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ローゼンメイデンの話「6月の少女」【後編】

ライトノベル新刊情報サイト「ラノベ総合案内所」が出来ました.

< メイン登場人物 >

206: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/29(木) 23:20:20.15 ID:LHWNoF3M0
「もう何も言う事ないわ」

「う…」
 頭を押さえる真紅。
「勝手にしてなさい」
 ベッドに寄りかかり、立ち上がる水銀燈。
「そんな甘っちょろい考えじゃアリスになんてなれっこないわ」
「………」
 真紅が睨んでいる。
「ただの逃げじゃない」
 真紅を嘲笑する水銀燈。
「覚えておきなさい真紅」
 鋭く睨み返す。
「物事に『次』なんてないのよぉ」
「………」
「めぐは死んだ」
 少し口調が弱くなる。
「骨になった」
「……」
「蒼星石も、雛苺も、雪華綺晶も」
「…………」
「皆もういない」
 その名を聞き、真紅が視線を泳がせる。
208: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/29(木) 23:26:48.37 ID:LHWNoF3M0
「それで残された姉妹が」
「………」
「こんなみっともない考え方してるなんて、ねぇ」
 真紅の目が見開かれる。
「貴女が真っ先に脱落したら良かったのにね」
 ぷっと笑う。
 真紅の目が吊り上がる。
「え?真紅」
 瞬間、真紅が水銀燈に体当たりをかます。
「うあっ」
 バランスを崩し、床に倒れこむ。
 ゴッ、という音。
「ぐっ!」
 真紅が殴ったのだ。
「うあああああ」
 髪をつかみ、今度はぱしっと叩く。
「やったわねこのくそガキ!」
 両手で真紅の首を締める。
210: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/29(木) 23:32:03.27 ID:RvF2RleD0
ここからが真のアリスゲームなのだわ・・・・
211: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/29(木) 23:36:05.89 ID:LHWNoF3M0
「うっ」
 思わず両手を放す真紅。
「はあっ」
 左足で腹を蹴りあげる。
「ごほっ」
 真紅が仰向けに吹っ飛んだ。
 それを追いかける水銀燈。
「あっ」
 無い右足の方向にバランスを崩し、倒れる。
 真紅が起き上がり、隙をついて水銀燈を押し倒す。
「かはっ」
 右足のひびが広がり、ぼろぼろと崩れているのが見える。
 真紅の動きが止まった。
「う……う……」
 苦痛に顔を歪める水銀燈。
 真紅は水銀燈から身体を離し、震え始める。
212: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/29(木) 23:39:47.84 ID:LHWNoF3M0
「あ…あ…」
 両手で顔を覆う。
「わ…私…私…う…」
「………」
 水銀燈が、息も絶え絶えに真紅を見やる。
「うわあああああああああっっ!!!ごめんなさい、ごめんなさい水銀燈!」
 泣き崩れる真紅。
「私、私貴女に酷い事を……!!!」
 仰向けの水銀燈の胸に、すがるようにして泣きわめく。
「………」
 そんな真紅を見て、水銀燈も涙を浮かべている。
「泣くんじゃないわよ真紅」
「うううう」
「真紅!!」
 びくっと真紅が顔を上げる。
213: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/29(木) 23:40:37.59 ID:LHWNoF3M0
「泣くくらいなら、必死になって追いかけてみなさいよ」
「………」
「生きてるんでしょう」
「……水銀燈」
「ふざけてんじゃないわよ、このくそガキ」
「……」
 真紅は圧倒され、言葉が出ない。
「くそガキはくそガキらしく」
「………」
「泣きわめきながら追っかけなさい」
 真紅を見つめるその瞳は、いつもの穏やかな紫に戻っていた。
「分かったの」
「………」
 真紅は顔を伏せ、目を逸らした。
214: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/29(木) 23:40:56.68 ID:PirftBJy0
>>1の書く水銀燈はいいお姉ちゃんだよな
215: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/29(木) 23:47:43.71 ID:oy9xsF7i0
かっこいい姉貴だなあ
216: 荒ら島さん 2008/05/29(木) 23:50:33.34 ID:bCXcec0DO
いい姉すぐる
泣けてきた
218: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/29(木) 23:56:42.86 ID:LHWNoF3M0



