- 2010-09-25 (土) 19:21
- けいおん!






憂「……あ、律さん、おはようございます」
律「どうよ、調子は?」
憂「………いつも通りって感じです。でも、全然大丈夫ですよ!」
律「……うん、そっか」
いつも通りの、力のない笑顔。張り付いたような笑顔。
私はもうここ数ヶ月、憂ちゃんの満面の笑みを見ていない。
律「……憂ちゃんは偉いよな」
憂「いや、本当に大丈夫なんです! 律さん、いつも有難うございます!
あ、今日も部活頑張りましょう! それじゃ、また放課後に!!」
律「お、おぉ……」
憂ちゃんは、1年生の教室の方向へ走って行った。
随分と汚れた彼女の上靴。私のと比べれば、随分と灰色がかっている。
その後ろ姿を見ながら、今日も一日が始まることを嫌でも実感する。
律(今日は私が一番最初って訳か……珍しいな)
いつもは澪や憂ちゃんが先に来ているのだが……
澪「おっす、律」
律「おぉ、澪。あたしより遅いなんて、珍しいじゃん」
澪「いや、ちょっと追試が……な」
律「あぁ、そっか。澪ちゃん、勤勉だけど要領悪いもんな?」
澪「う、うっさい! 仕方ないだろ、私は全力尽くしてるんだから!」
律「ははは、冗談冗談。じゃ、梓と憂ちゃんが来るまでダラダラすっか」
澪「……あのさ、律」
律「ん?」
澪「練習より前に、私たち、するべきことがあるんじゃないか?」
澪「わかってるんだろ?」
律「……でも、どうしようもないじゃん、あれは」
澪「でも! どうにかしないと、このままじゃ憂ちゃんが唯と同じ道を辿ることに」
律「じゃ、あれか? 私たちが身代わりにでもなるか? 1年生の教室まで行って?
いちいち現場取り押さえて、憂ちゃんをいじみてる1年坊をしばくか?」
澪「そ、それは……」
律「無理だろ、そんなの。今私たちに出来ることは、軽音部っていう居場所を提供してやることくらいだ」
澪「……………」
律「まぁ、納得いかないのもわかるけどさ。けど、憂ちゃんだって憂ちゃんなりのプライドがあるだろ。
憂ちゃんが助けを求めてきたら、あたしたちが手を差し伸べれば良い。
けど、その前にしゃしゃり出てくのは、憂ちゃんのなけなしの自尊心が、傷ついちまうだろ」
澪「……ごめん」
律「謝んなよ。あたしだって、何かしてやりたいって気持ちは十二分にあるからさ」
――
―――
律「おっす、梓」
唯「あずにゃーん、ちゃおー」
梓「あ、り、律先輩、唯先輩! お、おはようございます!」
唯「? あずにゃん、もう3時だってことは、私だってわかるよ?」
梓「!? す、すみません、こんにちは!」
律「どうしたんだー、梓ー? 何か顔微妙に赤いし。何かあったのか?」
梓「べ、別に何もありませんよ! さぁ、練習練習!」
唯「あれ? あずにゃんの鞄の上に置いてあるの、何?」
いじみてる、って何か可愛い
律「お、まさか、私たちへのバレンタインチョコ? 照れるねぇ、良い後輩だねぇ?」
梓「………ま、まぁそうですけど」
律「ほぅ?、あたしたちにチョコをあげるということだけでも、こんなに照れてしまう中野梓さん、もしかして梓ってレz……」
梓「そ、そんな訳ないじゃないですか! ただ、何となく緊張しちゃっただけです!」
唯「あずにゃん、か?わい?!」
梓「だ、だきつかないでください!!」
―――
――
―
律(相変わらずあっちの世界は幸せそうだな……羨ましいぜ)
律(こっちは問題が山積してるっつうのに…)
律(………まぁ、前よりはマシなのかな…)
律(……もっとひどくなってるかも知れない…)
律(でも、澪に言って余計な迷惑かけたくないし……)
律(………どうしたもんか)
梓「律先輩、おはようございます」
律「お、梓、おはよ」
梓「……珍しいですね、律先輩が率先して練習してるなんて」
律「………ドラム叩いてる時は、余計なこと考えずに済むからな」
梓「ま、そうですね……私も練習しよっかな」
律「そういや、梓」
梓「何ですか」
律「この頃外バンの方はどうなってんの?」
律「だって、お前外バンの練習があるから、週2・3日しか出てこれないって言ってたじゃん。でも、最近毎日部室来てるだろ」
梓「……それは、色々こっちにも事情があるんです」
律「そっか。なら良いんだけど。お前が練習出てきてくれるのは、嬉しいんだけどさ」
律「無理すんなよ」
梓「……………心配しないで下さい。全て、順調ですから」
律(この子、嘘つけない子だよな)
澪「律、最近どんどん上手くなってるんじゃないか? 全然ドラム走ってないし」
律「あー、まぁ、それ相応に練習してるからな」
憂「そうですね! 私ももっと練習しないと、置いてかれちゃうかも」
律「どの口がそんなことおっしゃる、ギター始めたの3ヶ月前なのに、もう人前に出しても恥ずかしくないレベルまで上手くなってんじゃん」
梓「へー、憂がギター始めたのって、3ヶ月前なんですか? てっきり中学からやってるものかと……」
憂「へへへ、実はお姉ちゃんが練習してたの、ずっと聞いてたから」
律「え? そうだったの?」
憂「はい! お姉ちゃん、高校始まってすぐにジャズ研に入ったんです。それで、いつも部屋でギター弾いてたんですよ」
澪「そうだったんだ……でも、聞いてただけでそこまで上手くなるとは…」
憂「ギターの教則本とかも読んで、色々研究したしね!」
梓「ん、どうしたの?」
憂「……いや、何でもない………ん、ちょっと忘れ物したから、先帰ってて!」
梓「?」
澪「ちょっと憂ちゃん! もしかして、また」
律「おーっし。澪、梓、帰るぞー」
澪「な、ちょっと律! でも!」
梓「…………」
律「憂、また明日な?」
憂「……はい、皆さん、さようなら!」
梓「……じゃね」
澪「……………」
律「……お前、逆にあたしたちが声かけたら、憂ちゃんはどう思う?」
梓「…………」
律「憂ちゃんには憂ちゃんのプライドってものがあるんじゃないか? 子供は親にいじめられてることを報告したがらないだろ」
律「それに、あたしたちがあそこで騒ぎ立てたところで、憂ちゃんはあたしたちに負い目を感じるだけだろ」
律「同情されるのが、一番惨めなんだよ」
澪「……でも、私は、少しくらい手を差し伸べてあげても良いと思うけど、なぁ、梓?」
梓「…………ごめんなさい、わからないです。律先輩の言ってることも、澪先輩の主張も、正しいと思います」
澪「……んー」
律「…………ま、あたしたちに出来る最善のことは、毎日部活やって、憂ちゃんの居場所を作ってやることじゃないか」
梓「……そう…ですね」
澪「…………そうなのかな…」
――
―――
律「おーい、あずさー」
梓「……り、りつせんぱい」
律「練習後に会うなんて、珍しいなー。何してんの?」
梓「わ、わたしは、普通に帰る途中です!」
律「? でも、お前の帰り道って、唯と同じ方向じゃなかったっけ? 私とは正反対の方向のはず」
梓「唐突にアイスが食べたくなって、目に付いたコンビニに飛び込んだら、そこから帰り方がよくわからなくなったんです!」
律(………何か、おかしいな……挙動がいつもと全然違う)
梓「それでは、失礼します!」
律「あ、ちょ、ちょっと、梓」
律(……なんだ、あいつ)
―――
――
―
律(……まぁ、顔が同じだから、当たり前なんだけど)
律(それにしても、いつもの夢と、少し違ったな)
律(……今までの夢とは、関係ない夢なのかね。純粋な、ただの夢)
律(考えても、詮ないけど)
律(……行くか、学校)
澪「……よ」
梓「こんにちは」
律「あれ? 憂ちゃんは今日休み?」
梓「憂なら……お姉さんの面会に行きました」
律「あ、そっか! そういや今日水曜だもんな」
澪「……裁判、来月だったっけ」
律「確か、そうだったはず」
梓「…………こればっかりは、どうも出来ませんね」
澪「なぁ律! もっと私たちが、積極的に憂ちゃんをサポートしてくべきだよ!
これから裁判も始まって、憂のお姉さんの事件がまたマスコミに取り上げられる!
そしたら、報道陣だって憂の家に押し掛けるはずだ。
憂に対するいじめだって、まだ続いてる! 恐らくこれからも続くよ!
なら、こっちから憂ちゃんの話を聞いてあげるべきじゃないのか?」
律「………………正直、あたしにもわからん」
律「この話は、やめにしようぜ」
澪「なんで、でも、憂ちゃんが居ない今の内に話しといた方が!」
律「………………個人個人が、したいようにする。それで良いんじゃないか?
