは、正直疲れるわけで……うん」
行きも帰りも、運転はずっと友の役目だ。
友「運転、代われる奴いないだろ?」
女「運転できない?」
僕「同じく」
活発「あははっ、アタシは眼鏡持ってきてないから運転無理だ」
友「で……仮眠をさせてくれないかな。昼の疲れもあって、随分疲れたみたいでさ」
僕「急いで事故にあっても困るしな。それで、大丈夫だよね?」
確認を取るように僕は後ろを向いた。
女も活発も、首を縦に振って了承してくれる。
もうしばらく、僕たちはこの海の近くに停まる事になった。
僕は一人車から出て、海の方向を見ていた。
遠くに見えるはずの海が、空の黒と同化し始め、耳には波の音だけが聞こえている。
もう少し、近付けば海も見えるんだろうか。
活発「暇だねっ」
僕「んっ?」
……背中で、ドアの開く音と同時に活発の声がした。
活発「何してたの」
僕「別に何も。中よりは外の方が楽だから。活発は? 少し休んだりしないの?」
活発「アタシは大丈夫だよ。それより……さ」
いきなり横に並んだかと思うと、彼女は僕の肩にポンと手を置いてくる。
活発「ちょっと、アタシに付き合わない?」
僕「……?」
そのまま彼女は、海とはまた反対の……街のある方角に向かって歩きだした。
困惑しながらも、僕は彼女の後ろを付いていく。
僕「……どこに行くのさ?」
活発「あ、コンビニだよ。こっちの方向に確かあったよね?」
僕たちは、数少ない民家やお店が広がる穏やかな国道を……コンビニ目指して歩いていた。
僕「なんだ、付き合うって買い出しか」
活発「ほら、ご飯とか……水分とかね。男手欲しいから頼んだまでだよ?」
僕「なるほどね。そろそろエネルギーも必要な時間か」
活発「女ちゃんも、何だかボーッとしてて疲れてるみたいだったからさ。アタシたちが、ね」
女の家庭の事情を聞いてなあなあで終わると思うとだるい
僕(少し、残念)
活発「ん?、もしかして女ちゃんと留守番したかった?」
僕「そ、そんな事は、ない、よ」
活発「あら、分かりやすい。やっぱり、女ちゃんの事好きなんだね?」
僕「……」
活発「でも、その分かりやすいくらいの反応……アタシは好きだよ。ああ、真っ直ぐなんだなって、そう思えるから」
僕「そうだよ……好きなんだよ」
活発「うんっ。気持ちが聞けて、よかったよかったよ」
道。
コンビニはまだ遠いらしくて、光は見えて来ない。
彼女は言葉を続けた。
僕「ん?」
質問の意味が、あまりよくわからない。
僕「どういう意味で?」
活発「いや?、好き好きがバレやすい割には、消極的だな?ってさ」
僕「……消極的、ね」
活発「いやね、さっきの抱きつきとか、ああいうのはポイント高かったとは思うけどさ」
僕「……まあ、とりあえず聞くよ」
活発「でも普段とかはさ、もっと話しかけてもいいと思うよ? さっきだって二人して静かだったから……ちょっとハラハラしちゃってさ」
彼女が空を見ていたから……それを邪魔したくなかった気がして。
……とは、言えなかった。
活発「あ、あとさ、もう二人で遊んだりした? 彼女を誘った?」
僕「……いいえ」
僕「最初は誘ったりもしたさ。でも、そういう誘いは受けてくれなくて、それに……」
活発「それに?」
僕(彼女の、あの冷たい顔を見るかもしれないのが嫌なんだ)
僕「……」
活発「はぁ……そんなんじゃあ他の誰かにさ、女ちゃん取られちゃうよ?」
活発「彼女可愛いからさ、モテモテなんだよ。告白された話知ってるかな?」
僕「……え?」
それは、初耳だ。
その時少しだけ、胸がチクリと音を立てた気がした。
僕は、歩きながら彼女からの次の言葉を待っていた。
僕「へえ……誰? 知ってる人?」
活発「ああ、えっと。私たちと同級生の人なんだけどね。僕ちゃんは知らない人だよ」
僕「女にとっては二つ上か……それで?」
活発「あははっ、そんな神妙な顔で聞かないでよ。結果は断られたみたいでさ、その人相当落ち込んじゃってね?……」
それだけ、聞いてちょっと安心した自分がいた。
活発「……あ、今少し安心した? ダメだよ?、女ちゃんなんだからさ。きっと次々にターゲットにされちゃうよ?」
僕「……競争率が高そうなのは、なんとなく分かるけどさ」
僕「デート、か。まあ考えてみるよ、ありがとう活発」
活発「どういたしまして?。今日だってイイ感じでギュ?なんてしちゃったんだからさ、きっと大丈夫だよ!」
僕「……ん」
活発「あははっ、僕ちゃんてさ。二人きりになると結構素直な感じになるよね?」
僕「コンビニが見えてきたから、あまり騒がないだけ。素直とかじゃないの」
活発「はいはい。何だかんだですぐ着いたね?」
暗がりを歩いてきた二人には、少し眩しすぎるくらいの光がガラスから漏れていた。
僕たちは、その光に近付いていく。
活発「うん……あ、嫌われると言えばさ」
僕「?」
活発の言葉と一緒に、コンビニの自動ドアが開く。
お店と空の下の境界線で、活発はこちらを向いたまま僕に言う。
活発「そのフラれた男の子さ。こんな事言ってた」
その顔は、逆光……光の具合のせいか、いくつもの影を作って、なんだか……。
活発「告白した瞬間、彼女の顔が、自分を拒絶したような……そんな冷たい顔になったんだって」
笑顔の活発が、なんだかひどく無機質な表情に見えてしまう。
それと同時に……彼女が冷たい顔をして、こっちを見つめている姿が脳裏に浮かぶ。
僕は、彼女のその表情を知っている。
活発「僕ちゃんは仲いいから、そこまでは大丈夫だと思うけど、ね」
活発の一言が、余計に胸に引っ掛かった。
……少しだけそれを忘れていた、そんな夏の真ん中の日に。
僕は、また彼女の氷を思い出してしまう。
そんなに長くない物なんで、今日明日で終わります。
もう覚えてないな…読み直すか
コンビニ袋を両手に持ちながら、僕と彼女は来た道を歩いている。
僕(なんだろう、なんだろうなあ)
袋の中では、彼女のために買ってきたジュースやお菓子の袋が、ビニールに擦れながら音をたてている。
一応、彼女の好きそうな物を選んだつもりだけれども……。
活発「女ちゃん、お菓子好きだもんね?」
活発の持つ袋には、また別の……僕が選んだ物とは違う大量のお菓子が入っている。
活発「ホワイトチョコに、ココアクッキーに……大喜び」
活発「僕ちゃんはは何買ったのさっ? 自分用のお菓子?」
僕「ん、彼女が好き『そうな』物……」
本当の彼女の好みや、好きな味……。
僕の中には、彼女のデータがあまりにも無さすぎた事に、今気付いた。
僕「……いや、そういうわけでも無いんだけど」
活発「ん?」
僕「実は、あまり彼女の好みやらを知らなくて」
活発「好み? 好きな食べ物とか、好きな場所とか?」
僕「聞いた事無いから……知らない」
活発「……本当に好きなの? アタシ、ちょっと疑問になっちゃうよ?」
僕「常に三人以上でいて、あまり話す機会が無かったんだよ」
活発「本当にそれだけ?」
僕「……あとは、近くにいてよく遊んでいたから、それだけで安心していた、みたい」
多分、これが一番正直で自分の納得のいく理由だった。
活発「ふぅん……まあ、確かに仲のいい『お友達』って感じだしね。あまり踏み込んだ話はしていないのかなっ?」
僕「踏み込んだ話、ね……」
活発からしたら、恋愛に消極的な男の子の態度だと思われたんだろう。
活発「……ま、これからさ、まだ夏休みなんだから。少しは彼女の気持ちの中に踏み込んでみなよ。でないと……」
言いたい事は、分かる。
僕「いい人、お友達で終わっちゃうって」
活発「わかってるなら、行動あるしないとね。あまり、お節介はし過ぎないけど、応援はやっぱりするからさ」
僕「……ん、ありがと」
今はあまり他人には話せない心情だけれども……時間が経てば、周りに相談する事も出来るんだろうか。
僕(女……一人で大丈夫かな)
まだ二人、海岸までの長い道の途中を歩いている。
その車の横に、人影が一つ。
暗くてすぐには分からなかったが、近付いてみるとすぐに女だと言う事が分かった。
女「……」
彼女はまた、空を見上げていた。
活発「ただいまっ。飲み物とか買ってきたよ」
隣からの元気な声で、ハッとした反応で、女はこちらをと見つめた。
女「おかえり?」
屈託の無い笑顔で、僕たちを迎えてくれる。
暖かみに溢れた、いつもの彼女だ。
活発「いやあ、コンビニまでが遠くてね。友は起きた?」
女「まだ寝てるみたいだよ?」
活発「……そ」
チラリと、活発が僕に目配せをした。
僕「?」
女「ううん。こうやってボーッとしているだけでも楽しいよ?」
活発「そう……だったらさっ、僕ちゃんのお守りしてあげてよ」
お守りって……いきなり、何を言ってるんだ彼女は。
活発「いやあ、アタシもちょっと仮眠したくてさ。でも、僕ちゃん一人だと不安だから、ねえ?」
女「あははっ、確かに確かに?」
僕「その言い方はすごい引っ掛かるんだけど……」
活発「……だから、二人でもうちょっと待っててくれないかな? 時間とらせちゃって悪いけど、まあ友が起きるまでは、ね?」
女「は?い」
僕「車で待つかな……さすがにもう一回コンビニに行くのは骨だし、な?」
女「……ね、もしよかったらさ海の方に行かない?」