 ジュンのアパート。

 いつものようにドアを開けると、明かりがついている。
「あれ」
「お帰りなさぁい」
 ひょこっと部屋から顔を出したのは、水銀燈だった。

「珍しいな、最近になって」
 ネクタイを外しながら答えるジュン。
「ええ、ちょっとお願いがあって来たのよぉ」
「お願い?」
「そうよぉ、名古屋に行く前にね」
「そうか、奇遇だな」
「?」
 首をかしげる水銀燈。
219: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 00:01:05.42 ID:t5vkHfQl0
「僕も、名古屋に行く前に、お前に用事があって」
「用事?何かしら…」
「いいよ、水銀燈から言ってくれ。Yシャツ脱ぎながらじゃ正直話しづらい」
 そう言って、後ろを向くジュン。
「………」
 水銀燈はしばらくその背中を見つめていたが、やがて口を開く。
「少し無理なお願いかもしれないけど」
「ああ、いいよ別に、言ってくれ」
「足を直してほしいの」
 ジュンが振り向く。
「不便だから」
 水銀燈の右足を見つめる。
「…前より酷くなってないか?それ」
 亀裂が走り、そのうちパーツ自体がバラバラになってしまいそうである。
「ええ、ちょっとね」
 ふふっと笑う。
「お礼はするわぁ」
 そう言って、悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「ね?いいでしょ」
 不覚にもどきっとするジュン。
220: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 00:03:04.19 ID:T1X+8H1MO
ああああ続き気になるけど
寝る

銀ちゃん可愛いよ銀ちゃん
221: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 00:04:43.54 ID:3bl2CODx0
wktk
222: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 00:08:42.93 ID:t5vkHfQl0

「真紅さ」
 ジュンが口を開く。
「何か、変わったとこなかったか」
 水銀燈がジュンを見やる。
「……特にないわよぉ」
 水銀燈を新聞紙の上に座らせる。
「いつも通り」
「そうか」
「あの子も吹っ切れたのかもねぇ」
「…それならいいんだけど…水銀燈」
「ん?」
「恥ずかしかったら言ってくれ」
「なぁに」
「あの……」
 しどろもどろになる。
「何よ、はっきり言いなさい」
「足をさ」
「はい」
「付け替えないと、いけないから」
「……うん」
「でも、そのためには」
「………いいから一口で言いなさ……」
 水銀燈はそこでようやく気付いた。
「ドレスとドロワースを、脱がないと」
 ジュンが目を逸らしたまま、頭をかいた。
223: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 00:09:38.06 ID:c5EdGcql0
この歳でもウブなJUMwww
224: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 00:10:26.25 ID:3bl2CODx0
なんという夢のような状況wwwww
225: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 00:10:28.57 ID:BewCgsdm0
JUMかわいいよJUM
226: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 00:13:25.50 ID:t5vkHfQl0

「………待って」
「…うん」
「心の準備が出来るまで」
 水銀燈の鼓動が急に激しくなる。
「その前に」
「………」
「あ、貴方の用事って、何かしらぁ」
 声が震えている。
 前とはわけが違う。
 確実に太ももの付け根を、ジュンには見せなければならない。
 いや、私は人形だ。今更何を。
「あ、ああ、いや、僕の用事ってのも、お前の足の修理の事だったから」
「え」
 ジュンがおもむろに、クローゼットから足のパーツを取り出す。
「長さを合わせたりで、少し時間がかかるかもしれないけど、いいか?」
 一瞬きょとんとする。
「え、ええ、私は別に…でも」
「でも…何?」
「用意がいいのねぇ。忙しいのに」
 不思議そうに見やる。
「結果を出しててバレなきゃ、別にいいんだよ、営業中にこういう店に寄ってもな」
「はあ」
 その時、水銀燈は、ジュンが何故この仕事を続けていられるのか、
分かった気がした。
227: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 00:15:58.79 ID:e1+CDiJOO
昔は好きだったけど、自分の仕事をJUMに当てはめてるように思えて一気に気持ち悪くなった