あたしたちで意思統一図らなくても、別にいいだろ。
あたしはあたしのしたいようにする。それは澪も然り、梓も然り。
それで良いんじゃないか?」
澪「………でも、部活のみんなでケアしてあげた方が、」
律「うるさい」
澪「! …………」
梓「さ、練習しましょ、練習! 話しててもキリがないですから、ほら!」
律「……そだな、練習しようぜ、澪」
澪「………………」
律(憂ちゃんが居たら、澪が過剰に憂ちゃんを気遣っちまうし)
律(梓は周囲の空気読むので必死だし)
律(梓自身も、外バンあんまし上手くいってないみたいだしな)
律(……………ここは、部長として、どうにかするべきなんだろうが)
律(……自分の身に置き換えると、憂ちゃんには余計な干渉はしないのが吉だと思える)
律(私自身、ひとりぼっちだった時、同情されることが一番むかついたからな)
律(でも、それはあくまでも私の話だし……)
律(………全然わかんね)
律(……田井中律さん、あんたなら、こんな時どうするよ…)
――
―――
律「おい、梓」
梓「何ですか、先輩」
律「お前、あたしに何か隠してないか?」
梓「かくしてないか、と言いますと?」
律「ほら、昨日! お前あたしと会ったとき、すっげぇ挙動不審だったろ」
梓「きのうあったとき? 部活のことですか?」
律「違う違う! 昨日、部活終わって家帰る時に、お前あたしと会ったろ! 私と帰る方向全く違うのにも関わらず!」
梓「………え?」
律「え? じゃないよ! もー中野さんったら、先輩に嘘ついちゃいけまちぇんよ?」
梓「いえ、律先輩のおっしゃる通り、私と先輩の家は逆方向ですから、会える訳がないじゃないですか」
梓「? それに、私は昨日唯先輩と帰りましたから、唯先輩に聞いて頂ければわかるはずですけど」
律「……マジで?」
唯「何話してるの、あずにゃん、りっちゃん」
梓「律先輩が、私と昨日帰り道で会ったって言うものですから」
唯「うーん……それはないと思うなー。だって、あずにゃんはわたしと帰ったし」
律「?? ん……そうなのか…でも、あたしは確かに会ったんだよな、昨日の帰りに……」
唯「りっちゃん、きっと疲れてるんだよ! いろんなことに!」
律「色んなことって何だよ……もう学祭も3ヶ月前だぞ。練習もいつも通り適当な感じだし……疲れる要因なんて、ありゃしないよ」
梓「適当な感じじゃ駄目なんです! さぁ、練習しましょう!!」
唯「えー、ケーキは??」
唯「あずにゃんきびしいー」
梓「これが普通です!」
律「………………」
―――
――
―
律(……わからん、よくわからん)
律(………引っかかるっちゃ、引っかかるけど)
律(……いいや、こっちには考えることが沢山あるし)
律(……………学校行こ)
律「………お、憂ちゃん。おはよ」
憂「律さん、もしかして、私、軽音部に御迷惑かけてます?」
律「え? い、いや、全然そんなことないよ、マジで」
憂「…………いや、何か気を遣わせてたら嫌だな、と思って」
律「余計なこと考えんなって。むしろ昨日は憂ちゃん居なかったから、大変だったんだぜ
澪のベースもあたしのドラムも下手だし、梓はまぁまぁだけど、憂ちゃんには及ばないからな
今日は来てくれよ、憂ちゃん」
憂「……は、はい! わかりました」
律「あと、憂ちゃん」
憂「?」
憂「…………」
憂「………ありがとう、ございます」
律「んじゃ、また放課後に」
律(おっし、4限終了した! この昼飯時だけが楽しみで、毎日生きてるようなもんだからな!)
澪「り、律」
律「うぉ! びっくりした! なんだ澪か……どした? 何か用か?」
澪「お、お昼御飯、一緒に食べない?」
律「へ? だって澪、お前文芸部の連中と一緒に食べてたんじゃなかったっけ?」
律「……………じゃ、部室でも行くか」
澪「……うん」
律「そういや、あたし誰かと一緒に昼飯食べたのとか、中学の時以来かも知れない」
澪「え、いつも教室で一人で食べてるの?」
律「そうだけど?」
澪「…………そうなのか」
律「何ですかその憐れみの目は! 人間慣れれば何だって可能になるんですよ!
むしろ今あたしが澪と食べてるってことの方に違和感感じるわ!」
澪「中学までは、一緒に食べてたのに」
律「あーら、あたしから離れてったのは、澪ちゃんじゃありませんこと?」
律「いや、いいから! 湿っぽくならなくて! んで、どしたのよ、わざわざあたし誘うってことは、何かあったんだろ?」
澪「……うん、ありがと」
澪「最近、妙な夢を見るようになって」
律「…………ついに澪も見るようになってしまったか」
澪「……多分、4ヶ月くらい前に律が言ってたのと同じ感じの夢」
律「幸せそうなあたしたちが、軽音部で幸せそうにしてる夢だろ?」
澪「うん……メンバーは、私と律と梓、あとは憂ちゃんみたいな人と、どこかで見覚えある人が居る。憂ちゃんは居ない」
律「憂ちゃんみたいな人は、憂のお姉さんの唯で、残りの1人は、学祭延期の原因となった、琴吹さん」
澪「!? 琴吹さんって、あの琴吹さん? そう言えば、どこかで見たことあると思ったら……」
律「まぁ、学校全体の葬儀もやったし、新聞にもばんばん出てたからな」
律「はいはーい、そこらへんで終わりにしとこうね、澪ちゃん。
夢はあくまでも夢だから」
澪「でも、一時期、律あれが本当のことだー、とか騒いでたじゃん。
私も、あの夢は他の夢と何か違う気がするんだ」
律「……いや、夢は夢だろ」
澪「夢から覚めてもはっきりと覚えてるし、細部がやけにリアルなんだ」
律「そ、そんなことより澪、文芸部の奴らは大丈夫なん? 一緒に飯食ってたんだろ?」
澪「文芸部? あぁ……辞めた」
律「やめた? お前、掛け持ちしてるって言ってたじゃん!」
澪「軽音部入ってから、居づらくなって……」
律「そうなのか……知らなかった」
律「……………何か、ごめんな」
澪「……いや、律が謝ることないよ。軽音部に入ったのは、私の選択だし」
律「………………」
澪「……帰るか、教室」
律「…………あぁ」
ということは、梓や憂ちゃんも見てると考えるのが自然なのかな?
でも、憂ちゃんは夢の中には出てこない……いや、あっちの世界で会ったっけか。
梓と憂ちゃんが夢を見ている可能性も、大いに有り得る。
でも一体、あの夢を見る条件ってのは一体何なんだ?
私は、あっちの世界から帰ってきてから、少しの間あの夢を見なかったけれど、暫くしてまた見るようになった。
……ということは、澪や梓、憂ちゃんがあっちの世界に行きたくなる可能性もある、という訳で。
また唯の二の舞踏ませない為にも、しっかり対策しないとな。
何故私が対策しなけりゃならないかは、分からないけどさ。
4ヶ月前からの一連の流れで、気を配らなくても良いところまで配ってるな、私。
もう少し、気を楽に持つことにしよう。
そうじゃないと、また変な気を起こすことになる。
――
―――
澪「律ー」
律「……ん、澪か。どしたん?」
澪「いや、律が柄にもなく険しい顔してるからさ。何かあったのかな、と思って」
律「…………まぁ、あったと言えばあったんだけど。別に大したことじゃないからな」
澪「そう言われると、気になるな」
律「……実はさ」
律「何か、不気味じゃん? 別に大問題でもないんだけど、むしろどうでも良いんだけど、釈然としないと言うか……」
澪「……確かに。律が言ったことも本当で、梓が言ったことも本当ってことは、有り得ないしな」
律「でも、梓が嘘をついているようにも見えないんだ。それに、梓は途中まで唯と帰ってるから、唯と別れてから逆方向に向かうとは考えづらいし」
澪「うーん…………不思議だな…」
律「……ま、別に実害はないから、どうでも良いんだけどさ」
―――
――
―
律(…………)
律(……おいおいおいおい、ちょっと待ってくれよ)
律(………ここ3日間の夢って、もしかして)
律(……………もしかして、もしかしちゃうのか?)
律(……これって、ヤバい?)
律(C組だったっけ、梓のクラス)
律(あ、良かった、居る……)
律(成る程、梓には友人も居る訳ですね、わかります)
律(いつもの可愛いあずにゃんだ…)
律(あっちの世界の唯の口癖が移ってる……)
律(じゃ、自分のクラス帰るか……)
律(……と、ちょっと待て)
律(……………)
律(………何だよ、あれ)
憂ちゃんが、教室の隅に居る。隅で小さくなっているように見える。
彼女の傍には、誰も居なかった。まるで彼女を避けるかのように、昼食の机が組まれている。
憂ちゃんの全身は、びしょびしょに濡れていた。まるで頭上から水でも浴びせられたかのように。
今、季節は冬だが、雲一つない快晴。勿論、雨に濡れる訳もない。
そして、机が、薄黒い。通常、机の色は白っぽい灰色なのだが、憂ちゃんの机だけ、黒に近い。
さらに。
憂ちゃんの机の周囲に、紙屑、が散乱している。
紙屑? …………違う。
表紙で判断出来る。
これは、教科書だ。私が昨年使ったものと同じ。
世界史Bと、数学?の教科書。が、これでもかという程、ビリビリに割かれて憂ちゃんの机の周囲に放置されていた。
そして。
当の憂ちゃんは。
当の憂ちゃんはと言えば。
ただただ、そこに座っているだけ。
空虚な目をして。顔を歪ませもせず。憎悪に歪ませることもなく。
表情には、何も堪えず。
ただ、そこに、ポツリと、座っているのだ。
叫ばずには居られなかった。
考えるより、体が先に動いていた。
シンと静まり返る教室。
梓が狐につままれたような表情で、こちらを見ている。
一直線に、梓へ歩み寄る。周囲の2年生が、怯えたように道を空ける。
何故、お前。こんな状況を目にしても、何もしてやれない?