僕「ん?」
女「帰る前にもう一度……ね」
活発「浜辺? 真っ暗だから危なくない?」
女「海には入らないから大丈夫だよ。いいよね、僕ちゃん?」
彼女にそんな事を言われたら、僕は。
僕「うん」
承諾するしか、答えはなくて。
女「よかった、断られたら、嫌いになってたよ。なんてねっ」
活発「あははっ、じゃあ、いってらっしゃいな?」
気合いを入れるように、活発が僕の背中を軽く叩いてくれる。
僕「ん……」
僕と彼女は、また浜辺に向かって歩きだした。
友「本当にな」
活発「あれ、起きてたの?」
友「ああ、大分前に。二人が帰ってきたら、出発しようと思ってたのに」
活発「おほほ、それは失礼しました」
友「……外がうるさかったから、まあ黙ってはいたけどさ」
活発「あ、聞こえてた?」
友「ああ」
活発「そっか。少しだけね、お節介したくてさ」
友「何もしなくても、いい雰囲気に見えるんだけどな?」
活発「……これで三人以上なんて言い訳はさせないからね」
友「ん?」
活発「ふふっ、独り言。さて、眠気なんて無いけど仮眠仮眠?」
友「……よくやるよ」
活発(頑張れ、僕ちゃん)
足元の感覚はいつの間にか、昼に踏み締めていた浜辺の砂に変わっている。
歩いているうちに、真っ暗な浜辺にも段々と目が慣れてきて。
僕「……」
彼女が隣にいて、僕と同じ場所を歩いている。
僕(初めてかもしれないな、学校以外で二人きりって。何を……話そう)
彼女はどうして僕を浜辺に誘ったんだろう。
……いつもの、学食の机を囲んでいる時とは違う。
僕の頭の中を、様々な事が勝手に巡っている。
女「真っ暗だね」
僕「……ね。あまり海に近付きすぎないようにね」
女「目が慣れてきたから、それは平気だよ」
僕「ん……」
女「さっきいたのは……この辺りだっけ?」
空を見てから、彼女とはあまり会話をしなくなった。
ただ、二人で並んだこの場所で……今はただ天だけを見つめている。
その視線は、ただ真っ直ぐに銀河を見つめているようで。
波の音や、海の暗さも気にする様子もなく、彼女はただ静かに見つめていた。
彼女がどういう人間で、何が好みなのか。
普段何を考えていて、将来どういう夢を抱いているのか。
頭の中を掘り下げても、彼女の情報は全くと言っていい程見当たらない。
でも、星空を見つめている彼女を前にして、僕は気付いた。
僕(ああ、そんな物は、いらないんだ)
僕(僕はただ……)
僕「僕はただ、君の事が好きなんだ」
夏の勢いに背中を押され、同じ空を見上げながら僕は言った。
静かな波音にすらかき消されそうな、告白の言葉を。
海から吹く静かな風に吹かれて……彼女の耳を、つかまえる。
彼女は、そのまま。
空を見上げたまま、何も言葉を話さない。
僕「……」
僕も、彼女と同じで、ただ黙って空を見つめているだけ。
今、彼女の方を向いたら……あの冷たい表情で僕を見ているんだろうか。
空を見ていたのは、そんな彼女の表情を見たくなかったからかもしれない。
二人の間に、言葉が消えてしまったみたいだ。
長い沈黙の後、小さく彼女が声を出す。
本当に、波に消されそうな彼女の声は……か細く、少しだけ沈んでるような気がした。
女「ごめんね……僕ちゃんとは、付き合えないよ」
星から視線を落とし、僕を見ている彼女の表情は、物憂げ。
その憂いた表情から……突然。
彼女はこちらを向いて、僕に冷たい表情を見せつけた。
女「そういうの……いらないんだよね」
僕「……女?」
女「友達ならいいけどさ、愛情なんて……私に持ってこないでよ」
彼女が何を言っているのか、分からなくなっていた。
ただ、冷たい表情だけを浮かべて……僕だけを見ている。
女「……いい。もう慣れたから、気にしてない」
自然と出てくる言葉が、謝りになってしまう。
僕「もう、遊んだりできないかな?」
このまま単純に、彼女と離れるのは嫌だった。
なるべく声が震えないよう、精一杯の空元気で彼女に尋ねてみた。
女「『お友達』としてなら、別に」
僕「ん、わかった」
ああ、冷たい。
僕(でも、まだ遊べる望みがあるだけ暖かいのかな……)
こうして、面と向かって言葉を投げられると……心に響く物がある。
僕も彼女も、ただ前に向かって歩いている。
僕(帰り道が、なんだか長く感じる……)
来た時よりは早いペースで歩いているはずななのに。
僕(やっぱり……女は怒っているのかな?)
揺れる背中を見つめながら、そんな事を考える。
早足で、しっかりと地面を踏んでいる彼女だったが、焦るような足取りで砂浜を歩いている。
体の向こうに、やっと駐車場が見えてくる。
その、砂とアスファルトの境……溝にでもつまづいたんだろうか。
女「あ……」
彼女背中が、揺れたと思うと、そのまま前のめりになって……地面に吸い込まれるようにな格好になっている。
僕は、夢中で手を伸ばして……。
ただ、彼女の背中をもう一度抱きしめていた。
昼間の海で触れた、彼女のそのままの感触が……僕の胸に蘇る。
僕「また、転ぶとこだったじゃん」
少し強気に、僕は反論した。
女「……」
女「んっ……」
一瞬、それで黙ったかと思うと、小さい吐息が聞こえたような気がした。
僕「まあ、大丈夫ならこれで……」
彼女から離れようと、抱いている腕に力を込めた。
……ギュッ。
僕「……!」
今度は、彼女の華奢な腕が僕の手を抱きしめる。
胸の辺りに、包み込むように両腕でしっかりと……。
僕の左腕は、彼女に抱え込まれたまま……行き場を失って。
僕「お、女……?」
女「……っ!」
何かを思い出したかのように、彼女は僕を解放する。
僕はいきなり自由になり、少しだけバランスを崩してしまう。
女「……もう、平気」
でも、抱きよせられた僕の腕は、彼女の鼓動を覚えていて……心臓も一緒に早くなってしまう。
僕「だ、だいじょうぶだよ。それより、転ばなくてよかった……うん」
女「ん……」
また、彼女は表情の色を落とす。
活発「おかえり?」
残った二人は、車外で何かを話していた様子だった。
僕たちの姿を見るなり、こちらを向き、四人が車の周りに集まった形になる。
女「ただいま?。起きたんだね」
活発「うん、おかげで眠気もバッチリ。二人は、どうしてたの?」
女「ちょっとお散歩。待たせちゃった?」
女の声は、いつもと同じ感じで、友達としての会話を済ませている。
さっきまでの、何かがあったような沈んだ声や姿ではない。
僕(女の子って、強いんだな……)
変わらず笑う彼女を見て、僕はそんな印象を受けた。
自然な笑顔で、活発はこちらを向いている。
悪気は無いんだろうが、やはりフラれた直後は堪える。
僕「まあ、のんびりとしてきたよ」
平然と僕は返事をする。
活発「そっかそっか?」
女「くすっ」
盗み見た、女の表情は……仮面のような笑顔で笑っていた気がした。
友「よし、じゃあ……そろそろ帰るか」
活発「そうだね?」
彼らの一言で、みんなが車に乗った。
来た時と同じ席位置で、僕と彼女は前後離ればなれになる。
その方が多分いいんだろう。
それだけが、帰りの車の救いだった。
僕(疲れた……)
何も考えずに、僕はただシートに腰を落とした。
僕(おやすみ……)
意識が消える頃には、もう波の音など僕の耳には届くはずもない。
誰かが僕に話し掛けていたような気がしたけれど、彼女からの声でない事がわかっていたので……僕はそのまま眠ってしまう
少しだけほろ苦い、夏の思い出をのせて……夜の街を車は走り去って行った。
僕「……はぁ」
家の天井を見上げながら、僕はただ溜め息だけを増やしていた。
彼女に告白し、フラれてからおよそ一ヶ月。
僕(学校が無い分、変に気持ちをすり減らす事はないけれども……)
彼女に気持ちを受け入れて貰えなかった寂しさは、やはりそう簡単には消えない。
あれから、僕はただ、何となくで毎日を過ごしている。
友からの誘いも、彼女からの連絡も何も無い。
日々、自分のやるべき事だけをやって……三年生の夏休みは終わっていった。
九月は、僕にとって何もない月だった。
友「よ、おは」
暑さも落ち着いた、九月の真ん中。
少し短い夏休みが終わり、いつもの学食にいる僕たち。
でも……彼女の姿だけはこのテーブルの周りには見当たらなかった。
僕(今日が後期初日なのに……サボっているのかな)
午前中に、一つ同じ授業があったはずだが、彼女は教室に現れなかった。
顔を合わせるのが気まずい、と思いながら待っていたが……余計な心配だったみたいだ。
活発「今日は何食べようかな」
女のいない、三人だけのお昼が始まった。
友「……お、そう言えば聞いたか? 女が告白されたっていう話さ」
活発「え、なになに?。また告白されたの!」
活発も、興味津々といった様子で体を乗り出した。
友「また? 以前にも告白されてんのけ?」
活発「ん……アタシが知ってるのは、夏休み前の話だよ。女ちゃんから聞いたの」
友「俺の方は夏休み中の事だから、違うか。俺は告白した奴から、直接聞いたんだけどさ」
一瞬、自分の事かと思ってしまった。
僕(女が友に何か相談でもしたのか、と思ったけど……そういうわけでも無いみたいだな)
僕は少しだけ安心した。
活発「それでそれで?」