ごめん
228: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 00:20:29.27 ID:t5vkHfQl0
「ねえ」
 背後から頭のリボンを外すジュンに、水銀燈が問いかける。
「うん?」
「訊きたいんだけど」
「何だよ、勿体ぶって」
 外したリボンを脇に置く。
「ジュンは真紅をどうしたいの?」
「え」
 腕のリボンも、一つずつ外し始める。
「…どうしたいって?」
「鈍いわねぇ」
 振り返る水銀燈。
「名古屋に連れていきたいかどうかって事よ」
「………」
「どうなの」
「…どうするも何も、あいつが来ないって言ってるんだから」
「違うわ、私が訊きたいのは貴方の意見」
 ジュンの手が止まる。
「…分からない」
231: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 00:41:40.04 ID:t5vkHfQl0
「そう」
 沈黙。
「ありがとな」
「え」
「入院中部屋片付けてくれて」
「………」
「別に…」
「お前はどうするんだ?逆に訊くけど」
「…私?」
「これから、真紅や姉ちゃんと、ずっと暮らすの?」
「………」
 どう答えていいか分からない。
「まあ、真紅がつらそうなら」
「………」
「一緒にいてやってくれ。翠星石も一緒に」
「……」
「…どうした?」
「…いいえ、何でもないわ」
232: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 00:47:15.52 ID:t5vkHfQl0



「よし」
 明け方近く、ジュンは膝をぱんと叩いて、声を上げた。
「……ありがとう、ジュン」
「立ってみろよ」
「ええ」
 ベッドを支えに、ぐっと立ち上がる水銀燈。
「まあ………」
 そこから、1歩、2歩と歩行する。
 両足の長さはぴったりで、
歩くのにも支障はない。

233: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 00:48:20.87 ID:t5vkHfQl0
眠いので
ちょっと寝るよ
236: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 00:49:20.58 ID:3bl2CODx0
くそ・・・気になるけどもう寝ないとorz
238: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 00:51:55.71 ID:c5EdGcql0


明日も楽しみにしてるよ
239: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 00:56:48.78 ID:Xv/fMGwqO
本当に乙