歩みよってやるだけでも良い。近くにいてやるだけでも良い。
お前、憂ちゃんは軽音部の仲間だろ? いつも憂ちゃんと、普通に話してるじゃんか。
軽音部で、いっつも普通の友人みたいに話してるじゃんか。
それなのに、何で。何で……
「何もしてねぇんだよ!!」
梓の胸倉を思い切り掴む。そして、拳を振り上げる。
何で、助けて、やらねぇんだよ。
何故、助けて、やれなかった?
何で、ここまでなるまで放っておいたんだ?
下手に干渉されると、プライドが傷つくから。
同情ほど、辛いものはないから。
良いじゃん、個人の裁量に委ねとけば。
居場所だけ、作ってやれば、良いんだよ。
私たちには、何もできないんだ。
……私だ。
……………今まで何もしてこなかったのは、私だ。
「ありがとうございます」
振り上げた拳を、柔らかな手が、しっかりとした力で、押さえつける。
誰かは、振り向かなくても、分かる。
「……私は、大丈夫ですから。律さん、ありがとうございます」
「………憂ちゃん」
視線だけ後ろにやると。
微かに微笑んだ憂ちゃんが、そこに立っている。
その笑顔を守れなかった。
その笑顔を、守ってやれなかった。
「……誰も悪くなんかないんです、誰も」
梓は、涙ぐんでいた。
憂ちゃんは、空虚な笑みを浮かべていた。
「それに、私、お姉ちゃんの為なら、どんなことでも、頑張れますから」
私は、どんな顔をすれば良いのか、わからなかった。
ただ、その場から、逃げ出すことしか、出来なかった。
憂ちゃんの為だとか言って、ずっと問題から目を逸らし続けてた。
私は、ただ皆から孤立しているだけだった。いじめられている訳ではなかった。
むしろ、私自ら孤独を選んでいるきらいがあった。
しかし、憂ちゃんは違う。
あれは、いじめられているんだ。
暴力。精神的にも、肉体的にも、苦しめられている。
それじゃなくても憂ちゃんは唯のことで、疲労しているのに……
私は、最低だ。
その日、私は部活を休んだ。
――
―――
唯「ムギちゃん」
紬「なーに、唯ちゃん」
唯「ムギちゃんって、いつもわたしたちより最初に部室来てるよね」
律「言われてみれば、ムギが後からくるの、見たことないな」
紬「それは、お菓子とお茶を用意する為よ?」
唯「あ、そっか! ムギちゃん居ないと、みんなお茶もお菓子も食べられないもんね!」
澪「いつもごめんな、ムギ」
梓「私たちも手伝った方が、良いんですかね?」
紬「全然! 私、こういうの準備するの好きだから!」
唯「ムギちゃ?ん、いつもありがとね!」
律「ムギが居るからこそ、この部活があるってのは絶対あるよな!!
なんてったって、放課後ティータイムだし!!」
澪「……意味わからん」
紬「ふふふふふふふ」
―――
――
―
律(こっちの世界には、もう居ないんだよな……)
律(ムギが居たら、私たちの軽音部も、もうちょっと良くなったかな)
律(……唯もムギも居ないんじゃ、上手くいくはずないのか)
律(で、でも! こっちはこっちで独立した世界だし、
あっちの軽音部メンバーとこっちのメンバーは、名前や外見同じでも人格は全く違うし!!)
律(……………)
律(……うまくいかねーな、何もかも)
1日中部屋でダラダラするつもりだった。
こんな日くらい、喧騒から逃れて一人で音楽聞きながら漫画でも読むのが、いいかな、と思ったりもした。
けれど、頭の中では、憂ちゃんの件に関する自己嫌悪や、梓や澪のこと、
そしてあっちの世界のことなんかがグルグル回って、何も考えられない。
しかし、寝るとまたあの夢を見てしまって、頭の中がさらにグチャグチャになってしまう。
……琴吹紬、もといムギ。
そういえば、私はムギに一度だけ会ったことがある。
私が初めてあっちの世界に、文字通り首を突っ込んだ時。
彼女は、言った。私は、あっちの世界のムギだと。
そして、彼女は2つの世界が存在することを、知っている。
今日は雨、から取ったよ!
何か、というのは、夢や2つの世界の仕組み、そしてあわよくば、どうやったら私たちの世界を「良い」ものへと組みかえていけるか。
最後の望みは、冷静に考えれば詮のないものということは、誰でもわかる。
もしこっちの世界とあっちの世界が完全に独立したものであれば、こっちで私が幸せだろうがどうだろうが、それは一切関係のないことだ。
律(……それでも)
今の状況は、どうにかして打破しなければならない。
しかし、私の頭に思い浮かぶ限りでは、突破口は見当たらない。
だんだんと、夕闇が漆黒に変化していくように、わたしたちの状況は悪くなっていく。
律(……何か、手掛かりが見つかるかも知れない)
もう二度と行かないと誓ったあの世界に、もう1度行く必要があるのかも知れない。
聡「おねえちゃーん」
聡「お友達が来てるよー、珍しいね、澪さんじゃないみたいだし」
律「澪じゃない? じゃ、誰が……」
聡「中野梓って人だよー」
律「!? 梓、が……」
梓「律先輩、朝早くすみません」
律「……梓、何故あたしの家を知ってるんだ?」
梓「澪先輩に聞きました」
律「そっか、まぁそれは良いけど……」
梓「……………」
律「………………」
律「…………(気まずい……)」
律「あ、あがってく?」
梓「…………はい」
律「……はい、お茶。麦茶だけど」
梓「………ありがとう、ございます」
律「…………」
梓「………………」
律「……昨日は、ごめん」
梓「………いえ、律先輩の、言った通りですから」
律「………あたしは、ただ逃げてただけだからな」
梓「……でも、同情されるのも、辛いと思います」
律「………あたしもそう思ってた。けど、あの状況は訳が違う」
律「?」
梓「だからと言って、律先輩に、身を呈して憂を守る覚悟はありますか?」
律「そ、それは……」
梓「憂の代わりに、肉体も精神も、ズタズタに裂かれて、蹂躙されて、これ以上ないくらいの苦痛を引き受けられますか?」
律「………」
梓「……そういうことです。私たちは、私たちのできることを淡々とやるしかないんです」
律「でも、そんなの間違ってるだろ!」
梓「じゃ、先輩が守ってくださいよ! 手段なんて、いくらでもあるでしょう!!
自分の手を汚さずに、相手を守るなんてこと、出来る訳ないんです!
みんな、手頃な言い訳見つけて、善人ぶって保身に走るんだ!
先輩は、単なる偽善者です。いや、偽善さえ為せていない、傍観者です!!」
律「………っ……」
梓「…………………」
律「…………」
律「……………」
梓「明日の午後8時までに、音楽準備室のあの穴を塞いで下さい、もう誰も入れないように、そして、出られないように」
律「!?」
梓「それだけです。それでは、失礼します」
律「ちょっと待て梓! お前、何する気だ? 何故、穴のことを知ってる?」
梓「……それは、律先輩が穴を知っている理由と、同じだと思いますよ。それでは」
律「待て、梓!!」
律「………………」
律「…………」
梓は、あの穴のことを知っている。
まぁ、夢はそのことを暗に示していた訳だから、それにはさして大きな驚きもない。
しかし、疑問点はいくつか存在する。
一番大きな疑問は、何故梓は私に穴を塞ぐことを依頼したのか。
これ対しては、様々な答えが考えられるが、一番有力なのは……
律(唯パターン、か……こりゃ、まずいかもな…)
そして、2つ目の疑問は、何故私が穴の存在を知っていることを承知していたのか。
……これは、わからないな。何故なんだろ。
私は、梓に対して夢のことは一言も話してない、はずだ。
他にも様々な疑問は存在するが、多くはわからないことだらけだ。
今すべきことは……唯の時と同じことか。
律「行きますか。気は進まないけれども」
色んな部活が練習こそしているものの、平日より人はまばら。
簡単に部室へは行くことが出来た。
律(梓に電話しても、つながらないし)
律(メールも送れない)
律(……もう既に外の世界に行ってるなら、繋がらなくて当然、なのかも知れない)
律(………唯の時は繋がったんだけどな…けどあれは、同じ世界に居たからな……仕組みがよくわからん)
律(……じゃ、行きますか)
今回の目的は、梓が梓を殺さないようにすること……ですか。
前回とほぼ同じ。いや、前回は唯の殺人をサポートしようとしてたんだけどさ、当初は。
それにしても、どうやってあっちの世界の梓を守ろうか。
また説得か? 前回の学祭ライブみたいには行かないぞ?