活発「へえ、そんな話よく知ってるね」
友「知り合いの後輩でさ。まあ、ボロボロにフラれたらしくてさ……夏休み中ずっと落ち込んでたんだな、これが」
活発「いやあ、鉄壁だねえ女ちゃん。理想が高いのかな?」
活発がちょっと笑いながら、こちらを見つめてくる。
僕「こっちを見るな、こっちを」
友「……で、俺は夏休み前に告白された話を知らないんだけど?」
活発「あ、あのね。アタシたちの同級がね……」
会話は続いた。
彼女の名前が出る度に、冷たく突き放すような表情が、いちいち鮮明に浮かんでくる。
活発「……その子もボロボロだったみたいでさ。落ち込んだって話だよ」
友「大変な子みたいだ……なあ?」
僕「……」
僕の腕には、彼女に抱きしめられたあの一瞬の温もりがずっと残っていて……。
僕は、冷たい表情よりも、その暖かい感触を思い出してしまう。
活発「僕ちゃん?」
友人にからかわれてるのにも応えず、僕は一人で彼女の事を考えていた。
僕(他の人は知らないけれど、少なくとも僕は友達でいられるはずだから)
僕(……新学期、彼女に会ったらまず笑顔で挨拶をしよう)
そう決めていたのに、今日から始まった学校で、彼女には会えなかった。
僕と彼女がもう一度会えたのは……そんな、何もない九月が終わった辺りだった。
放課後の学食で、いつも通りのテーブルに座って……。
女「あ、活発ちゃんに僕ちゃん」
いつもの様子で、僕たちに話し掛けてくれたんだ。
活発「や、久しぶり。元気だった?」
女「うん!」
本当に元気そうに、返事をする。
女「……僕ちゃんは、元気だった?」
僕「え、あ、うん。大丈夫だったよ」
いきなり話しかけられ、とっさに返事をする。
その様子は、何も事情を知らない活発の目にも変に見えた……と思う。
女「そ、なんだね」
彼女は、やはりどこか濁ったような笑顔で僕を見ていた。
女「……今日は、二人だけ?」
活発「アタシたちも、一応就活生だからね?」
女「そっか、そうだよね」
活発「……そろそろ行かないと。じゃあ、またね女ちゃん」
女「ん……またね」
挨拶を済ませると、活発はすぐに学食の外に向かって歩き出した。
僕は少しだけそこに止まり、彼女と二人の時間を無理やり作った。
女「……なに?」
分かりやすいくらいに、冷たい顔の彼女がそこにいる。
女「友達とは、話さないと」
皮肉混じりな彼女を前にしているはずなのに、僕の心はどこかに余裕を感じているようだった。
僕「ははっ、友達ならよかったよ。三人でご飯っていうのも、少しだけ寂しくてさ」
女「ふ?ん……」
ジトッ、とした目。
初めて見る表情かもしれない。
僕「友達なら……もう少し笑ってくれてもいいんじゃない?」
女「ん……こう?」
すぐに、彼女はいつものスマイルを取り戻す。
学食で見ていた、いつもの顔だ。
僕「うん。演技でも何でも……僕はそっちの方が好きかな」
女「……僕ちゃんの好みなんて、考えてないから」
そう言うと彼女は、またプイッとしたむくれた顔に戻ってしまう。
女「ん……」
余裕のお陰か、彼女を気遣う言葉の一つ一つを……僕は冷静に話せていた。
一度嫌われたからこそ、こうして開き直っているような。
なんだか、とても素直な気持ちで彼女と話す事が出来ていた。
活発「お?い、来ないと置いてくよ?」
遠くで、活発が僕を呼んでいる。
女もその声に合わせるように、椅子から立ち上がった。
女「電車だから、帰るね」
僕「ん……わかった、またね」
女「……また、ね」
短くそれだけを言うと、彼女は駅に近い扉から出ていってしまった。
僕「話せたから……いいか」
そう呟いた後、僕は急いで前を歩いている活発を追いかけた。
彼女との会話は、どんな物でも僕を元気にしてくれる。
途中、活発に話を振られる。
僕「そうだね」
活発「なによその反応。嬉しくないの?」
不満な様子で、彼女は僕を見ている。
僕「そりゃあ嬉しいけどさ……あまり大っぴらに喜ぶだけが反応じゃないでしょ」
女の影響か、僕もいくらか冷静な様子で言葉を返した。
僕「……待っていた?」
活発「だって、ほら。いつもの場所にいたんだからさ。アタシたちと遊びたかったんだよ、きっとさ」
僕(……そういう捉え方もあるのか)
完全に嫌われていればいつもの場所にはいないだろうし、挨拶すらしてくれないはずだろうか。
僕「それじゃあ、今度また時間ができたらさ……」
みんなで、と言おうとした時。
活発が珍しく沈んだ顔で語り出した。
活発「……でもさ、しばらくみんなで遊びにも行けないかもね。どんどん就活だって忙しくなるだろうし」
活発「今日みたいに何か放課後の集まりがあったりさ……これから、四人で遊べる機会は少なくなっちゃうかもね」
ニコリと、隣で活発が笑う。
応援のつもりなのか……優しい目でこちらを見つめてくれている。
僕「そう、だね。ありがとう活発」
活発「あははっ、お礼なんて変だよっ。遊びたいから遊ぶ……まあ友情の一種さ」
僕「友情……」
その言葉が、やけに胸に突っかかった気がした。
目の前に彼女がいないせいか、僕の余裕はいつの間にか消えてしまっている。
活発「あっ、ヤバヤバ?。急ごっか」
僕「……走ろう」
活発「賛成賛成?」
僕たちは走った。
意識を切り替えて、僕は何もドキドキしない教室へ走って行った。
学食で会って話はするものの、放課後や、日中の暇な時間もあまりとれない事が多くなってしまい。
……それでも、たまの休みには四人で遊ぶ事もできたりしていた。
時間を合わせて、いつものメンバーで……ほんの少しでも、四人集まって同じ時間を過ごしていた日々。
夏休みの告白以来、彼女の僕に対する反応は何も変わらない。
二人きりになっても、露骨に冷たさは見せないようになっていて。
彼女の何が本心なのか、僕にはよくわからなかった。
僕に笑ってくれている彼女は、確かに笑顔なんだけれども。
どうして笑顔で僕と接してくれているのか、それが分からなかった。
……と、遊ぶ度にこの事を考えてしまう。
考えても、答えが出ない問題だけを、僕は一人で考えている。
それは、冬休みが始まる……確か、クリスマスの日の事。
そのクリスマスの日に、四人で遊ぶ約束をして……。
僕と彼女が、久しぶりに笑いながら話す事ができた……そんな夜だった。
ジャンパーに両手を突っ込みながら、震えている友がそう呟いた。
友「しかし、綺麗なアパートだよな。活発の奴、こんないい所に住んでるのか……」
僕「ま、女の子だしさ。そういうもんさ」
この、しっかりとした三階建てのアパート。
その二階の角部屋に、活発は住んでいた。
名前の扱い上、アパートだと言ってたが、綺麗に塗装された外壁や階段を見ると、一見マンションのようにも思えてしまう。
友「……とにかく早く部屋まで行こう」
冬の風が、僕たちに容赦なく襲いかかる。
もう、夕焼けもあまり長くは空にいないこの季節。
暖かさを求めて、僕と友は小さなインターホンを押した。
中から、聞き慣れた彼女の声がする。
僕たちはすぐに扉を開け、玄関に飛び込んだ。
僕「お邪魔しま?す」
活発「いらっしゃい」
女「いらっしゃい?」
出迎えてくれたのは、部屋着を着て緩い姿のままの彼女たちだった。
友「あ、あったかい……」
活発「外寒かったでしょ。さ、上がって上がって」
僕「あ、ありがとう……」
女「ふふっ、僕ちゃん震えてる?」
僕「さ、寒いのは苦手なんだよ……」
促されるまま、僕たちは部屋の中に通される。
僕「でも、思い切り凍えた後に暖房で安らぐのが好き」
女「私は寒くても、余裕余裕?」
活発「じゃ適当に座ってて。料理とか持ってっちゃうからさ?」
途中、女と少しだけ話す事ができた。
彼女はやっぱり笑顔だった。
部屋の暖かさに加えて……彼女から話し掛けてもらっただけで、僕は嬉しかった。
クリスマスはまだ始まったばかりで……何かいい事がありそうな、そんな気がした。
勢いよく、活発の右手が振り上げられる。
友「ああ、乾杯」
女「かんぱ?い」
僕「乾杯」
各々、手に持った缶を口に……四人のクリスマスが始まる。
女「あまあま?」
活発「あ、女ちゃんお酒は初めてだっけ?」
女「うん。でも飲みやすいから大丈夫?」
活発「あははっ、アタシがオススメしたお酒だからね。好みに合ったならよかったよ」
女「♪」
嬉しそうに、彼女は手元の缶に口付けをしている。
友「そう言えば、これ。俺たちからの差し入れ」
僕たちは袋から、先ほど買ってきたチキンとケーキの箱を差し出した。
活発「あ、ありがとう?。これでやっとクリスマスっぽくなったね?」
やはり、みんなで集まって過ごせる時間は楽しかった。
僕(活発の部屋、いい匂いがする……)
アルコールと嬉しさが入ったせいか、僕の頭には陽気な感覚が流れ込んでくる。
僕(枕元にはぬいぐるみなんて置いちゃって、女の子らしいな。あのクローゼットの中だって、多分綺麗に整頓されているのかな)
活発「……何、じろじろ見てるのかな?」
視線に気付いた活発が、僕に冷たく語りかけてきた。
僕「ああ……いや、女の子らしい部屋だなって思って」
女「わ、僕ちゃんてやっぱり……」
僕「はいはい、変態変態」
女「あ?、開き直った?」