そして>>1と皆の為に
保守
251: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 04:27:18.70 ID:t5vkHfQl0
 水銀燈は驚いていた。
 自分の身体が、ようやく元に戻ったのだ。
「…すごいわ」
 3歩進んだところで立ち止まり、ジュンを振り返る。
「ありがとう」
 そう言って、にっこりと微笑む。
「…いや、別にいいよ、水銀燈」
「そうだわぁ、お礼」
 顎に手を当て、少し水銀燈は考えていたが、しばらくして
両手を後ろに組み、ジュンに近寄る。
「ジュン」
「うん?」
「何してほしい?」
「えっ」
 顔を覗きこむ水銀燈。
「…や、特に何も…」
「そう」
 ふと、思いついたようにジュンの膝に手を乗せる。
「じゃあ、私のしたい事をするわぁ」
 ふふっと笑ったかと思うと、次の瞬間、水銀燈はゆっくりと、
ジュンの首に手を回してきた。
252: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 04:32:49.77 ID:GaRd0luR0
待ってたぜ
253: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 04:34:42.65 ID:t5vkHfQl0
「な、ちょ、ちょっと」
「ごめんなさいね、私こう見えて淋しがりやなのよ」
 両手を首の後ろで組んだかと思うと、
ジュンの膝に座ってくる。
「あの子と同じで」
「え」
「今日だけ許して頂戴」
「…」
「あの子にも心の中で謝っとくから」
 手を離し、すっくと立ち上がる。
「あの子はね、強がっているだけ、本当は」
 次の瞬間。
「うわっぷ」
 ジュンが仰向けに倒れこむ。
直ったばかりの両足でぴょんと跳ね、ジュンを床に押し倒したのだ。
「ふふ」
 ジュンの胸の上に跨り、ぱら…と落ちる髪をかき上げる。
「す、水銀燈…?」
 ジュンの顔の横に両手をつく。
「きっと貴方と、こんな事したいって思ってるのよ」
 妖しく微笑みながら、水銀燈が呟いた。
254: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 04:35:00.75 ID:5xldKs610
待ってた甲斐があった
255: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 04:40:00.56 ID:t5vkHfQl0
「心の奥底で」
 銀色の髪が、ジュンの唇にかかる。
ジュンの唇に手を這わせながら、それをゆっくりと払う。
「お、おい…冗談は…」
「ふふ、なぁに真っ赤になってるのよぉ。人形相手に、貴方変態ねぇ」
 くすくすと笑う水銀燈。
「な、何を」
「ねえジュン、私のお願い、聞いてくれなぁい」
 両手を曲げ、ジュンの顔と水銀燈の顔が近づいていく。
「めぐが死んでしまって」
「……」
「私の心に穴が開いているの」
 ジュンの鼓動が収まらない。
「私淋しいの。ね、ジュン……」
 胸に手を這わせる。
「貴方に満たしてほしいわ」
「す、水…」
「何したっていいのよぉ」
256: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 04:48:00.60 ID:t5vkHfQl0
 ふうっと息を吹きかける。
 ジュンの肌がぞわっとなる。
「どうせ真紅もいないしねぇ」
「………」
 静かに伏せり、ジュンの首筋にキスをする水銀燈。
「………」
 胸に両手を置き直し、跨ったまま、そのまま何度も頬をすり寄せる。
「じょ、冗談はそこまでにしろよ、な…」
「きっと、真紅も貴方と、こういう事したいって思ってるのよ」
「え」
「………」
 胸元に伏せったまま、水銀燈はしばらく動かない。
「貴方と一緒にいたい。貴方に満たされたい」
「あ、あいつが…?」
「さすがに、あの子が望む方法は、また違うでしょうけど」
「…こんな事を?分かるのか?」
 起き上がる水銀燈。
「分かるわよ。馬鹿にしないで」
「……」
「一応私は、ローゼンメイデンの長女なのよ」
「…」
「これでもね」
 そこまで言うと、水銀燈はそっと、ジュンの身体から離れた。
257: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 04:53:22.75 ID:t5vkHfQl0
 呆けたように、床に座り込んでいるジュン。
それをベッドから見下ろしている水銀燈。
「あの子も淋しがりだから」
 悲しそうな顔をする。
「真紅は貴方を待ってるわ」
「僕を?」
「ええ」
 視線を下に向けるジュン。
「誰にでも分かるような、でも」
「……でも?」
「どこか遠い、貴方にしか分からないような場所で」
「……そうかな」
「聞いて、ジュン」
「……」
「あの子は耐える事で、波風が立たないようにしている」
「……」
「でも、このままじゃいつか、あの子は壊れてしまう」
「………」
「もう、眠ったまま、起きなくなるかもしれない」
「………」
「社会のルールに飛び込んで生活するには勇気がいるわ」
 ジュンが顔を上げる。
258: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 04:59:15.96 ID:t5vkHfQl0
「その意味で貴方は立派よ。でもね」
「……」
「そのルールい従い続ける事で」
「……」
「大切なものを見失ったら、全てが無意味になってしまうのよ」
「……」
「貴方の上司も」
「……」
「のりも」
「……」
「貴方も」
「……」
「金糸雀も、翠星石も」
「……」
「私も」
「………」
「真紅も」
「………」
「大切なものを守るために、生きているのだから」
「………」
「そして、貴方と真紅の間には、大切なものがある」
「大切な…もの…」
「いいこと、ジュン」
「……」
「それを忘れないで」
「………」
「あの子の姉として、言っとくわ」
 水銀燈が、そこで言葉を止める。
 その二つの紫色が、ジュンの目を、じっと見つめていた。
260: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 05:06:50.48 ID:t5vkHfQl0
 灰色に淀んだ空。
 時おり、ゴロゴロ…と音が聞こえる。
「あっ、ちょっと停まって下さい」
 後部座席から、ジュンが声を掛ける。
「はいよ」
「そこのピンクの家の前で…」
 ガチャッとドアが開く。
 外に出、見上げるジュン。

 ププーッとクラクションの音がする。
振り返ると、後ろで車が2台、止まっていた。
「あっ、すみません」
「兄ちゃん、どうするんだい、出るの?」
「あ」
 時計を見るジュン。
駅までは、信号を挟んで残り4キロほど。
電車が出るまで、10分ほど。
「……分かりました、出して下さい」