やっぱここは、梓を自分の部屋に監禁でもして、説得でもするべきだったか。
……でも、あまりにも梓の意図が不明確すぎる。
そんなにあいつ、そんなに不幸だったか? 異なる世界に行きたくなるほどに?
律(……あー、もうわかんねーわかんねー、とことんわかんねー!!)
律(……行ってから考えるしかないか)
それに、私自身も、色々なことを知りたい。別世界のこと、向こうのムギのこと、そして、幸せな生活の「ヒント」のようなもの。
音楽準備室のドアを開く。
3ヶ月前と、全く変わらない状況。
古ぼけた楽器や段ボール類。埃っぽい臭いが鼻をつく。
律(変わんねぇな、ここも……)
律(確か穴は……お、あったあった)
部屋の隅に存在する、穴。
そこからは、微小な光が漏れており、穴の輪郭が浮かび上がっている。
しかし、注意して見ないと絶対に分からないであろう。それくらい、微小な光だ。
そして、今回、穴は塞がれていなかった。
少々のためらいはあったが、意を決して、穴へと向かう。
律「ひぇ!! 」
突然の声に驚いて、頭を穴の淵に思い切りぶつけてしまう。
律「い、痛っ、だ、だ、誰?」
?「誰って、私ですよ、私」
穴に入る前の準備室(つまり、私たちの世界の準備室)にて、私はその人物と対面した。
?「久しぶりですね、りっちゃん」
律「……ム、ムギ、さん?」
紬「ムギって呼んで下さい。その方が自然じゃないかしら」
薄暗くても、その顔ははっきりと拝むことが出来た。
ブロンドと白髪の中間色を持つ髪、白い肌、綺麗な顔立ち、少々太い眉。
それは、一時期新聞やニュースでで何度も何度も見た、あの殺された琴吹紬の顔と、全く同じだった。
憂は見てるのか?
いや、見てたとしてもこっちの世界の唯が大事なだけか。
律「……………こうして会うの、2回目ですよね、ムギさ……じゃなくて、ムギ」
紬「えぇ、そうね。2回目ね。毎日会ってるような気もするけれど、2回目ね」
律「……まぁ、それは良いんだけど。んでもって、」
紬「梓ちゃんのことかしら?」
律「……エスパーかい、あんたは」
紬「ふふふ、エスパーよ、私は」
律(どうにもやりづらい、この人は)
律「で、何で知ってるの? そのこと?」
紬「知りたい、りっちゃん?」
律「そりゃ知りたいよ。その為にこっちに来たんだから」
紬「じゃ、条件があるわ」
紬「あなたたちの世界のことについて、教えて欲しいの」
律「……………べ、別にいいけどさ」
紬「交渉成立ね。じゃ、こっちの部室に来てくれる?」
また目にする、こっちの部室。作りは私たちの世界の部室と全く同じなのだが、細部は完全に違う。
私のドラムはあんなに立派じゃないし、落書きで一杯のホワイトボードもない。
5人掛けの机の上には、ティーセットが置いてあって。
ご丁寧にカップが二つ置いてあるのは、私の分とムギの分ってことだろう。
極めつけには、ケーキまである。ここ本当に、軽音楽部の部室なのか。
紬「お茶をどうぞ」
律「あ、ありがと……」
紬「ショートケーキとモンブラン、どっちがいいかしら?」
律「じゃあ、ショートケーキでお願いします」
紬「どうぞ」
紬「美味しい?」
律「うん、何か落ち着いた……」
紬「良かった。何かりっちゃん、焦ってるみたいだったから」
律「………緊張が、スッと抜けてくような、そんな感じ」
紬「りっちゃん達の部室にも、お茶は常備しといたほうがいいわよ」
律「帰ったら、澪と相談してみるよ」
紬「ケーキも召し上がれ」
律「はい、では遠慮なく……って、ちょっとちょっと、ムギさんムギさん」
紬「ムギって呼んでよ」
律「……ムギ。情報交換をするって言ってなかったっけ?」
紬「そうだったかしら?」
律(やっぱりやり辛い……)
律「へ? そ、そうなん?」
紬「そう。だから、他の軽音部メンバーに見つかる心配は、ないのよ」
律「……そっか、それは良かった。一つ、心配ごとが減ったよ」
紬「そして、あなたたちの世界の人間は、あなたと梓ちゃんがこっちに居る」
律「……やっぱり梓はこっちに居るんだ。で、何でムギがそれを知ってるの?」
紬「私が梓ちゃんをかくまってるからよ」
律「…………もう一杯お茶貰っていいか?」
紬「ええ、どうぞ」
律「………………今、かくまってるって言った?」
紬「えぇ、ここ2,3週間、ずっとかくまってるわ」
律「……それは、『私たちの世界の梓を』ってことだよな?」
紬「そう。『あなたたちの世界の梓ちゃん』よ」
律「……これまた難儀な話になって参りましたね…」
律「……いや、大丈夫。こういうの慣れっこだから」
伊達に3ヶ月前の事件を切り抜けた訳ではない。
でも、やはり混乱しているものは混乱しているのだが。
律「……聞かせてくれる? 詳細を」
紬「わかったわ。少し長くなるけれど」
そしてムギは、粛々と語り始めた。
・・・・・・・・・
舞台は、3週間前。ムギたちの世界の、軽音部室。
紬(……また部室一番乗り…)
紬(このルーティン、まだ止められないわ……)
紬(癖になってるのかも知れないけど、けどお茶とかお菓子の用意もしなきゃいけないし)
紬(……まだ怖いのかしらね、あの穴が)
紬(でも、この3カ月間、誰一人として来てないってことは、もう誰も来ないんじゃないかしら……)
紬(でも、仮に誰かがあっち側から来たら、他の部員のみんなは驚いちゃうだろうし……)
紬(穴を塞いだら良いんだろうけど、塞ぐと言っても、限界があるわ)
紬(それに……)
瞬間、準備室から、物音。
紬「!?」
?「……うわ、全く同じ」
紬「ちょっと待って。動かないで」
?「え? う、うわ!!」
私は、いきなり出てきた誰かさんを、準備室へ再びおしこんだ。そして、私も準備室へと入り、扉を閉める。
紬「頼むから、あと3時間くらい、私が次に良いよって言うまで、ここから出ないで」
?「………………うぅ……」
紬「あ、ごめんなさい、びっくりさせちゃったみたいで……って、梓ちゃん?」
梓「…………あなたは………」
紬「私が誰か、分かる?」
梓「……………いえ……」
紬(こっちの梓ちゃんじゃない……『あっちの』梓ちゃんって訳ね…)
紬「私が次良いよって言うまで、ここから出ないで、じっとしてて。もしくは、あっちの世界に帰って頂戴」
梓「い、いえ……でも、私、やりたいことが」
ねーりっちゃーん、むぎちゃんまだ来てないみたいだよ?」
?「そりゃ珍しいな……いっつも先に来てるのに」
紬「りっちゃんと唯ちゃんが来ちゃったわ。帰るか、大人しくしてて頂戴」
梓「……は、はい……」
・・・・・・・・・・・・・・・
紬「こんな感じで、私と梓ちゃんは出会ったの」
律「ムギ……こんな感じの、臨場感溢れる台詞を、交互に語ってくのか」
紬「えぇ、そうよ。時間もあるし、良いと思わない?」
律「……出来れば、簡潔に話して欲しいんだけど。色々と考えなきゃならないこともあるから」
紬「うーん……じゃ、大切なところだけ台詞で話して、他は要約して話すわね」
律「そうして頂けるとありがたいっす」
ムギと私の世界の梓は、こんな感じで出会った。
梓は結局3時間部室に待機していた。
部活が終わって唯や(私じゃない)律等の他のメンバーが帰ってから、ムギが梓に声をかけるまで、ずっと準備室で待っていた。
ムギは梓に、真っ先にこちらの世界へ来た動機を聞いた。
これは、別の世界のムギがムギを殺そうとしたように、梓もこっちの世界の梓を殺しにきたのか、確認したかった為だ。
そして、どうやら違うらしい。梓は、ただ「逃げてきた」と言った。
誰から逃げてきたのか? その時点で、梓はムギにそのことの詳細について告げなかった。
ただ「あっちの世界から逃げてきた」と言った。
「これからどうするつもりなの?」
と、ムギは梓に問う。
「決めてません……ただ、あっちには居たくなかったんです」
と、梓はムギに返す。
とは言うものの、女子高生が一人でこっちの世界に居続けられる訳もなく。
そんなことは、法治国家日本でも危険極まりない話で。
最初ムギは自分の世界へ帰ることを強く梓に勧めたが、梓は聞く耳を持たない。
使用人や親には、遠くから来た友人が、はるばる遊びに来た、ということにしておいた。
認められるか、ムギは内心ドキドキだったが、変なところで放任で自由なムギの両親は、あっけなくそれを認めた。
そこから、ムギと梓の共同生活が始まる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
律「共同生活って、何だよ?」
紬「私と梓ちゃん、今日の今まで一緒に住んでるの」
律「ふーん……って、マジで?」
紬「本当よ。嘘はついてないわ」
律「あ、それと、何で自分が別の世界の自分が自分を殺そうとしてた、って断言できたの?