活発「あははっ、いいねいいね。そういう雰囲気好きだよ?」
活発が笑って、女も友もみんな笑って。
久しぶりの笑顔に包まれる。
女「あ、サンタが映ってる?」
女が、テレビを指差して言った。
活発「ホントだね?。街の明かり、綺麗だね……」
友「カップルばっかり……チクショウ」
こうやって、みんなで同じテレビを見て話す事ができる。
これもまた、贅沢なクリスマスの過ごし方……なんだろう。
テレビに映るイルミネーション、部屋を暖める暖房の柔らかみ。
そして、女の笑う姿。
女「……あれ。僕ちゃん、どうかした?」
途中、彼女が僕の様子に気付いて声をかけた。
僕「……ちょっと、気持ち悪いかも」
活発「あ、顔真っ青……大丈夫?」
僕は、アルコールに弱い。
友「悪酔いしやすいんだっけな。まあ、少し休んでろよ」
活発「どうする、ベッドでちょっと寝る?」
項垂れた僕を見て、活発は女と座っているベッドをポンポンと叩き始めた。
僕「さすがにそこまでは、平気。無理はしないから、大丈夫だよ」
活発「……あ、それとも膝枕とかのがいいのかなっ?」
僕「い、いきなりなんでそうなる!」
女「僕ちゃんのエッチ」
僕「お、女まで……大丈夫だってば。少しゆっくりしてればすぐ治るよ!」
活発「あははっ、それだけ元気があれば大丈夫かな?」
女「ムキになって子供みたい?」
僕「……からかわないの」
僕は、そう言いながらスッと立ち上がった。
僕「ちょっと、外の風に当たってくるよ」
活発「そっか、いってらっしゃ?い」
少しだけ、息の詰まるようなこの空間から逃げたしたかった。
女が、目の前にいるだけで……僕の心臓は早くなる。
アルコールと、彼女のせいでいつもの僕でいられなくなる空間が怖かった。
玄関の扉を開けて……僕はつかの間の一人になった。
友「まあ、無理はしない奴だから大丈夫だろう。もし苦しかったら、ちゃんと言うだろうしさ」
女「お酒……あまり飲めないんだね」
友「そういうタイプなんだってさ」
活発「ね?。でも、弱ってる人を一人にするのはちょっと、ね」
女「……」
活発「アタシ、ちょっと見てくるよ。二人はちょっとゆっくりしててねっ」
友「ああ、わかったよ」
女「ん……いってらっしゃい」
活発「うん、わかったわかった?」
僕は一人で、部屋の前の開けた景色を見ていた。
吹いてくる風が気持ちいい……その後ろで、扉の開く音がした。
活発「やっ、元気??」
お酒のせいか、少し頬を赤らめた活発が声を掛けてくる。。
オレンジ色の玄関が小さくなって……扉が閉まり、また少し寒くなったような気がした。
活発「心配になってさ。大丈夫?」
僕「ん、大丈夫。悪いね活発」
活発「いやいや?。こちらこそ……女ちゃんでなくてごめんね?」
僕「いや、別に……ね」
活発「ふふっ……冗談。でもね、女ちゃんも心配してる様子だったよ?」
僕「え?」
その一言は、なんだか信じられなかった。
僕「そう、なんだ」
活発「もしかしたら、本当に僕ちゃんの事が好きなのかもね?」
ははっ、と。
軽く笑いながら活発は言う。
その言葉を、何も疑わずに信じる事が出来れば僕は……。
クリスマスという、何かが起こりそうなこの日に、もう一度彼女に告白をしていたんだろう。
……。
僕「……あのさ、活発」
活発「ん?」
僕「僕はさ、もう彼女に告白しているんだよ」
活発「え……」
僕「フラれてから、もう遊んだりは出来ないと思ってた。でも、いつもと同じ反応をしてくれて……」
活発「……」
僕「まあ、友達でいようっていう彼女の意思表示があったからなんだけどさ。今は……そんな所だよ」
活発「そっか?……」
む?っとした様子で、活発は街の光を見つめている。
どう話しをしたらいいのか分からず、ただ景色を見ている……そんな様子だった。
活発「……でもさっ」
それでも、沈黙だった時間は意外と短くて……すぐに活発は言った。
活発「もしかしたら、告白されて意識し出したのかもよ。だって彼女、明らかに普通の反応じゃないんだものっ」
さらに活発は続けた。
活発「友達でいたいって言われたなら……やっぱり嫌いではないと思うけどな?」
僕「……」
活発「嫌な人となんて、遊ばないでしょ?」
僕「でも、冷たい女の表情がずっと残っているんだ」
活発「ん、まだ冷たくされてるの?」
活発にはその『氷のような彼女』の話していなかった事に気付く。
僕(話のついで……いい機会だ、ここでそれを話してしまおうか)
活発「ん?」
僕「冷たいと言えばさ、彼女と最初会った時に……」
そう切り出した瞬間、閉まっていた玄関の扉がゆっくりと開いた。
再び光る、オレンジの明かり……中から現れたのは、彼女だった。
女「僕ちゃん、大丈夫?」
一番に、彼女は僕の体を心配してくれた。
活発「あははっ、ごめんね。外の方が気持ちいいみたいでさ……つい長話をねっ」
高いトーンで活発が言う。
女「そうなんだ。あまり遅いから心配したよ?」
上手に切り返してくれたお陰か、女も何一つ気にする様子もなく、僕たちを笑ってくれている。
活発「……さて、アタシは中に戻るけどさ、女ちゃん」
女「ん??」
えっ。
女「うん、いいよ?」
活発「ふふっ、じゃあお願いねっ」
ほら、と言わんばかりの顔をしながら……活発はオレンジの向こうに消えてしまった。
僕「……」
女「……」
僕と彼女の、小さなクリスマスが始まる。
言葉と共に、彼女は僕の背中を擦ってくれている。
長袖とTシャツ……二枚の上から感じる彼女の手は、とても暖かく感じた。
僕「……!」
女「ん、どうかした??」
僕「優しい女に、なんだか慣れなくて」
女「……背中なんか擦らないで、鍵閉めた方がよかった?」
僕「だったら、背中のがいいかな」
女「ん……」
もう一度、彼女は僕の背中に手を置いてくれた。
僕(冷たい……彼女?)
なんとなく、彼女の扱い方が分かった気がした。
僕(なんだか、心地好い気がする……)
あの日から半年近く経った今では、そう思うくらいの余裕が出来ていた。
気持ちの変化だろうか。
僕「あのさ」
女「ん」
僕「今日は門限、大丈夫なの?」
女「門限?」
柔らかい夜の中で、僕と彼女は何気ない会話を始める。
少しだけ、彼女に踏み込むような事を話せたら……。
二人きりになった今は、なんだかそういう話をしても許される気がした。
返ってきた答えは、意外な物だった。
僕「そう? てっきり……ほら、ずっと早く帰っていた印象があったから」
女「あんまり、夜中に出歩かないようにしてただけだよ。最近は慣れてきたけど……今度は遊ぶ事自体が減っちゃったからさ」
確かに、時間が無くなった最近は放課後に少し遊んだりするくらいで……。
女「今日だって、私はこのままお泊まりだから。あれ、僕ちゃんたちはどうするの?」
僕「友が運転して帰るよ」
女「ああ、そう言えば烏龍茶のボトル手放してなかったね?」
くすくす、と女は笑う。
そのまま、彼女の目線は上を向いたような気がした。
僕は相変わらず、街の灯だけを見ているけれども……。
女「……ほら、見て。冬だからさ……星が綺麗だよ」
背中の一部が熱を持って……少し熱いくらいの温度になっているのが、この寒空の下でよくわかる。
女「……」
彼女は何も言わず、空を見て僕に触れて。
僕はただ光だけを見つめて……しばらくは何も考えられないで、街の灯だけを見つめていた。
僕「……あのさ」
女「ん……?」
次に頭に浮かんだのは、本当に他愛も無いような……そんな普通の話題。
僕「誕生日、いつかな」
女「誕生日……?」
僕「うん。知らなかったからさ」
女「教えたら、お祝いしてくれる?」
僕「さあ、それは分からないけど」
女「……だったら教えてあげないから」
僕「冗談だってば。教えてくれたら、ちゃんとお祝いするよ」
僕「本当だって。誕生日、もうすぐ?」
女「……ううん、三ヶ月前に終わっちゃったよ」
僕「三ヶ月前……九月?」
女「うん、9月30日。私の誕生日だよ」
今年の九月は、彼女にフラれたショックでお祝いどころではなかった。
その彼女に、こうして誕生日を聞いている今が不思議な感じだ。
女「覚えていたら、適当にお祝いしてね」
僕「適当でいいんだ?」
女「四年生になったら……忙しいんでしょ? あんまり邪魔にはなりたくないんだよ。そういうの、すごく嫌いだから……」
彼女は、冷たいままの様子で空を見ている。
僕「うん、覚えておく」
他人の琴線に少しだけ触れたような、この感覚。
僕は彼女の中に、わずかでも踏み込む事が出来たような、そんな風に思っていた。
女「少し……さむいね」
体を震わせながら、彼女は言う。
僕「そうだね、戻りなよ。僕はもう大丈夫だからさ」
女「うん……僕ちゃんは?」
彼女の手が、背中から離れて……。
僕「僕はまだ、少しこのまま……」
そのまま僕が着ていた服の裾をキュッと小さく掴んで……。
女「寒いからさ、おいでよ」
僕「ん……」
とても軽く引っ張られただけなのに、僕の体は……いつの間にか、彼女と一緒にオレンジ色の玄関を歩いていた。
僕のクリスマスは、暖かいままで終わっていった。
就活と、飛ばし飛ばしで通う大学と……一ヶ月に一度、遊べるか遊べないかくらいの、仲間たちと。
四年生になるまでの三ヶ月は、そんな生活が続いていた。