 そのクラクションの音で、
水銀燈が窓の外を見た時に、ジュンがタクシーの中に戻っていくのが見えた。
「あれは」
 すぐさまベッドから降り、鞄に閉じこもっている真紅を叩く。
「真紅!!起きなさい!」
 どんどん、と幾ら叩いても、何の反応もない。
261: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 05:21:01.26 ID:t5vkHfQl0
 外で、ブウウウ…という音が遠のいていくのが聞こえた。
「っこの…!」
 ガァンと思い切り蹴飛ばす水銀燈。
「あっだっ」
 鞄が跳ね上がり、一回転して床に落ちる。
 あまりの衝撃に、水銀燈は右手で足を持ってとび跳ねた。
その左手が、ぶらんぶらんと揺れている。
「…何の騒ぎ…」
 キィ…と開いた鞄から、真紅が不機嫌そうに顔を出す。
「今、ジュンが出発したわよ」
「え?」
「玄関前にタクシーが停まっていたわ」
「…そう」
 言いながら、再び鞄に戻ろうとする。
「ちょ、ちょっと待ちなさい」
 肩をつかむ。
「追いかけないの」
「………」
 じろっと水銀燈を見やった後、黙ったままの真紅。
262: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 05:24:27.85 ID:t5vkHfQl0
「………」
「いい?真紅。これを見なさい」
 水銀燈は自らの右手を見せる。
 その手がかたかたと動き始めている。
「左手はもう動かないわ」
「……」
 目を見開く真紅。
「貴女もよ。その右手」
 鞄の中で気付かなかったが、真紅の右手は既に痙攣を終え、だらんと垂れさがっていた。
 がくんと膝が崩れ落ちる水銀燈。
「あ」
 立とうとしても、なかなか立ち上がれない。
「…水銀燈」
「私は歩ける内に、nのフィールドで眠りにつくわ」
「………」
「貴女も」
「………」
「もう今日中には、私たちはこの時代とさよならよ」
「……そんな……」
 何度持ち上げようとしても、その右手は動かない。
263: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 05:28:42.67 ID:t5vkHfQl0
「次に会う時は、私は貴女のローザミスティカを、容赦なくもらう」
「……」
 こちらを鋭く睨む。
「だから、これが…姉としての最後の命令よ」
 すがるような目で見る真紅。
「真紅、今から必死であのタクシーを追いかけなさい」
「………」
 言葉を待たないうちに、水銀燈は真紅の両肩をつかみ、
「うおあああああ」
 思い切り、窓に向かって投げた。
264: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 05:35:04.89 ID:t5vkHfQl0

 ガシャアアアンと音を立てて、真紅の身体が外に吹っ飛ばされた。
「きゃあああああ」
 空中でくるくると回転し、ブロック塀にぶつかり、地面に落ちる。
「早く行きなさい!!このくそガキ!!」
 真紅が唇をかむ。
「早く!!もうジュンとは会えないのよ!!」
「わ、私は」
「いいから早く行きなさいよこの馬鹿!!」
 きょろきょろと見回すと、左方向、200メートルほど先に車の列が見える。
「真紅!!」
 目覚まし時計が飛んできた。
「ひっ」
 横でガシャンと音がする。
「……!!」
 その音が合図になったかのように、真紅はだっと走り始めた。
266: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 05:39:35.22 ID:t5vkHfQl0
 真紅はわけが分からないまま、走りだしていた。
 このまま走っていていいのだろうか。
 周りの視線が怖い。
 ジュンに迷惑をかけてしまう。
 今更……

 それでも、足が止まらない。
 走っているうちに、頭の中から言葉がなくなっていった。

 信号で止まっているところに追いつく。
「ジュン!!」
 久しぶりに、その名を呼んだ。
 ジュンがこちらにようやく気付いた。
 信号が青に変わり、タクシーが出発する。
後続の車が、真紅を驚いた目で見つめていた。
268: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 05:52:15.51 ID:T1X+8H1MO
銀ちゃんキスはしなかったのね…
269: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 05:59:26.50 ID:T1X+8H1MO
真紅って普通の服着ればただの美少女じゃん

解決じゃん
292: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 15:50:57.70 ID:CXJMhmxe0
真紅を投げた銀様のイメージがバキ風になって困る
295: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 16:33:25.93 ID:pWoVV9JsO
>>292
おまえのせいで真紅が這い上がってきて第2ラウンドが始まっちゃったじゃねえか
296: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 16:35:06.90 ID:T1X+8H1MO
>>295
復ッッッ活ッッッ!!
真紅復活ッ
真紅復活ッ
真紅復活ッ