もう一人の自分とも会って、死闘でも繰り広げた訳?」
紬「いえ。ただ……、夢を見たから」
律「例の、夢ですか」
紬「その話についても、いずれ話さなきゃならない時が来ると思う」
律「……そうだな。ムギとは、まだ話さなきゃならない話が一杯残ってる」
紬「そして、梓ちゃん関連の話は、これでほとんど終わり」
律「………3週間前から、梓とムギはずっと一緒に共同生活を送ってました……って待てよ。
それなら、梓の親はどうなるんだ?」
紬「それは………」
律「?」
紬「……………………」
律「親が、居ない、とか?」
紬「その方がまだ良かったかもしれなかったわね」
律「………まさか」
紬「ねぇりっちゃん。私ね、最近思うの」
紬「何で、私たちの軽音部メンバーは、こんなに幸せなんだろうって。
毎日楽しく部活して、みんな仲好しで、誰一人欠けることもなく、大した努力をすることもなく、それを保つことが出来る。
仮に近い将来、物凄い不幸が私たちを襲ってくるかも知れない。だけど、今に限って言えば、幸せの渦中に居ると思う。
いじめられもしないし、違う世界に行きたいとも思わない。クラスで孤立もしていないし、引きこもってもいない。
人に殺されないし、殺す必要性もない。身内が人殺しでもない。
まるで満月のような幸運。それが、私たちなの」
律「…………」
紬「これはあくまでも私の考えなんだけど」
紬「夢で見る世界、即ち私たちお互いの世界は、それぞれの世界の『可能性』だと思うの」
律「かのう……せい?」
紬「えぇ。こうあったかも知れない、っていう『可能性』。
私たちはどこかで道を踏み外したかも知れない。けれど、物凄く上手に世界を渡って行くかも知れない。
相互の世界の舞台も人間も同じ。だけど、それぞれの境遇は全然違う。
おかしいよわよね……あっちの世界の私なんて、目も当てられないくらい、ひどいいじめっ子だったのよ?」
律「……はぁ。そうなんだ」
紬「兎に角、最低限の情報は話したつもり。次は私がりっちゃんに聞く番」
律「……わかった。私の世界のことで、話しといた方がいいかな、ってこと全て話すよ」
ほう。
前回疑問が残った点だが。
唯の間違いじゃないな?
となると唯が殺したのか、唯が殺したにしても何かしら許容される理由があるのか、とか考えるんだが…。
夢を見てたムギも、元の世界に悩みや不満があったんだとすれば…。
まあ、こっちの世界は誰も詳しくムギのこと知らなかったからな…。
唯がいじめられてたのにも関わってたのかな。
現在の軽音部メンバーは、私、澪、梓、憂ちゃん。
最初は唯も加入する予定だったが、軽音部結成1週間後に、琴吹紬殺害容疑で逮捕された。
唯は容疑を認めている。
唯の裁判は、もうそろそろ行われるらしく、憂ちゃんは拘置所に週一で面会に行っている。
それが原因で、憂はひどいいじめを受けるようになった。
殺人者の妹、みたいな感じで。
唯が1年の時に、ジャズ研とクラスでいじめられて登校拒否になったというのは、案外有名な事実だったらしく(私は知らなかった)、
そのいじめられっ子の妹という事実が、さらに憂のいじめを加速することになった。
そして、そのいじめの勢いは緩まらず、今に至る。
澪は、文芸部を辞めた(と、つい最近聞いた)。
その他は、いつもと変わらないように見える。
それにしても、文芸部辞めたからって私のクラスに来るってことは、あいつも昼飯食べる奴居ないのかな?
梓は、謎が多い。
たまたま夢関連でしつこく誘ったら、外バンと掛け持ち可という条件でOKをくれた。
最初は週に1回来れば良い方だったが、この頃は毎日練習には来ている。ただし、外バンとは上手く行ってないように思える。
口数は多くないが、憂ちゃんとは仲が良いみたいだ。
紬「…………どこからコメントしていいのか、ちょっとわからないけれど…」
律「いや、いいよ。コメントとかは。こんな感じのことしか話せないけど、他に聞きたいこととかある?」
紬「梓ちゃんの両親について、何か知ってることはある?」
律「残念ながら、ないんだな。梓、あんまあたしと話してくれないんだ」
紬「……そっか。それは残念」
律「梓の両親って、恐らく……」
紬「えぇ。梓ちゃんの体のところどころに、痣が散見されるわ。きっと、梓ちゃんはそこから逃げてきたのでしょうね。
毎日私の家からそっちの学校に通ってるわ」
律「…………そう、なんだ」
紬「色んなこと話しすぎたわね。お互い、頭整理する時間が必要かも知れない」
律「……そうだな。ちょっと、その辺りぶらぶらしてくる」
問題は殺されたムギ自身が何故実際にもう一人のムギを殺して入れ替わらなかったか、か
あまり出歩かない方が安全だと思うわ」
律「はいはーい。でも、何か外歩きたいなー、と思って」
紬「……わかったわ。で、りっちゃんがこっちにきた目的って、一体なんなの?」
律「あたし? まぁ……梓が梓を殺さないように、説得しに来た」
紬「!?」
律「てな訳で、ムギ、ちょっと梓見ておいて下さいな」
紬「ちょ、ちょっとりっちゃん、詳しく」
律「ごめん、ちょっと色んな話聞いて頭ごちゃごちゃだから、少し整理したいんだ。午後6時に校門前で、また会おうぜ」
ひとまず、いつものハンバーガー屋でも入りますか
(ハンバーガー屋って呼称に違和感を感じるが、これ以外のどの呼称もおかしいと感じるから)。
さて。
モノクロの冬道を歩きながら、疲れた頭をフル稼働させる。
本当に色んな情報を聞いたが、最も重要なポイントは、
・私たちの世界の梓は、両親に虐待されている確率が高い
だろう。だとしたら、これが梓が梓を殺す強い動機になり得る。
・こっちの世界のムギは、別世界のムギが自分を殺そうとしていることに気付いていた。
すなわち、
・こっちの世界のムギは、「夢」で別世界のムギが自分を殺そうとしていることに気が付いた。
(夢の中で、別世界のムギが自分を殺す計画を練っている、もしくは計画を練っていなくとも
殺そうとしていることに気がついた)
もしくは、
・実際にこちらの世界で、ムギはムギに殺されかけた
ここからさらに情報を抽出すると、
・こっちの世界の人間も、私たちの世界の夢を見る
………だからどうって訳でもないけれど。
ということは、こっちの世界の私も、私の夢を見てるのかな?