僕(最近、女にも会ってないな……)
たまに大学で会って、話す事ができるだけの、そんな関係。
普段の僕は、それだけで満足だった。
でも、あと一年で卒業という……時間を考えてしまうと。
僕(今みたいにに、友や活発……女と会う事は、出来なくなるのかな)
一人の時間が増えた途端に、僕はずっとこんな事を考えていた。
それと同時に、彼女への気持ちも……。
僕「もう一度……彼女に伝えよう」
決めたのは、四月になる少し前だ。
自分の就活が終わったら、もう一度彼女に話をする……僕はそう決めたんだ。
活発「そんな嫌な顔しないの。頑張るしかないじゃないっ」
僕「ね」
時間もあまりないせいか、あれから彼らに恋愛の話をする事はなくなっていた。
不安も悩みも、彼女の事で尋ねてみたい部分もたくさんあったけれども。
僕はもう決めたから、彼らには何も話さずにいたんだ。
たまに、こうしてファミレスで集まって、愚痴を言い合っては、また明日には元の世界に飛び込んでいく。
彼らとは……そんな普通の大学生活を送っていた。
活発「そうだよっ。みんな受かったらさ、お祝いしようよお祝い」
僕「いいね?。女も呼んで……パァーッとさ」
僕はもう、気持ちを隠さない。
活発「ん」
友「お」
そんな普通の気持ちが……こうして素直に言えるようになっていた。
今はまだ、彼女の事を想っている『だけ』だけれども……。
全ての活動が終わったら、僕は……。
活発「……」
女「また今日も一人ぼっち」
誰もいない学食で、私は箸を動かしている。
女(誰か一人くらい……来ればいいのに)
いつもの席で、私は誰かを待っている。
女(……こうなると、友情も意外と邪魔かもしれないね)
今日の魚は、ちょっとだけ塩が多く振られているようで……なんだかひどくしょっぱく感じた。
私は、半分だけ片付いたお皿を見ていた。
女(本当に、誰か来ないかな……自分で決めた事だけど、やっぱり寂しいや)
「や、元気?」
その時背中から……活発的な声がした。
女「活発ちゃん……どうしたの?」
活発「就活帰りに、つい寄ってしまったよ」
リクルートスーツを来た彼女は、大人びた雰囲気を醸し出しながら私に話しかけてきてくれた。
一週間ぶりに会った彼女は、ほんの少しの期間で、また少し成長しているような気さえした。
活発「他には誰か来てる?」
女「ううん。活発ちゃんだけだよ」
活発「そっか……女ちゃんさ、午後暇?」
女「? うん、暇だよ」
活発「じゃあさ、少しお話しよう?」
彼女は、真剣な眼差しでこっちを見つめている。
ただの、他愛ない話ではないんだろうか。
女「ん……平気だよ」
彼女は、すぐに向かいの椅子に座った。
話題は、いきなり本題から話されていた。
回りくどい言い方をしない……彼女らしい切り口。
女「うん、夏休みに。聞いたんだ?」
活発「彼が色々悩んでるみたいだったから……お節介で、ね」
女「ふぅ?ん……」
活発「僕ちゃんの事、嫌いなの?」
女「……」
活発「嫌いだったら、友達でいてあげるなんて言えないよね。あれからだって遊んでいたしさ」
活発「仲良さそうに話していたから、女ちゃんの気持ちがよくわからなくて……」
女「……」
活発「ちょっと、それだけ知っておきたかったんだよっ」
女「知ったら……」
活発「ん?」
女「知ったら、それを彼に話す?」
女「……」
活発「あ、嫌だったら無理に話さないでも。言わなくても、嫌いになったり付き合いが変わったりはしないから……」
女「……」
女「愛情が……欲しくないの」
活発「……?」
女「好きな人も、恋人も、邪魔になるだけだから」
活発「邪魔って、何に対して?」
女「それは……」
私は、少し口をつぐんだ。
女「私の中では、これは友情だから。邪魔になんて……なってないの」
活発「そう……。考えがちゃんとあるんだ。理由はいいけどさ、一つだけ聞かせて?」
女「?」
活発「女ちゃんは、彼の事が好き?」
女「……」
活発「ふぅ。あのさ、彼が今どんな状態か知ってる?」
女「……知らない」
活発「合格したらさ、もう一度みんなで遊ぶんだって……頑張ってるんだよ」
活発「あとね、いつも女ちゃんの事も心配してるの」
女「……」
女「……バカみたい。そんなの、就活の邪魔になるだけなのに」
活発「邪魔なんかじゃないよ。そんな言い方したら、まるで……女ちゃんが邪魔みたいになっちゃうよ?」
女「……」
活発「何を考えているかは分からないけどさ……もう一度だけさ」
女「ん……」
活発「お別れする前に、ちゃんとお話しておきなよ。このまま離れて会えなくなったら……モヤモヤだけが残っちゃうよ?」
女「そんなの、知ってる……」
女「?」
活発「一緒にご飯食べて、笑って、また明日」
活発「当たり前だと思ってたこんな事が、もうすぐ無くなっちゃうんだよね……」
女「活発ちゃん……」
活発「……ごめんね。ちょっと最近疲れちゃってさ」
女「ううん、いいよ。大丈夫」
活発「うん……アタシも後悔したくないからさ。だから、女ちゃんとお話しようって思ったんだよ」
活発「卒業しても会えるかもしれないけどさ、今言いたい事は言わないと……ね?」
女「……」
活発「私の話は、これでおしまい」
女「……」
誰もいなくなった学食で、私は一人息をつく。
彼女の言葉を抱えながら、テーブルに突っ伏しては考え事をしていた。
女(言いたい事は……言うよ)
女(言うけどさ)
女「時間が経ったら……もう会えなくなるんだよ」
大切な親友に言えなかった言葉を、一人きりでポツリと口に漏らした。
女「帰らないと……」
……そろそろ、電車の時間だ。
私は学食を後にし、駅に向かった。
誰もいない学食の電灯の明るさが、ひどく無駄に思えて……イライラしながら歩いていたんだ。
僕「また、か……」
これで何社目だろう。
僕の手元には、いまだに合格を知らせる封筒は届いていない。
もう、六月も終わり。
少しすれば夏休みに入ってしまうこの時期……僕は焦っていた。
僕「本当に、受かるもんなのかな」
活発は、五月に入ってすぐに内定が出たようだった。
友も、今は最終面接までこぎ着けた会社が三社程あるらしかった。
採用の基準なんて、自分にはよくわからない。
だから全力でぶつかって、それが気に入られれば受かる。
少しでもそのフィーリングに合わなければ、落ちる。
僕「落ち込むのはゴメンだ……」
これくらいに軽く考えて、僕はまた空元気で外に飛び出した
僕「……よしっ」
もう、夏休みも終わりそうな九月。
ずっと考えていた問題も、自分の中では解決しつつあって……。
女「あとは、彼の返事だけなんだけど」
この様子では、夏休みが終わって、今年の九月も何もないまま……
女「……ちゃんと、言うからさ」
ピリリリリッ。
女「!」
私の言葉に反応したかのように、携帯電話がいきなり鳴り出した。
女「相手は……」
ああ、久しぶりに彼の名前なんて見た気がする。
女「……」
通話ボタンを押す手が、少しだけ震えていた。
いつものように、私は優しく聞いてあげた。
僕『やっと……うん。就活終わったよ』
女『えっ、受かったの!?』
僕『受かった、長かった……』
女『そっか?、おめでとう。これでみんな内定だね?』
僕『結局、一番遅くなっちゃったけどさ……』
夏休みも終わるギリギリで、彼はなんとか内定を貰えた。
女(そっか、これで……)
僕『授業無いからなあ……あ、でも学校に報告とかもするんだっけ』
女『活発ちゃんも来るって言ってたから、ついでにおいでよ?』
僕『そうだね、じゃあ、とりあえず明日行くよ』
女『うん!』
僕『あのさ、何かいい事あった? 機嫌いいみたいだけど……』
女『ふふ?』
プツッ。
私は、ただ笑いながら電話を切った。
ツーッ。
ツーッ。
僕「き、きられた……何なんだ一体」
僕「……まあ、いいか」
携帯電話を布団に投げ捨て、僕は壁のカレンダーに目を移す。
僕「言いたい事は……」
赤く、丸の付いた日付を見ながら僕は……機嫌のよさそうな彼女の声を思い出しては、まだ笑っていた。
僕は、いつものテーブル……誰も姿が見えない、放課後の学食にいた。
内定祝いとして、久しぶりに四人で遊ぶ約束をした今日の日。
あと十分もすれば、授業を終えた女が。
あと三十分もすれば、友と活発もここに集合する時間になる。
僕は、本当にゆったりとした気持ちでここに座っていた。
今は、本当に何もないというリラックスした気持ちで……いつもの場所に座っていたんだ。
僕「久しぶりだな、この場所も……」
夏休みが終わったばかりなせいか、人影が全く見当たらない。
授業が終わるまで、誰かが来る気配も無い。
僕「普段は、もう少し人もいるんだけれど……」
僕は、まあいいかという気持ちで学食を見渡していた。
何がある訳じゃない、この広い部屋を……ただ。
僕「ん……」
そんな間、入り口から誰かが歩いて来るのが見えた。
遠くなので顔はよくわからないが……知っている人間の雰囲気ではなかった。
この位置からでも、男性と女性が並んで……こちらに歩いて来るのはわかった。
「ほら、早く行こうよ」
「そんな走ると……また転んじゃうよ」
僕(なんだ、ただの……カップルか?)