297: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 16:48:50.73 ID:c5EdGcql0
>>292
>>295
>>296

ちくしょう
例の同人誌を思い出したじゃねえか
316: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 20:45:12.05 ID:J8C6X77fO
保守するわぁ
324: 荒ら島さん 2008/05/30(金) 21:54:20.27 ID:pyR72nYmO
ほっしゅ!オラ荒ら島
330: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 22:42:50.36 ID:t5vkHfQl0

 割れた窓。

「………はあ、…はあ」
 膝をつき、息を整えて水銀燈がぼんやりとそれを見つめている。
 ギシ、と鈍い音がして、一瞬気が遠くなる。
「…何…やって…んのかしらね…私…」
 動いたせいか、眠気が急激に襲ってきている気がする。
 顔の前で、メイメイがチカチカと光っている。
「ええ、分かって…るわ」
 カタタ、カタタ、と、一定の間隔で、自分の意識が遠くなりつつあるのが分かる。
「………」
 ベッドにもたれかかり、雛苺のものだった鞄を持つ。
「………」
 かくん、と意識を途切れさせながら、水銀燈が窓の外、灰色の空を見上げる。
今にも雨が降ってきそうである。
「めぐ、私は、この時代に、目覚めら、れて、良かったわ」
「……」
 視線を伏せ、ドアを開けて、階段を下りる。
手すりにつかまり、一段一段、慎重に踏みしめていく。
「真紅」
 納戸の中、鏡の前で、再び口を開く。
「頑張んなさい」
 
 そう言って口元を小さく緩ませ、水銀燈はゆっくりと、
鏡の中に消えていった。
331: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 22:44:05.30 ID:oujQFZTi0
ひゃああああああはあああああああああああ
333: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 22:48:50.07 ID:t5vkHfQl0


「あれは……」
 何度も後ろを振り返るジュン。
 あの紅い影は、確かに真紅だった。
「すみません、停めて下さい!」
 大通りを渡った向かいのコンビニで、タクシーを停める。
「真紅……!」
 タクシーを飛び出し、ジュンは今自分が出てきた脇道に眼を凝らした。

334: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 22:49:09.70 ID:CXJMhmxe0
しゃあああああああああきたあああああああああああ
335: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 22:50:35.57 ID:J8C6X77fO
おかえりわっふるwktkわっふる
336: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 22:56:29.92 ID:c5EdGcql0
なんだかこの後も超展開がきそうでwktkが止まらん
337: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/30(金) 22:57:16.91 ID:t5vkHfQl0

「え、え?ど、どうしたらいいの、これは」
 立ち尽くす自分の横を、車がどんどんと大通りに向けて出ていく。
 おろおろする真紅。
「ジュ、ジュンは?どこへ行っちゃったの」
 交差点の端に立ち、きょろきょろと辺りを見回す。
 ブウン、と音を立て、車が真紅のすぐ傍をかすめていく。
「きゃあっ」
 驚き、その場に倒れ込む。
「ジュン、どこ?どこなの、行ってしまったの」
 泣きそうになりながら、真紅が顔を上げる。
 向かいの信号が赤に代わり、交差する道路から、次々と車が走り始める。

 視界の中、大通りの向こう。
 コンビニの駐車場に停まったタクシーから、人影が出てくるのが見える。
 真紅が声を上げる。
「ジュン!」
 通り過ぎる車に遮られながら、ジュンが辺りを見回しているのが分かった。

339: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 22:59:20.51 ID:mzDJJ4Wb0
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3493930
さーてニコニコで祭発生だよー^^
みんなで凸しよう!
ランキング1位でVIPPERの底力みせようぜ!!!!!
343: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 23:21:42.54 ID:T1X+8H1MO
また粉々に…
344: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 23:29:03.93 ID:GaRd0luR0
このデジャブはまさか・・・
346: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 23:36:48.99 ID:O03tTqfjO
>>345
もしくは嘔吐下痢
347: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 23:50:06.92 ID:KOY6GNSsO
とりあえず、保
348: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/30(金) 23:57:39.81 ID:kFrivJMxO
田舎の母ちゃんから電話?
349: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/31(土) 00:04:47.68 ID:9npyM/pM0