いじめっこの殺人未遂者だったって設定にしても帳尻が合わん
何て考えてる内に、例のハンバーガー屋にたどり着く。
取り敢えず、ポテトのSとハンバーガーを仏頂面の店員に注文し、席につこうとする。
?「あー、律先輩じゃないですか」
こんな時に限って、災いってものはやってくるんだよな。
完全に目があってしまった。
隅の席に座って談笑していた、憂ちゃんと……名前忘れた、鈴木何とかさん。
純「あー、律先輩、また私の名前忘れましたね?」
律「いやいや、別にそういう訳じゃないんだけど」
憂「あれ? 律さん、お姉ちゃん達と軽井沢に行ったんじゃなかったんですか?」
律「い、いや、ちょっと私今お金が無くってさ。だから、急遽行けなくなっちゃって……」
この糞寒い時期に軽井沢って……お宅のお姉ちゃんは何考えてるんですか、とは言わない。
多分ノリだろう。中学時代の私なら、やりかねない。
憂「どうぞ、ここ座って下さい」
律「え、いいの?」
純「勿論です! むしろ律先輩と話せるなんて、光栄中の光栄です!」
と、また流されるがままに座ってしまった。前回も、同じような経験をした気がする。
憂「律さん、少し顔色悪くないですか? 少し痩せたみたいですし……風邪ですか?」
律「あ、そ、そうそう、ちょっと風邪っぽくてさ。まったく、冬風邪は長引いて駄目だよねー、面倒だよねー」
因みに、風邪でも何でもない。元気そのものだ。……私は、素で不健康ってことですか。
憂「お姉ちゃんも、この前風邪引いちゃって、その時看病大変だったんです」
純「そうそう、憂ったら、休み時間の度に、お姉ちゃん大丈夫かな、寂しくしてないかな、
氷枕溶けてないかな、お腹空かせてないかな、って、まるで赤ん
坊が熱出したお母さんみたいに、心配するんですよ」
憂「だって、お姉ちゃんが風邪引いたんだよ? 心配になるのも仕方ないよ」
純「それだって、憂のシスコンぶりは半端じゃないからな……」
純「………最早、痛い子を超えているよこの子……」
と、付け入る隙のないトークが展開されていく。
少しだけ気まずい。ただ、ポテトを頬張るくらいしかやることがない。
憂「律さん」
律「は、はい、なんでございませう」
憂「軽音部でお姉ちゃん、元気にやってますか?」
律「う、うん! そりゃもう、いつも通り元気にやってるよ! 元気過ぎて、たまにあたしもついていけないくらいだよ!」
(夢の中で見てる唯なら、そんな感じだよな……拘置所に居る唯じゃなくて)
憂「そうですか……それは良かった…」
憂ちゃんは、目を背けたくなる程眩しい笑顔を私に向けた。
憂「お姉ちゃん、たまにみんなに合わせられないことがあるから、クラスや軽音部の皆さんと上手くやってるか心配で……」
律「そうなんだ……憂ちゃんは、姉思いなんだな…」
私は、何とかさんと顔を見合わせて、苦笑いする。
しかし、その苦笑いは、決して悪意のこもったものではなくて。
むしろ、憂ちゃんの発言に対する「お決まり」の反応というか、そんな感じだ。
憂ちゃんが本心からそう思ってるのは、憂ちゃんの無垢で素朴な反応を見ていれば分かるから。
そして、そんな憂ちゃんは、可愛い。いや、変な意味じゃなく。
私は、聡のこと、憂ちゃんの唯に対する思い程深く思えないんだろうな……悲しいことではありますが。
ふと、素朴な疑問が頭に浮かぶ。
律「ねぇ、憂ちゃん」
憂「何ですか?」
律「今からの質問は、あくまでも仮の話だから、そんなに重く考えないでね。
ちょっと同じ質問を文芸部の奴に頼まれててさ。作品の構想に使うらしくて」
憂「?」
あまりよろしくはない質問だ。けれど、この質問は、今後「憂ちゃん」に接していく鍵となるかも知れない。
律「もし、唯が殺人を犯して、逮捕されて、刑務所に入れられるとするだろ。
んで、一審でも二審でも最高裁で有罪受けて、死刑判決受けるとする」
律「あ、ごめんごめん、あくまでも『例え』の話だから。こんなこと唯がしないの、あたしが一番よく知ってる」
憂「………」
あたしが一番よく知ってる、だって。なんて空虚で、嘘に満ちた言葉。
律「そしたらさ、憂ちゃんは、どうする?」
憂「……………」
憂ちゃんは、視線を下に落としている。先程のきらきらと輝いた顔は、
その横で、何とかさんが私の方を怖い顔して見ている。少し……いや、大分悪い質問してしまったかな、と思う。
律「……………ごめん、抽象的だし、かなり酷い質問だよね」
憂「……いえ、良いんです。ただ、そんなことを考えると、何か、その、」
一瞬の沈黙。
憂「………何か、悲しくなるんです。おかしいですよね」
憂「でも」
私の言葉をさえぎるように、憂ちゃんは言う。涙声で、でも、はっきりとした声で。
憂「いつ、どこで、どんなことがあっても、お姉ちゃんが何をしたとしても、お姉ちゃんは私のお姉ちゃんです」
憂「世界中の人がお姉ちゃんを許さなくても、それ程ひどいことをお姉ちゃんがしたとしても、私はお姉ちゃんを許します。
お姉ちゃんが酷い目に遭っていたとしたら、私はどんなことをしたとしてもそれを止めたいと思います。
逆に、お姉ちゃんがどんなに酷いことをしても、私はそれをお姉ちゃんと一緒に償っていきたい。
何故なら、私はお姉ちゃんの妹で、お姉ちゃんは私の妹だから」
涙声で、鼻水声。それなのに、笑顔。
無垢で、罪のない、笑顔。
全てを許し、全幅の信頼を置いていることの、証。
それに、私、お姉ちゃんの為なら、どんなことでも、頑張れますから。
あの時も憂ちゃんは、笑顔でそう言った。言い切った。
律「………わかった」
席を立つ。
律「ごめんな、憂ちゃん」
そして、歩き出す。
後ろで憂ちゃんが何か言っているのが聞こえるが、振りむかない。
ただ、手だけヒラヒラと振ってみる。
私は、何度も気づかされてきた。
唯に、梓に、こっちの軽音部のみんなに。
そのたびに、忘れてきた。何を気付かされたかを。
そして、今。また思い出した。私が、何に気付いたかを。
律「……もしもし、梓か」
梓「………………」
律「今から、会えないかな。どこかで」
梓「……嫌です」
律「………そっか」
梓「……御用件は、何ですか。私は、入口を塞ぐことだけお願いしたはずですが」
律「いやー、ただ単に、梓と話したいなー、と思ってさ」
梓「………………嫌です。もうあなたと話すことは、ありません」
律「………まだあたしたちには、頑張れる余白みたいなものが、残ってるんじゃない?」
梓「…………流石、傍観者ですね。まだそんな白々しい台詞が吐けるんですか」
律「……………もう、あたしは傍観者にはならないから」
律「だから、これから一緒に頑張って、幸せに」
と、私の台詞を遮るかのように、電話は切れた。
どうやらあちらに止まる気は、ないらしい。
律(……前と、全く同じパターンだよ…)
律(ま、恐怖のメール送られてきてなかっただけ、まだマシか……)
律(はて、どうしたものか………)
律(取り敢えず、ムギに会いに行こう。話はそれからだ)
桜高の制服にコートを羽織って、可愛い手袋まではめている。
私はと言えば……制服のみ、という、何とも寒々しい格好。制服のボタンは開けっ放しだし。そりゃ、寒くもなるわ。
律「おっすムギ。6時って言ったのに、随分早いね」
紬「えぇ。やることもなかったから、あれからずっと部室に居て、今丁度来たところなの」
律「……そっか。で、どうする? 立話も何だから、どっか店でも入る?」
紬「いえ、私の家にご招待するわ」
律「え、マジで? 悪くないのかよ、そこまでしてもらって」
紬「だって、りっちゃんと一緒に町に居て、誰か知りあいに見られたら、説明するの面倒でしょ?
ましてや、憂ちゃんや純ちゃんに見られたら、困ったことになっちゃうわ」
律「……………」
けいおん部以外は気付かなくなるって。
律「あそこの車って……うお、これまた随分大きくて長い車……なんだっけ、こういうの…リム……リムなんちゃらじゃん!」
紬「行きましょ」
そして、ムギの家に車に乗り(もんのすごく快適だった、逆に快適すぎて落ち着かなかった)、20分程度。
車から降ろされ、ムギの家……豪邸に到着。
敢えてその外装や内装には言及しないけれど……うん、今シリアスな状況に居なかったら、何十分でも語り続けてるだろうな。
わかりやすく言えば、私の家とは格が三段、いやそれ以上に違った。
そして、ムギの部屋へ通される。
ここも……うん、もうやめておこう。羨みは悪い感情よ、何も生み出さないわよって、澪の友人の生徒会役員がいつか言ってた気がするから。
ムギのベッドに埋もれながら(ふかふか過ぎて1mくらい沈みこむかと思った)、取り敢えず口を開くことにする。
律「ねぇムギ、梓ってこの屋敷に居るんだろ?」
紬「あ! そうね。りっちゃん、梓ちゃんと会いたいんでしょ?」
律「ご名答です、お嬢様。それにしても、よくわかったな……」
律「……そういや、そうだったね」
紬「ちょっと呼んでくるわ。この部屋の丁度隣の部屋が、客室なの」
と言ってから、ムギは部屋から出ていった。
ひとまず、梓と会ったら、どんなこと話そうか。
私が何を言っても、説教臭くなってしまうだろう。
そんな言葉に、人の心は動かされない。
私と唯の心が、軽音部の演奏によって動かされたように、大事な局面で、人の心は、言葉によっては動かない。
ならば、どうやって思いとどまらせれば良いんだろう。
どんな人間にも、幸せを追求する権利がある。
それは人を殺してでも奪い取って良いものかは甚だ疑問だが、2つの世界を上手く活用すれば、完全に自分を「幸せな世界」へとシフトさせることは、可能
だ。
しかし、それが本人にとって、本当に幸せな世界なのだろうか。
他人の居場所を奪ってまで、他人に成り変わってまで、手に入れた「居場所」で、人は本当に幸せになれるのだろうか。
ドアが騒々しく開けられる。
ムギが、柄にもなく大きな声を出している……これが意味するのは。
律「ど、どした」
紬「梓ちゃんが!!」
背筋がゾクリとした。体中から、力が抜けていく。
嫌な予感しか、しない。
紬「………梓ちゃんが……部屋に居ない」
何故か、少しだけ安堵する。
一瞬、私の脳内では、梓が血まみれのベッドの上で息絶えている映像が流れたからだ。
そして、仮に今会ったとしても、何を話せば良いかはわからない。そういう種類の安堵でもある。
しかし、状況が悪くなったのに、変わりはない。
いや、これが意味するのって、もう既に梓が、事に及び始めてるってことなのか?
紬「ど、どうしよう、どうしよう、りっちゃん?」
律「取り敢えず、執事とか家の人に、梓がいつ出てったか、分かる人は居ないの?」
紬「えぇ、後でみんなに話を聞いて回ってみる! でも、どうして私に何も言わずに……」
律「……………ねぇ、ムギ」
紬「な、何」
律「今、『ここの世界の梓』って、軽井沢へ旅行に行ってるんだよね?」
紬「えぇ、そうよ。今日の朝から、明日の夜までは戻らないわ」
律「そのこと、梓は知ってるの?」
律「? だとしたら、少しおかしいな……」
紬「どうして?」
律「だって、梓は梓を殺す為に、こっちに来た訳だからさ。
でも、『ここの世界の梓』は、まだ帰ってきては居ない……」
紬「……そのことを、詳しく聞きたかったの。何故、りっちゃんは、
梓ちゃんは梓ちゃんを殺そうとしている、と思うの?」
律「いや、梓は幸せになりたいって言ってたからな。それって、こっちの梓と入れ替わって幸せな生活を送るってことと同じ意味じゃん?