聞き耳を立てる気はなかったが……自然と、それは聞こえてしまう。
「ね、どこか遊びにいこうよ」
小さな姿の女の子が、話している。
「遊びにって……どこがいい?」
こちらも、大柄とは言えない……小柄な印象の男性が、その女の子の話を受けていた。
「ん?、とりあえずお菓子屋さんかな。食べたらどこかのんびりできるような、静かな……」
「え、またお菓子?」
「好きなんだよ、お菓子」
「今さら始まった事じゃないけどさ……」
「ふふっ、いいから早く行こうよ。ね」
「うるさいっ!」
「あづっ! 本気で蹴るなよ、バカ!」
「ふ?んだ。……ちゃんは遊びにいかないでさ、保健室にでも行ってればいいんだよ」
「……ごめんてば。ほら、謝るから……」
「……」
「お菓子、好きなだけ買ってあげるから」
「本当に!?」
「えへへ?、知ってる」
「まったく。まあ、何が食べたいか考えておいて……」
「……ちゃんもさ、食べたいの考えておいてね」
「?」
「たくさん買って、一緒に食べよう? 半分っこだよ?」」
「……うん」
「くすっ、素直な……ちゃん可愛い」
「はいはい、じゃあ……行こう」
「うん……」
僕「……」
女「ふふっ、カップルさんだったね」
僕「あ、来てたんだ」
女「なんか、不思議な感じだったね」
僕「カップル、カップル……ね」
女「?」
僕の傍で、彼女はあんな風に……笑ってくれるんだろうか。
どこかに行く約束をして、同じお菓子やご飯を一緒に食べて。
そんな夢みたいな姿を、僕は先ほどの幸せに重ねてしまっていた。
僕(でも、まだ彼女には何も言っていないんだよな)
女「……ん?」
今日一番の彼女は、まず優しく微笑んでくれた。
僕も久しぶりに、親しい人に見せる笑顔が浮かんだ。
僕「そう? ずいぶん会ってなかったから、そのせいだよ。女だって何だか……」
女「変わった?」
僕「うん、明るくなった気がするよ」
女「……うんっ、ありがとう」
僕たちは、二人一緒に小さく笑いあった。
彼女といる時の僕は、元気で正直な僕でいる事ができて……。
活発「や。お待たせ」
友「よ?。しばらく。待った?」
僕「久しぶりだな、友も活発もさ」
友「……ん。何か、元気になったな」
活発「ね。女ちゃんも、楽しい事でもあった?」
女「うん、楽しいよ?。みんなでまた遊べるんだから……嬉しくて仕方がないくらいだよっ!」
感情を、素直に吐き出す彼女は、この数ヶ月で本当に別人みたいになっていて……。
女「じゃあ出掛けようよ。みんなのお祝い?」
でも、笑顔だけは何一つ変わった様子が無くて。
ああ、やっぱりこれが本当の彼女の顔なんだと……僕は誰にもわからないように、頷いていたんだ。
活発「……ふふっ」
友「よっ、おめでとさん」
活発「乾杯?」
女「おめでとう?」
夕方の街で遊び疲れた僕たちは、相変わらずのファミリーレストランで夕食をとっていた。
乾杯はジュースだが、それでも友達と囲む食卓は、やはり嬉しいものだ。
僕「ご飯が美味しい……」
女「はい、お水」
僕「あ、ありがとう女」
女「うん?」
活発「ふふっ」
友「……これで、後は卒業式だけかあ」
パスタをすすりながら、友が言う。
活発「そうだねそうだね?。卒業……みんな離ればなれだもんね」
僕「ん、どこ行くかわかんないんだ。色んな場所に支店があるみたいでさ……まだ未定」
活発「近くだったら、たまには遊んだりしようね?」
女「活発ちゃんは?」
活発「アタシは、実家の方だよ。まあ、車で一時間もあれば来られるからさ。女ちゃんにも会いに来るよ」
女「ん……ありがと」
彼女の表情が、一瞬だけ曇った気がする。
女「……ね、もうカレー冷めてるよ??」
そんな曇った顔も、今は何もないように消えている。
女「ふふっ、美味しい?」
……嬉しそうに、グラタンを頬張る彼女の笑顔を見たら、そんな細かい事はどうでもよくなってしまって。
僕は、丁度いい温かさになったカレーを食べながら……ずっと、彼女の事だけを考えている。
今日が終わって、明日になれば。
活発「美味しかったね?」
女「みんなで食事なんて、久しぶりだったもんね」
帰りの車の中では、こんな会話をしていた。
僕だけは、返事をしながらも明日の事だけをずっと一人で考えていて、少しだけ上の空だったのを覚えている。
僕はこのまま、明日が普通の形で訪れる物だと、そう思っていた。
友「……な、ちょっといいかな」
話の途中、運転しながら友が口を挟んだ。
その口調は、えらく改まったような静かな口調で……みんなに語りかけていた。
活発「どうしたのっ?」
友「このまま帰るのもさ……勿体ない気がしないか?」
友「せっかく忙しい時期が終わって、こうやって遊んだついでだから……もう少し遊ぶのも、いいかなって」
活発「ふむふむ?。アタシたち四年生組はいいと思うんだよ。授業は無いし、用事だって……ねえ僕ちゃん?」
僕「まあ、用事は無い、けれども」
活発「問題は女ちゃんだよ。授業もあるし、今から夜まで付き合わせるのは……ね?」
女「私は……」
一呼吸おいて、女は元気に言った。
女「ふふっ、私は大丈夫。一緒にいて……楽しいから、平気だよ」
活発「ふふっ、はしゃぎすぎ。この時間だったら……どこがいいかな?」
僕「ん?。女は、どこか行きたい場所ある?」
女「……」
活発「あ、あるって顔してる。どこでもいいよ、お姉さんが付き合ってあげるから」
女「じゃあ……」
女「海に行きたい、かな」
僕「……海? 今から?」
女「うん、行きたい」
活発「……ふふっ、女ちゃんて正直になったよね」
友「運転手は、行きたい場所に連れてくだけだからな」
活発「……僕ちゃんも、それでいい?」
今の僕なら、徹夜でも何でも出来てしまう。
そんな元気な僕だった。
車は、陽気な四人の笑い声を乗せながら道路を走っている。
あと二時間もすれば海に着いて……日付も変わる、そんな辺りだった。
女「だって、どこでもいいって言ったからさ?」
活発「まさか海が出るとは考えてなかったよ。いやあ、好きだよそういうの」
女「うんっ!」
友「大学生らしい、いいノリだよな?」
活発「本当に、ね。僕ちゃん」
僕「う、うん。そうみたいだね」
彼女は、勢いやその場のノリで、海という選択肢を選んだのだろうか?
僕(分からない部分は分からないや……)
バックミラーの中で見かけた彼女は、また小さく笑っている。
窓の外から入る明かりが……その口元を照らしては、また暗闇に戻していた。
夜の十一時過ぎ……僕たちは、いつかと同じアスファルトの上に立っていた。
前より少し海に近い場所に車が停まっているため、波の音と海から吹く風が側に感じる。
太陽も見当たらない夜の海からは、肌寒いくらいの風が吹いている。
女「んっ……」
彼女は、少し上を見つめながら歩き出した。
海の向こうを見つめているのか、低い位置の星を見つめているのか……まだわからない。
僕も、彼女の後ろから、付いていくように歩いていった。
風に負けず、僕はすぐに彼女の横に並んだ。
すぐに、足場のアスファルトが砂浜に変わる。
友「ああ、勢いだけで、な」
活発「大学生にはよくある事よね?」
……。
ザーザーっという音が、海から何度も聞こえてくる。
四人は、ただ静かに見えない向こうだけを見つめて……風の中に身を任せていた。
何も、話す事は無くなっていた。
しばらくは、そのまま……みんなで海の中をさ迷っていた気がする。
僕(今日は、星が見えるんだろうか……)
視線を空に移そうとした瞬間……。
活発「ん……少しだけ、眠いかも」
ふいに、活発が言った。
活発「あははっ、最近寝不足だったからさ」
友「仕方ないな、車で少し休んでるか?」
活発「……そうさせて、もらおおかな」
友「ん。二人はどうする、戻るか?」
僕「いや、僕は……」
女「私たちは、もう少しここにいるよ」
僕より早く、彼女が言った。
友「そっか、俺も車にいるからさ。気がすんだら戻ってこいよ」
僕「ん、わかった」
女「は?い」
……。
夜の海に、二人だけ。
女「ね……」
そんな不思議を感じる夜に……彼女が、僕に笑って話しかけてくれている。
彼女は、まっすぐに僕を見ている。
女「綺麗だね、空」
彼女の言葉で、僕は海から一気に目線を上に向けた。
言葉通り、僕たちの真上には……満天の星空と、季節のせいかとても輝いて見える月が一つ。
僕「……前は、月は出てなかったものね」
女「うん……そうだね」
僕も彼女も、同じ八月の事を思い返していたんだろうか。
あの時と同じように、僕たちは空を見上げている。
彼女ともう一度、この場所にいる事が、何だかまだ信じる事が出来なくて……何かを探すように、僕は空の星だけを見つめていた。
僕「……」
もう一度、彼女に言わなければ。
僕が考えていた事、想いや今までの事も……今日、全部。
僕「あのさ、女」
彼女は、何も言わずに僕を見ている。
まるで、今から言う言葉がわかっているみたいな顔で。
静かに、ただ静かに……僕だけを見てくれている。
僕「もう一度、女に伝えたい事があるんだ……」
女「……」
女「うん……」
僕「全部が終わった今、もう一度言うよ。僕は、君の事が好きなんだ」
女「んっ……」
彼女は、小さく頷く。
その視線は、海を見つめるまでに落ちている。
女「……気持ちは、嬉しいよ」
女「でも、ね……」
僕「……」
彼女の言葉が続き……嫌われて、断られる言葉を吐き出されるのかと、そう思っていた。
でも、次に聞こえた言葉は、それとは違う。
女「私は……愛情をここに残していきたくないんだよ」
残して……いきたくない?
彼女は更に言葉を続ける。
女「もう、僕ちゃんは四年生で……あと数ヶ月で、私とバイバイ」
女「……それが、辛いの」
僕「辛い?」
女「うん。離れたらさ……愛情って我慢出来ないんだよ……」
女「活発ちゃんや友君との友情はね……多分離れても我慢出来るんだよ。たまに会いたくなっても、すぐに抑え込む事は出来ると思う」
女「でも……好きな気持ちだけは、持っていたくないの。お別れしたくなくなるから、それだけが辛いから……」
僕「……」
女「……?」
僕「卒業したら、もう会えなくなるわけじゃないんだからさ。離れて辛いなら、僕は女の側にいる」
女「……」
僕「時間だって、女のために作って……休みの時はたまに学校に遊びに来たりさ。ほら、時間なんて、何とかなるから……」
僕「だから……」
女「……」
僕「だからさ……そんなに寂しそうに笑うのはやめてよ……」
僕は、もう好きという言葉を言えなくなってしまった。
何かを話す度に、彼女の顔が悲しさで染まっていくのが見えてしまったから。
僕が何を言っても彼女は……まるで、僕ともう会う事が出来ないと決まってるような……。
そんな、寂しい顔を浮かべている。
女「ね、私はさ僕ちゃんの事が好きだよ」
僕「えっ……」
その寂しさの中で、いきなり僕にそれを言われて……。
女「うん、好き……最初はね、愛情を作るつもりなんて無かったけれど、一緒にいるうちに段々……」
僕「女……」
さっきまで、僕は否定されているような気すらしていた中で、彼女は僕に語ってくれる。
女「好きだから……君には正直に話しておくね」
女「私さ、あの場所に帰らないといけないんだ」
彼女が指差したのは、見上げていた空の先……星が、何重にも輝いている夜の一部分を。
彼女は指差している。
女「違うよ、星」
僕「そこに……帰る?」
女「うん。私は星の一つだから……いつかはあそこに帰らないと」
僕「意味が、よくわからないんだ……」
女「ふふっ……嘘みたいだけどさ、本当の話だよ。だからずっと一緒にはいられない。それだけ」
僕「……」
夜の海が見せる、夢みたいなものだろうか?
僕には、彼女の言葉を信じる事が出来なかった。
彼女は空から来て、星になって……僕の前から離れていってしまう。
だから、何も残さずに帰ろうとしていた?