「ジュン!」
 真紅が金切り声を上げる。
 足を踏み出そうとするが、一瞬目まいがする。
「あ…ぅ」
 世界が歪み、気が遠くなる。カタタ、と震える真紅。
「………」
 バランスを崩し、膝をつく。
 おかしい。こんなに早く。
「………」
 急激な眠気が襲い、そこからしばらく、真紅は立ち上がれなくなった。
「う……う、うぁ……」
 ごしごしと目をこする。だが、一向に眠気は収まらない。
「だ、大丈夫…」
 膝を支えにし、立ち上がって道路の向かいを見る。
 ジュンが何事か叫んでいるのが見える。
「……い、今行くから…ジュン……」
 目の前の、車の往来に気づいているのかいないのか、
真紅が道路を横断しようとしているが見えた。
350: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 00:05:37.14 ID:JmvrmSDN0
うわああああああああああああああああああああ
まさかまさかまさかあの時と同じ・・・
351: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 00:08:13.33 ID:7QZxpPh/O
それだけはやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
352: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/31(土) 00:14:07.39 ID:9npyM/pM0
「きゃあっ」
 ゴオーッと車が通り過ぎ、風圧で尻もちをつく真紅。
「真紅!!」
 背筋が凍る。
 周りが見えていないのだろうか。
「じっとしてろ!!今行くから!!」
 その声が届いたのか、真紅が再びこちらを見、立ち上がる。


「ジュン!」
 信号は元より、真紅の目には、ジュン以外のものは見えていなかった。
「行か、なきゃ……」
 かたた、と震える自分の身体。
「………」
 ゴオオ、と通り過ぎていく音が静かになった。
思わず真紅は走り出す。
 パパーッと、耳をつんざくような音が聞こえる。
353: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 00:15:03.26 ID:+Ct2PRi4O
ジャンクフラグ…
354: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 00:19:25.52 ID:I5KXqKN30
死ぬのはいやあああああああああ
355: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 00:21:44.57 ID:sKo1aptD0
これは・・・
356: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 00:22:15.97 ID:WpGYgWo80
やめてえええええ
357: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 00:27:27.56 ID:fKC/N+3eO
うわあああああああああぁあ゛ぁあ゛あ゛あぁ
358: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/31(土) 00:28:58.99 ID:9npyM/pM0

「あうっ」
 すれすれの所で、真紅を車がかすめていく。
 勢いあまって真紅が倒れ込んだのは、
片側二車線の大通りの中心、中央分離帯の切れ目だった。
「あああ……真紅……」
 体勢を立て直そうとするも、ゴオーーッと容赦なくかすめる車に、
ただ、真紅は震えている事しか出来なかった。
 きっと、あの位置では、少し動いてしまえばすぐに、
轢かれてしまう。
 目の前の信号は、いつになったら青になるのか。
 そうしたら。
「真紅!!じっとしてろ!!動くな!すぐ行くから!!」
 ジュンがありったけの声を張り上げた。

359: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 00:32:25.69 ID:Mt9cyv+cO
しかし今回は投下速度がさらに遅いな・・・
360: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/31(土) 00:32:44.37 ID:9npyM/pM0
 ぽつり、ぽつりと雫が落ち、すぐにざあああという雨に変わる。

 接触がなかったのは、殆ど奇跡と言ってよかった。
 ツインテールが何度も風に舞い上がり、目の前でゴオーーーと
車が通り過ぎる。
「ひっ」
 真紅は座り込んだまま、動けなくなっていた。
 まず恐怖がひとつ。
そして、言う事を聞かない、自分の両の足。
「どうして…どうして……動いて、お願い、動いて!!」
 べしゃっと前のめりに倒れ込む。
「ううう」
 顔を上げる。
 視界の先、ほんの10メートルほど先に、あの人はいるのに。
「ジュン、ジュン……!!」
 涙で、真紅の視界が霞んだ。
361: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/31(土) 00:34:43.42 ID:9npyM/pM0
 倒れ込んだ体勢から上半身を起こし、何か叫んでいる。
「真紅!!!」
 真紅が泣いているのが分かった。
 車に怯えながら、涙を流しながら、それでも、自分を
求めているのが。
「真紅……」
 顔をくしゃくしゃにする。
「真紅!!待ってろ!いいんだ、そこにいるだけでいいから!!」
 幾度となく、自分の名前を呼んでいる人形。
聞こえただろうか。
「………?」
 真紅の様子がおかしいのに気づく。
 先ほどから、かたた、かたた、と、一定の間隔で、全身が揺れている。
「あれは……」
 真紅が這いつくばったまま、前に進もうとしているのが見えた。
「……!!」
 右から来る車。少しの間隔を見計らって、ジュンが飛び出した。
362: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 00:37:40.78 ID:JmvrmSDN0
JUMには頑張ってもらわんと困る
363: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/31(土) 00:38:20.17 ID:9npyM/pM0
 プ――――ッとクラクションが鳴る。
 