それに、唯だってムギだって、そういう思考に及んだからさ」
紬「梓ちゃんはそんなことしないと思うわ。あの子に、そんなことが出来る訳ないもの。
3週間、私は梓ちゃんと一緒に生活してるのよ。だから、わかる」
律「私は、こっちの世界の自分を殺そうと思ってた」
紬「!?」
律「自分だけ報われないその気分。どうして自分だけ。あっちの世界の自分は、見るからに毎日を楽しんでる。自分とは雲泥の差。
それに対する、羨望、嫉妬、嫉妬、嫉妬、憎悪、そして、殺意」
紬「…………」
『自分』を殺して、新しい『自分』を手にいれたくなる、その心理が、さ」
紬「……で、でも………私には…信じられない」
律「あたしだって信じられないし、信じたくもない。けれど……多分、そんな心理なんだと思う」
紬「……………わかったわ。私たちの世界の梓ちゃんを、家のものに見張らせましょう。
これで、仮に梓ちゃんが梓ちゃんを殺そうとしていたとしても、成功することはないでしょう」
律「ありがとムギ………って、それ本気で言ってるの?」
紬「えぇ。私は嘘は言わないわ」
律「……うん、ありがと。これで後は、梓をここで待つだけ……で良いのかな?」
紬「そうね……りっちゃんが動き回るだけで、リスクがあるし」
律「……………了解。じゃ、今夜は泊らせてもらっても良いのかな?」
紬「えぇ。勿論よ」
そして、それから。
それから、どうなるのか。
―
――
―――
律「おーっす、梓! 何でそんなとこ座ってる訳よ! 風邪引くぞ!」
梓「あ、律先輩。ちょっと、考え事してたんです」
律「かんがえごと?」
梓「はい。もし、私が軽音部に入ってなかったら、一体どうなってたんだろう、って」
律「……旅行先で考えるようなことか。折角ムギが行って来いって、宿まで提供してくれたんだから。
余計なこと考えずに、楽しもうぜ」
梓「………わかってるんです。わかってるんですけど。
けれど、どうしても考えてしまって」
唯「あずにゃんは、どこへ行ってもあずにゃんだよ」
律・梓「うわ、びっくりした!!」
唯「へへへ、さっき来たんだよ」
唯「月が綺麗だね」
律「……月なんて気にする前に、まず寒くないのかよ、あなたさんがた」
梓「………律先輩、唯先輩」
律「ん」
唯「何? あずにゃん」
梓「私、軽音部に入って本当に良かったと思ってます」
律「何をいまさらー、夜だからって恥ずかしいこと言っていいだなんて、
誰が言った?、このこのー!」
梓「べ、別に恥ずかしいこととかじゃなくて、本当のことを言っただけです!」
唯「わたしなんて、軽音部のけの字も入学前は考えてなかったからねー」
唯「そう考えると、奇跡だよ! まさしく!」
律「まぁ、唯みたいな奴が入ってくるとは、あたしも夢にも考えてなかったよ」
律「確かに、それは言えてるな」
唯「あずにゃんみたいな、かわいい後輩が入ってくるなんて、わたしも思ってなかったし」
律「……あれ? 梓、今日は唯が抱きついても怒らないんだ?」
梓「………だって、今日は旅行ですもん」
唯「そうだねー、旅行だもんね」
律「……そっか、旅行だもんな! よっしゃ、ちょっくら澪起こしてくる!」
唯「ムギちゃんも来れればよかったのになー」
梓「本当ですね……残念です」
律「ほら澪! 起きろ! 真冬の怪談大会やるぞ!!」
澪「……うーん、うっさいな、今何時だとー」
律「うわ、澪後ろ、雪女!」
澪「うわぁ!!! やめてくれ、そういうの!!」
唯・梓「ははははは!」
――
―
ムギの家に一泊した、翌日。物凄くふかふかなベッドで目覚める。
寝ぼけ眼で、携帯の時計を見る。午前9時、ちょっと前。
随分静かな朝だった。そう言えば、昨日は疲れててあまり気にしなかったけれど、これ、梓が昨日まで寝ていたベッドなんだな。
梓は、昨夜は一体どこで寝ていたんだろう。そんなことを、少しだけ考えてみる。
それから。
ムギの部屋に行ってみると、ムギはもう居なかった。
机の上に、高級な便箋に書かれた置手紙が一枚。丁寧でケチのつけようのない字で、こう書かれていた。
「昨夜から今まで、私の世界の梓ちゃんの身には、何一つとして異常はありませんでした。
今日の午後5時に町に帰ってくるまで、引き続き見張りをお願いしています。
私は、ピアノのレッスンがある為、正午までは帰ってきません。
この家に居て頂いても、外出して頂いても結構ですが、くれぐれも気をつけて下さい」
この手紙に書いていることが本当なら、こっちの世界の梓の身は、今日は無事だ。
そして、私に勿論こちらの世界の扉を閉めるつもりもない。
そして、残る仕事は、梓を説得することのみ。
梓を無事、私の世界に連れて帰ることが出来れば、私の仕事は、終わる。
電話口に出ることは期待していなかったが、一応ダイアルしてみる。
今回は、10秒とせずに繋がった。
梓「もしもし」
律「……お、今回は出るの速いな」
梓「………で、要件は何ですか」
律「梓、お前と話がしたいんだ」
梓「……良いですよ」
律「え、良いの?」
意外だった。十中八九、拒否されると思っていた。
律「場所? ん、別に良いけどさ」
微かな違和感は感じた。だが、ここでは大してそれを気に留めることもなかった。
律「どこだ? その場所は」
梓「こっちの世界の、音楽室です」
律「音楽室ってことは……軽音部の部室ってことか?」
梓「はい。そこで、午前10時に、お会いしましょう」
律「……案外すぐなんだな。わかった」
と、電話が切れる。
必要なことしか話さない子だな。
唯と話した時は、もっと脅し文句とか色々余計なことも付け加えてきてたっけ。
何と言うか、実務的というか、無感情というか。
梓に促されるがままに、桜高へと向かう(桜高までは、またムギの家のリムジンで送ってもらった)。
日曜日からかなのか、土曜日よりもさらに人はまばらだ。
吹奏学部の練習の音と、ソフトボール部の練習の掛け声。
その他の音は、何も聞こえない。
校舎内も、足音一つしない。不気味な空間だ。
朝なのにもかかわらず、まるで夜の学校みたいだ。
自分の足音が、廊下に響く。自分の鼓動まで聞こえてくるみたいで。
何か、おかしい。
何かが、おかしい。
歯車が、上手く噛み合い過ぎている。
何故こんなにも苦労せず、すいすいと事が進む?
こっちの世界の梓の生命は保障されており、私は目的である梓と会うことが出来る。
それは、良い。不自然だが、納得出来る。
しかし、何故梓は、前日から出歩いていたんだ?
今日はこっちの世界の梓が居ないということが、分かっていたのに?
それならば、他の日、ありふれた平日にでも、普通に部室で待ち伏せして、殺して、違う世界に運んで、終了のはずだ。
なのに、何故梓は、昨夜外出したんだ?
そこには、誰も居ない。
昨日見た通りの光景。一厘たりとも変わっていない、夢で見慣れた光景。
中に足を踏み入れる。
頭の中で、違和感がグルグル回って。
目的は達成されているのに、何故こんなにもしっくりこないんだろう。
まるで、誰かの手の中で、踊らされているみたいな。
突如、鋭い痛み。
全身を駆け巡る、衝撃。
足から、崩れ落ちる。
……やばい、意識が。
視界に靄がかかる。何だ、これ。
「先輩」
梓の声だ。微妙に、視界の中に、梓の輪郭が見える。
ツインテールの日本人形。その手には………あれは、何だろう。
見覚えのないものが、握られているけれど。
「私は、傍観者なんかじゃない。先輩とは、違う人間です」
目を覚ます。まだ視界に靄がかかっている。
薄暗い。そして、まだ体が痛い。
起き上がるのも、やっとだ。
辺りを見渡す。ここは……軽音部の、部室だ。
私たちの世界の、軽音部の部室だ。
机と椅子、私のドラムセットしかない、殺風景な教室。
不自然なくらい奥行きがある、教室。
その不自然さは、物がないことに由来するものだろう。
梓が持っていたものは……、刃物ではなく、それでいて私を気絶されられるもの。
どこで手に入れたのか甚だ疑問だが、スタンガンかそれに類するものだろう。
スタンガンという単語を、初めて実際の文脈で使ったのだが、それに驚きもしない。
部室の時計が目に入る。
現在、午後5時半過ぎ。もう部室はすっかり暗くなりかけていた。
待てよ。
こっちは、「私の世界」の部室だ。
今まで私は、「あっちの世界」の部室に居たはずだ。
支援
そして、穴を探す。勿論、光はなく真っ暗なのだが、そこに何らかの「輪郭」は見いだせるはずだ。
しかし、そこに、輪郭こそ見いだせるものの、奥行きはまるでない。
ただの、穴の「形」がそこに残っている。
「……畜生」
何度もその穴の輪郭を蹴ってみる。ただし、それはもはや壁と化している。
とても重く、とても固い質量のある何かで、穴は塞がれていた。
蹴れども殴れども、ビクともしない。
……これは、もうあちらの世界には行けない、ということか。
更には……出入りが不可能、ということだから……
入れ替わりは、不可能、ということ。
でも、『あっちの世界の梓』は、ムギの家の人達によって見張られている。
即ち、安全の保障がある、ということ。
少なくとも、それは午後5時までは確実。
今は5時半だから、そんなに短時間で作業することは不可能……
なのに何故、穴は塞がれて居るんだ?