僕「……」
女「やっぱり、信じられない?」
僕「……女の言う事なら、信じるよ」
女「ふふっ、本当に?」
僕「当たり前だよ。女が星なら、僕も星……だよ」
頭に浮かんだすぐの言葉を話す僕は、本当に夢の中にいるみたいだった。
僕「だって、僕は……」
女「……ね、ちょっと待って」
僕の言葉を遮り、彼女はまた空に指を差し始める。
女「あの、ほら。月が今重なりそうな辺りにさ……私の帰る場所があるんだよ」
女「お父さんやお母さん、身内の星って言うのかな……みんな、あの辺」
僕「へえ、もしかしてこっちを見てるとか?」
冗談混じりに、僕は笑いながら受け答えをしてみる。
彼女は、すぐに僕の手をギュッと握ってくる。
直に、手のひらと手のひらが触れ合う感触が……自然と僕を高めていく。
僕「み、見られてるなら、こんな……」
女「今は平気だよ、ほら……」
もう一度、彼女は空中で指を動かしながら言った。
大きな月が、その指の先でゆっくりと動き……すっかりとその辺り一帯を覆い隠してしまったように見える。
女「ほら、これで見えないから……だから……」
女「最後に愛情だけ、ちょうだい……?」
そのまま、彼女の唇がゆっくりと近付いて来て……僕の唇と優しく触れ合う。
しっかりと握りしめた手のひらのように、唇と肌と彼女に……僕の体が、くっついている。
長い時間、彼女と一緒にいて……何度も海から吹く風をお互いの唇で挟みながら……。
空に浮かんでいた月は、もうとっくにその場所からは動き出している。
でも、ずっと目を閉じて、星の海の中で抱き合っている僕たちには……その月はもう見えない。
女「ん……」
僕「もう一個、言わなくちゃいけない事があったんだ」
女「ん、なーに?」
僕「今日は、女の誕生日だから」
女「……あ、覚えててくれたんだ」
僕「うん。適当なんかじゃなくて、ちゃんと……」
女「うん……」
僕「女……」
……。
僕たちの声は、吹き抜けた強い風と波の音でもう聞こえない。
ただ、彼女と一緒にこの海と……輝く星の下で、ただ静かに抱き合って……二人の今日が、始まって。
活発「……ふふっ、じゃあ写すよ?。はい、チ?ズ」
活発「はいっ、オッケ?」
友「次は俺のデジカメで頼むよ!」
活発「わかったわかった、ほら、女ちゃんも僕ちゃんも寄って寄って」
友「そうそう。せっかくのツーショットなんだからよ、笑顔笑顔」
僕「わかってるって……」
女「ふふっ、こんな感じ?」
活発「お、いいねいいね?。じゃあそのまま、はいっ」
友「んだな。俺、シャッター頼んでくるよ」
活発「ん?、お花持った方がいいかな? あ、僕ちゃんネクタイ曲がって……って、これはアタシの役目じゃないかな?」
女「あははっ、ネクタイ?」
僕「それくらい、自分で直せるよ」
活発「ふふっ。せっかくの卒業写真だからね。一生物だよ」
僕「ん……」
友「よ、お待たせ。ささ、集まれ集まれ」
活発「お?っ、アタシ女ちゃん隣ね」
女「うん、一緒?。ちょっと借りますよっ?」
僕「……勝手にしてくれ」
女「ふふっ」
友「はい、よろしくお願いしま?す」
……。
カシャリ。
活発「そうだね?。でも、予約したのは六時くらいだっけ?」
女「あと三時間くらいあるね?」
僕「どこかで、時間潰しでもしてるか?」
活発「あ、賛成賛成?」
友「んじゃ、どうするか。まあ、結構時間があるからどこだって……」
女「……あ、あのさ」
活発「ん、どうしたの女ちゃん?」
女「私、行きたい場所があるんだ。その……僕ちゃんと、二人だけで……」
二人……だけ?
僕「ごめんね、待った?」
女「ううん、大丈夫だよ。今来たところだからさ」
大学に一番近い駅から電車に乗って……僕たちは、今からどこかに行くらしい。
女「じゃあ行こうよ。すぐ電車来るみたいだからさ」
僕「ん……」
女「ふふっ、早く早く」
ギューッと音が聞こえて来そうなくらい、彼女は僕の手を強く握りしめたかと思うと。
軽い足取りで、僕を目的の電車まで引っ張って行った。
僕の足が軽く感じたのは……スーツから私服に着替えたせいでは、多分ない。
女「ふふっ」
女「私の、お気に入りの場所だよ。一緒に来たかったんだ?」
目の前の看板には『プラネタリウム』の文字が見えた。
落ち着いた雰囲気の建物だと思っていたけれど……。
僕「プラネタリウムなんて、初めてかもしれない」
女「……よかった、初めてで。なんか、嬉しいよ」
僕「女……?」
彼女の顔は、少しだけ疲れているように見えた。
昼の疲れが出てきたんだろうか?
女「入ろう。一緒に……ね?」
僕「うん……」
僕たちは、再び手を握りあって……建物の中へ入っていった。
その背中で夕焼けが落ちていくのを、僕は感じていた。
僕たちは、星の見える大きな部屋に入っていった。
中では、静かな音楽に……一瞬で目の前の全てが星になる、そんな夜の中を歩いていた。
女「ここ、座ろ」
彼女は、ドームの中心に一番近い席を指差した。
僕「ここがよく見えるの?」
女「ううん、好きな場所だから、それだけ」
僕たちは腰を下ろし……二人で肩を寄せながら、球体の空を見ていた。
僕「誰もいないね」
女「僕ちゃんがいればいい……」
僕「ん……」
女「ここには、見られて困る星はないからさ……ね」
女「もう一回、愛情欲しいな……」
……。
僕たちの唇がゆっくりと合わさっても……この星たちには、何を見る事も出来ない。
僕「ん?」
女「星が見たい」
僕「本物? じゃあ、そろそろ外に出て……」
女「ふふっ、違うよ。こっち」
僕「?」
女「ついてきて?」
席をパッと立ち上がり、出入口に続く段差の上を軽快に。
ピョン、ピョンと一番上の段まで上り詰めてしまう。
僕「ま、待ってよ」
女「こっちだよ?」
扉を開けたままの彼女は、今入ってきた方向とは逆の、建物の更に奥の方を指差している。
彼女がすぐに走り出してしまったので、見失わないように後を追う。
彼女の姿を……一秒だって視界から消したくなかった。
僕は、扉を勢いよく開いき、彼女に向かって走っていった。
僕「これは……天体望遠鏡か」
扉を開けた僕らの前には、白の大きな望遠鏡が、空に向かって真っ直ぐに伸びている。
女「うん、自由に見ていいんだよ。普段見る星とは、また違って見えて……好きなんだ」
僕「……星が望遠鏡を覗くの?」
女「人間観察と同じようなものだよ?。なんてね」
ふふっ、といつもの笑いが漏れる。
女「僕ちゃんにいい物見せてあげるよ、ちょっと待っててね」
……彼女は望遠鏡を覗き始め、なんだか手元の辺りで小さく機械をいじっている、ように見えた。
女「……ん、お待たせ?」
以外と早く、その作業は終わったみたいだ。
木工作りの、背もたれのないイスを軽く叩きながら言った。
表面が反射して、テカテカとしたそのイスは……新調された感じを受ける。
薄暗い部屋の中で、彼女の真っ白なパーカーだけがよく見えている。
僕は、そこまでゆっくりと歩く。
女「そのまま、覗いてみて……見えるはずだからさ」
僕「……」
いつも見ている、空の色。
でも、そこに混ざる一つ一つの光が大きくて、ただひたすらに輝いている。
僕「星が、すぐそこにあるみたいだ……」
女「えへへ?、綺麗でしょ?」
僕に見る事の出来ている全ての星が、ただ綺麗に光っていて……波のように、僕の瞳に入ってくる。
女「……その星の中にさ」
背後から、声が聞こえる。
女「ちょっとだけ小さいけど、でもよく光って見える星が一つだけ……ない?」
僕「ええっと……」
女「その、真ん中辺りの……うん」
僕「……これかな?」
僕は、言われた通りの星を見つけた。
確かに大きさ自体は小さく見えるが、望遠鏡で見るとその光の強さがよくわかった。
女「うん……その星が、私なんだよ」
僕「え……」
僕は、思わず彼女の方を向こうとした。その時。
女「振り向いちゃダメ!」
僕「っ……」
女「レンズから目離しちゃ、ダメ……星を見ていないと……ダメ」
制止の言葉と、両腕の絞まりが一層強くなる。
僕は、全く動けないようになってしまい……ただ、彼女と思われる星を見つめていた。
女「……」
僕「……」
静かな部屋に、誰かが入ってくる事もなく……僕たちは、そのままの姿勢で時を過ごしている。
女「ね……」
口を開いた彼女の声は……目の前に見える星と一緒で、少し暗くなっている気がする。
女「会えた事、それって流星みたいなものだよね」
女「何となく空を見て、偶然に星を見つけて……でも、見つけたらそれでおしまい」
僕「……」
女「あ、言っておくけど私は流れないからね? ずっと……僕ちゃんが見ているその星のままでいるから……」
女「だから……」
震える度に、僕を抱きしめる力が強くなるのが、僕には分かっていた。
キツいくらいに僕を抱いても、どんなに体をくっつけて近付いても、その震えは止まらない。
僕「女……一つだけ教えて」
僕「もし僕が今、この星から目を離したら女は……」
女「……」
僕「……もう、帰らないといけない時間なのか?」
女「……」
僕「どうなんだ、答えてくれ……お願いだから……」
僕の方も、体が震えそうになっている。
声をまだ……辛うじて、はっきりと出す事が出来たのは、彼女から答えを聞いていないから。
でも、なんとなく僕にはわかっていた。
僕「っ……」
喉と胸に、体の奥から余計な感情が込み上げてきて……。
息が、出来ない。
女「ふふっ、私の家、門限厳しいからさ……だから、バイバイしないといけないんだよっ」
僕「……嘘つきだ。門限、無いって言ったクセに」
女「あっ、ははっ。時間なんて気にしないで、一緒にいたいのにね?」
僕(そんなに、無理に笑おうとしないでくれ……)
泣きそうな僕が、ひどく小さな星に思えてくる……。
女「あと二年もここにいたら……多分私は、星になるのを止めてるよ」
僕「どういう事……?」
女「二年も僕ちゃんに愛情貰い続けたら……今以上に、別れるのが辛いから……」
僕「自分で……決めた事だったんだね」
女「私にとっての愛情は、もういっぱい。だか、ら……」
女「……」
そこまで言うと、彼女は僕の背中に顔を埋めて……しばらくは何も喋らなくなってしまった。
泣かないような話題を、精一杯探してみたけれど……その全てが、彼女の愛情に繋がってしまう気がして。
少しの間、レンズの中だけをただ覗いていた。
僕(ここから離れたら、女が……)