嫌な感触。小さな気持ち悪い虫、ヤスデやムカデやゴキブリが、私の身体をぞろぞろと這い上がっていくような感触。
そして、嫌な予感。
梓に会いに行く前の、あの疑問が、再び頭をよぎる。
何か、おかしい。
何かが、おかしい。
歯車が、上手く噛み合い過ぎている。
何故こんなにも苦労せず、すいすいと事が進む?
こっちの世界の梓の生命は保障されており、私は目的である梓と会うことが出来る。
それは、良い。不自然だが、納得出来る。
しかし、何故梓は、前日から出歩いていたんだ?
今日はこっちの世界の梓が居ないということが、分かっていたのに?
それならば、他の日、ありふれた平日にでも、普通に部室で待ち伏せして、殺して、違う世界に運んで、終了のはずだ。
なのに、何故梓は、昨夜外出したんだ?
なのに、何故梓は、昨夜外出したんだ?
なのに、何故梓は、………………
あっちの世界の梓と一緒に、澪や律(私じゃない方)、そして唯も旅行に行ってるよな。
ということは、
あ。
そうか。
準備室から、出る。
あの窓の方向に、目をやる。
3ヶ月前、生々しい血痕がついていた、あの窓に。
そして、また、あの窓の下には、ああ、ついてる、ついてる、壁とは明らかに馴染まない、
異質な、黒いものが、べったりと。
駄目だ。その下を見ては駄目だ。
分かってる。そんなこと、分かってるのに。
何故、歩く? 何故、窓の下を覗こうとする?
それを見ても、何も起こらない。何も変わらない。
変わることなんて、有り得ないのに。
その下に居るのが、憂ちゃんだってことは、もうわかっているのに。
ほら。
やっぱりね。
だから、やめといた方が良いって、言ったのに。
てかこれぶっちゃけりっちゃんのせいじゃ・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
死亡者、平沢憂。
行方不明者、中野梓。
犯人、不明。
容疑者、田井中律。後に証拠不十分で、釈放。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
聡「あ、澪ねえ、いらっしゃい」
澪「よぉ聡」
聡「……いつもごめんな。澪ねえだって、忙しいだろうに」
澪「いや、私は今は帰宅部だし、やることは勉強くらいしかないから」
澪「それより、律の調子、どうだ? 相変わらずか?」
聡「ああ……うん、いつも通りって感じ」
澪「わかった。ちょっとお邪魔するな」
聡「……いつも、バカ姉の為に、本当にごめん」
澪「いや、良いんだ。律と私は、唯一の幼馴染で、腐れ縁だしな
それに………」
聡「………」
律「…………」
澪「どうだ、調子は。良い感じか?」
律「……うん、ありがと」
澪「たまには、親御さんとか聡とも口利いてやれよ。心配してるぞ」
律「……………わかってる」
澪「…………そう言えば、クラス替えあったぞ。律と私、今年は同じクラスだった」
律「………」
澪「……………やっと同じクラスになれたな、律」
律「………………」
澪「…………………律、早く帰ってこいよ」
律「………ごめん」
澪「…………いや、こちらこそ、ごめん」
律「………」
律「…………あのさ、澪」
澪「……ん」
律「……………眠れないんだ」
澪「………」
律「……夢が、怖いんだ………」
澪「……………」
律「…………夢の中で、唯や、澪や、律や、ムギや、あたしが……
すっごい険悪なムードで……、見てて辛くなるくらい、なんだ………」
澪「……そ、そうなのか……………」
律「………唯はいっつも暗い顔してて、何かと言えばすぐ泣く。
律はなんだかイライラしてて、いつも噛みつくような喋り方をするんだ。
ムギはもうお茶もお菓子も出さなくなったし、
梓は、いつも場を取り持とうとオロオロして、律に怒鳴られたり、ムギに寂しい目を向けられたりしてる」
澪「………そっか………」
澪「……わ、私は……どうなってるんだ?」
律「………澪は、…………軽音部に来ることが稀になってきてる……
来たら来たで、律と喧嘩ばっかりしてるよ……」
澪「…………そっか」
澪「……でも律。それはただの悪い夢だ。現実じゃない。
だから、気にすんなよ。眠れない時は、親御さんから睡眠薬適量貰って、
眠れよ! どうしても眠れない時は、私に電話かけてきてくれても良いから、な?」
律「………ありがとう」
律「…………………」
律「………気をつけて………」
澪「?」
律「……いつ来るか……わからないから………」
澪「………来るって、何が?」
律「………………」
澪「……………?」
澪(鬱病って、やっぱり色々と大変なんだろうな……精神病んで、眠れないし、
寝ても酷い夢ばっかり見るみたいだし…)
澪(それにしても、ムギって誰なんだろうな。それに、なんで律の夢には憂ちゃんじゃなくて、憂の姉が出てくるんだ?)
澪(……まぁ、ゴタゴタあったからな。あの人達関連では)
澪(それが、トラウマになってるんだろうな……)
私も、高校入ってからちょっと冷たくしちゃった面もあるからな。
せめて、私だけには安心して話せるようにしてやんなきゃな)
澪(それにしても、もう4月なのに、まだ寒いな……コート着てくればよかった)
律「よぉ、澪!」
澪「え?」
部活やめた分前作より若干落ちてはいるが
ていうか今の友達より一度疎遠になった幼なじみとる辺り素敵過ぎる
律始めとする登場人物が、どこをどう選ぶかで、大分展開違ってくると思われるので。
本当はこの話だけで完結させる予定だったんだけど、書いてる途中に、あれもこれも詰め込みたくなったから、
ひとまずこの話は必要最低限のこと入れて、あとは次の話に入れたいと思う。
ダラダラと続いて申し訳ないけれど、お付き合い頂ける方は、次の作品でもお会いしましょう。
まず、こっちの世界(語り手の律が生活する世界)をAとして、
あっちの世界(語り手の律が夢に見る世界)をBとする。
話の終わり時点で確定している主なポイントは、
・梓Aは、憂Bを殺した。
・世界Aには、梓Aも梓Bも存在しない。
・世界Bには、梓Aと梓Bが存在する可能性がある。
・梓Aは、憂Aを助ける為に、憂Bを殺して、入れ替わらせようとした。
憂Aと憂Bは完全に入れ替わることは不可能だったから。
つまり、梓Aは、憂Aと憂Bが完全に入れ替わることは可能だと思っていたけれど、
実際に憂Aと憂Bは完全に別人物なので、ひずみがでてきてしまう。
そのひずみが、唯へ伝わり……あとはわかるな?
澪ちゃんだけは不幸にしないでやってくれ
最後は澪と仲直りしたいりっちゃんBがAの世界に来たって解釈で良い?
最後の解釈は、言わないでおく。。
じゃ、そろそろ寝るわ
付き合ってくれて有難う。
前作の蛇足になるかな、とも思ったけれど、頭に浮かんできてしまったものは仕方がない。
色々とわからないところは、推測したり想像したりしてくれれば幸い。
あと、りっちゃんと結婚したい
それじゃノシ
最後の律にはゾッとしたぜ
乙
外が明るい・・・今日も研究なのに・・・
向こうの世界でこっちの世界を知っているのはムギと片方の梓だけだよな?
・・・ってうわああああああああああああああああ
朝っぱらから見るEDじゃなかった・・・
乙
早く、早く次を・・・
なんか期待とは違った進行だが、まだ続きがあるようなんで…。
向こうの世界で犠牲者が出てるのならどっちの世界も幸せになれそうもないな。
こっちの唯はまた壊れそうだし。
戻ってきても憂がいないとなったらどうなることやら。
つか全く同じ場所で同じ殺され方でしかも加害者の妹が被害者とかいう事件が発生したら、
唯の裁判も進展が遅れるのでは。
完結してから読みたかったな
ものすごいもやもやする
コメント
- SS図書館の名無しさん 2010/09/25 (土) 19:25
-
まだ続くのかw
- SS図書館の名無しさん 2010/09/25 (土) 23:57
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管理人、これの続きって、
律「そりゃあたしは、部長だからな」
だろ。 - SS図書館の名無しさん 2010/09/26 (日) 0:17
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すいません。前作リンク貼りミスってました(ノ∀`)
確認・修正完了しました。 管理人 - SS図書館の名無しさん 2014/02/17 (月) 4:37
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律「どんなに返事がなくたって」 – 2ちゃんねるSS図書館
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- SS図書館の名無しさん 2014/02/26 (水) 19:45
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