女「待たせるのは悪いからさ、そろそろ……行こう?」
僕「女が行かないなら……俺も行かない」
女「でも、ここだって……七時には閉まっちゃうから、早めに……」
僕「……」
僕「ね、女。僕のポケットからさ、携帯出してくれないかな?」
女「ん……はい」
すぐに、彼女は片手を動かして僕に電話を渡してくれた。
僕「ついでに、友に電話して。そしたら、後は僕が話すから……」
女「……」
ピタリ、と耳に電話の感触を感じる。
呼び出し音、繋がる音……友の声が聞こえる。
僕『あ、実はちょっと遅れそうなんだ。先に店に入っててくれないかな』
震えそうな声を必死で抑え、僕はなるべく元気に話をする。
友『ん、何かトラブル?』
僕『そんなんじゃないよ、ただ……彼女が今日は「帰る」って言うからさ。お見送り』
女「……」
ギュッ。
友『そっか、参加出来ないのか。残念だな?』
僕『ああ、だから僕は直接店に向かうからさ。それで頼むよ』
友『わかった。じゃあ、また後で。女にもよろしく言っておいてくれ』
活発『女ちゃん、また今度遊ぼうね?!』
友『わっ、横から大声をだ』
ブツッ。
女「ふふっ、ね」
僕「これで、七時までは一緒」
女「……」
僕「最後に、二人に挨拶しておく?」
女「ううん、声が聞けたから……それだけでいい」
電話の向こうで、二人も笑っていた。
彼女にとっては……まるで自分が卒業するような気持ちで、彼らの笑い声を聞いていたんだろう。
女「もうっ、いちいちイジワルしないでよ。卒業の時って、雰囲気で泣いちゃうものでしょ?」
僕「ん、そういう事にしておく?」
女「……あんまり生意気言うと、歯形で皮膚ボコボコにしちゃうぞ?」
僕「ははっ、女が残してくれる物なら何でもいいよ」
女「……本気?」
僕「あと一時間なんだからさ……女の好きなようにくっついてくれていいよ」
僕「僕は……ずっと同じ星だけを見てるから」
女「うん……まあ、それも私なんだけどね」
僕「ん、じゃあ後ろにいる女を見たって別に」
ガブッ。
女「ご、ごめん。ちょっと強く噛みすぎたかも……」
冗談を言った僕が悪かったのか、左の首筋辺りがヒリヒリと悲鳴をあげている。
女「じゃあ、これくらい……んっ」
今度は、優しい歯の感触が右の辺に流れている。
彼女の口に挟まれた首筋に……ゆっくりと生暖かい舌が触れる。
噛んだ痕はもちろん、口の中の彼女……粘膜を塗られているような感覚すら覚える。
残りの一時間は……彼女がずっと僕を甘噛みしていて、僕に印を付けている、そんな時間が流れた。
ずいぶんと長い時間、僕の首にくっついていた彼女がその唇を離す。
僕「満足した?」
女「……満足。いっぱい噛んだよ?」
僕「うん、それはよかった」
女「うん……私も会えてよかった」
……急に、シリアスになるのはズルい。
沈んだトーンのまま、彼女は言葉を続けた。
女「もう七時……私、そろそろ帰らないと」
僕「ずっと、この望遠鏡を見ていたいんだけどな」
女「ふふっ、係の人が来るから止められちゃうよ。だから……本当にバイバイしなきゃ」
僕「……」
女「ね?」
この土壇場になって、僕は……星を見る事をやめたら彼女が消える、という言葉を信じられなくなっていた。
女「……最後にさ。笑ってバイバイって言って?」
嫌だ。
女「ね……何か言ってよ……」
さっきからずっと……僕の目には、海のような涙が浮かんでは、彼女を見る事を邪魔している。
何かを言ったら、僕の声は……情けなく震えて、彼女をまた不安にさせるんだ。
女「……そっか。言葉じゃなくてさ……」
女「ね、そのまま目を瞑って? 星を、海の中に閉じ込めるように……そう」
僕の体は、彼女がいるであろう方に向けられる。
望遠鏡も、周りの景色さえも見えず、僕の瞼には一つの星だけが浮かんでいる。
女「……」
キュッ、彼女の両手が僕の肩を掴んだ。
服を軽く握られて……星がどんどん近付いてくるのが見えた。
女「二年間ありがとう。さよなら……大好きだよ」
女「これが最後の……」
女「んっ……」
瞳の中の星が、パッと煌めいて……消えた。
唇の感触は、まだ僕の呼吸を止めているのに。
肩を掴む両手の暖かさが、まだここにあるのに。
もう、浮かんでいた星が見える事は無くなっていて、ただ真っ黒な海だけが残っていた。
扉が開いた瞬間、唇が自由になった。
それと同時に、すぐに目を開けて……僕は彼女を探した。
僕「……」
部屋の中には、僕と係の人間以外誰もいるはずもなかった。
閉館です、と声を掛けられてからも……僕はもう一度だけ望遠鏡を覗いてみたんだ。
綺麗に光る星の中に、一つだけ……まるで、こちらを見つめているみたいに、輝く星がある。
その光は僕に何かを……。
僕(うん……うん)
僕(ちゃんと挨拶しとくよ。待たせないように、急いで行くから……)
僕(……)
僕(僕は、女の事が……ずっと好きだから)
女(うん……ありがとう)
星がキラリと……優しく光って、微笑んだ。
僕には、そんな気がした……したんだ。
活発「あ、来た来た。心配しちゃったよ?」
僕「ああ、ごめんごめん。電車が混んでてさ」
活発「あ、電車だったんだ。女ちゃん、しっかり送ってきた??」
僕「ちゃんと……自分の場所に帰っていったよ」
友「そっか。まあ、とにかくお疲れ。じゃあみんな……いや、いない分の女も含めてさ」
友「乾杯」
活発「うん、お疲れ様?」
僕「ん……乾杯」
心の中で、僕は彼女の名前を呼んだ。
友と活発の顔を見て……彼女の言っている事を、少し理解した気がする。
僕(友情はまだ我慢出来るけれど……)
僕(愛情だけは、我慢出来ないみたいだ……)
友「おうおう、泣け泣け。男にだって泣く権利くらいは?」
活発「もう、飲み過ぎ!」
活発「……また変に酔っちゃったかな。ほら、お水と……あ、む、無理にご飯なんて食べなくていいんだよっ!」
活発「……なに、もしかしてやけ酒みたいな感じ? 女ちゃんと喧嘩でもした?」
活発「もう……そんなに荒れるくらいだったら、アタシが仲介してあげるからさ。もう、泣かないの」
活発「ふふっ、お給料出たらお洋服買って、着せ替えさせるんだ?。女ちゃん可愛いんですもの」
活発「あと、ケーキやお菓子だってたくさん買ってあげて、それから……」
それから……居酒屋から、声は段々と遠ざかっていく。
その、賑やかのお店を……一人の女の子が、寂しそうに見ていた。
彼女にだけ見える光景と、聞こえる会話……。
その日の夜の記憶は、悪酔いのせいで何も覚えていなかった。
眠ったら、次の日はに起き上がって……。
彼女のいない僕の生活が、ただ始まった事だけを覚えている。
その記憶を持ったのは……何十年前の事だっただろう。
正確な年数を思い出すには、今の頭では少しだけ時間が掛かる。
何より今日は……そんな数字を数えて過ごすような日ではない。
男「……よし。準備はこれでバッチリだ」
大きな、白い天体望遠鏡を覗きながら……僕は一人ではしゃいでいた。
空には一つの雲すら無くて……星の光が無限に広がっている。
僕はその無限の中から一つ……小さいけれど、とても綺麗に光を放っている星を見つける。
その光は久しぶりに見たはずなのに、懐かしくて、僕はそれをよく覚えていた。
男「……」
妻「んっ……また望遠鏡覗いてるの?」
男「ああっ、まだ起きてたんだ」
妻「もう寝るけど……あ、何か飲む?」
男「ううん。気にしないで、ゆっくりおやすみ」
妻「そう……じゃあ、おやすみ。あまり遅くならないでね」
男「……ん、おやすみ。また明日」
一人になり、レンズから見える、星に再び目を戻すと……その光は先ほどよりも強くなっている気がした。
男(……いや、毎回そう怒るのはやめてくれないかな)
女(ふ?んだ……浮気者)
男(そんな事言わないで。ほら、ちゃんと今年も会えたんだから)
女(……)
男(ね?)
女(わかった……から)
男(ははっ、じゃあいつもの……ね)
女(ん……)
ガラスのような、液晶のような……小さなレンズを見つめて。
遠くにいる君に向かって……僕はお祝い言葉を呟いた。
『お誕生日、おめでとう』
そこからは……静かに二人でお喋りをして。
太陽が星を隠してしまうまで、僕と彼女はレンズ越しに見つめあっていたんだ。
男(……そろそろ、帰らないと)
女(うん、私も……)
男(また今度、ね)
女(ふふっ、笑ってバイバイできるって幸せだよね)
男(うん)
女(じゃあ、また……)
……。
これが、僕の過ごした記憶の全てだった。
それからまた何十回と季節が巡っては……過ぎていく。
「……」
「どうかした?」
「星が、綺麗だったから……つい」
「くすっ。なんだかロマンチック」
「一緒に見よう。ほら、こっちにおいでよ」
「うん……」
恋人たちが寄り添うように……。
誰かが見上げているこの夜空でも……二つの星が、笑っていた。
小さくて見る事は出来ないかもしれないけれど、彼女はずっとそこにいる。
その横で、静かに彼女を見つめる……新しい星の存在が。
この星の海に、広がっている。
明るい月と、寒さでよく見えるようになった星がそこにはあって……。
どこかで、一つの星が笑っているように光を放っていて。
素敵な気持ちになった僕は、また彼女を想って笑うんだ。
その星に……お祝いの言葉をあげよう。
「お誕生日、おめでとう」
それだけで、彼女は笑ってくれる。
二人で、星と海を見つめながら抱き合ったあの日を……僕は忘れない。
この記憶は、空にいる彼女の側に行っても……。
星として生きる僕の記憶に、永遠に残るのだから。
星の裏側に付いた……消えない、彼女の印と一緒に。
「星の海で……つかまえて」
終
読んでくれた人、保守の人ありがとうございます。
九月にどうしても書きたかった文章がこれでした。
良かったよ、乙
コメント
- SS図書館の名無しさん 2014/02/17 (月) 6:03
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女「星の海で……つかまえて」 – 2ちゃんねるSS図書館
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女「星の海で……つかまえて」 – 2ちゃんねるSS図書館
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