おかまいなしに、ジュンは走った。

8メートル。
6メートル。

ブオオオオ、というトラックの音。

 ジュンの目に、少女が映っていた。
ずっと昔から、
自分が姉を嫌悪していた頃から、
いつも傍にいた、真紅のドレスを纏った人形。
その金髪が風になびくと、太陽の光が反射して、一層
美しく見えたものだった。
 いつも強気で、時に人から誤解を招き、衝突する。
それから長い時を経て、自分がお金を稼ぐ身となり、
距離が出来てしまっても、
 これから遠く離れる事になってしまっても、
黙って自分の歩く姿を見守っていてくれた。

 だが、今、目に映る彼女は、雨に濡れながら、
通り過ぎる車に怯えながら、涙を流しながら、
自分の名前だけを、必死に呼び続けている。

 ジュンの行動に迷いはなかった。
364: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 00:39:40.02 ID:fKC/N+3eO
はらはらわっふる
365: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/31(土) 00:40:29.48 ID:9npyM/pM0
4メートル。
2メートル。

パパ――――ッという音が雨を切り裂く。

 ふと、ジュンは自分の感覚が、ゆっくりになるのを感じた。
何かスローモーションで時が流れているような、
1秒が2秒になり、3秒になり。

 ほんの一瞬の、
たどり着けないような、妙な感覚。



もう一度、ジュンは、少女の名前を叫んだ。

366: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 00:43:41.41 ID:sKo1aptD0
スローモーションはやばいだろ・・・
367: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 00:48:45.43 ID:WpGYgWo80
まさか走馬と……
368: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 00:50:14.57 ID:Mt9cyv+cO
JUM・・・
369: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 00:50:27.64 ID:zriF9F1Y0
ゴクリ…
370: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 00:50:40.26 ID:RSBcUXlp0
願わくばハッピーエンドを・・・
371: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 00:51:17.67 ID:fKC/N+3eO
死亡フラグが…。
372: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/31(土) 00:51:42.53 ID:9npyM/pM0







「真紅!!」
 間一髪の所で真紅を抱き上げ、中央分離帯へと倒れ込む。
その後ろを、大型トラックが、ゴオオオ―――と通り過ぎていった。

 彼女の両脇に手を回し、今一度抱きしめる。
「ジュン……!!!」
 泣き声が一層大きくなった。
 震える少女を、ジュンは必死に抱きしめた。
「真紅…」
 自分が泣いているのがわかった。
「ジュン…!」
 それに呼応するように、真紅もジュンの名前を呼び続ける。
 いつの間にか、雨は土砂降りへと変わっていた。
「ジュン」
「真紅」
「ジュン、ジュン…!!」
「ごめんよ、真紅…!」
その中で、二人は抱き合ったまま、いつまでも泣き続けた。

374: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 00:52:33.04 ID:SmmVXxKi0
事故らないでよかったあああああああああ
375: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 00:53:19.68 ID:zriF9F1Y0
無事でよかった
376: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 00:59:16.10 ID:sJ/gI8PxO
なんという焦らし
もっとペースを…
377: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 00:59:53.00 ID:JmvrmSDN0
素でほっとした
378: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/31(土) 01:02:26.25 ID:9npyM/pM0






「ごめんな、こんな格好で」
 人影もまばらな電車の中。
 かたた、かたた、と揺れ続ける真紅を、
Tシャツ姿のジュンが膝に乗せている。
「いいえ、気にしな、いでちょうだい」

 髪を拭いた後、くしでとかすジュン。
「ごめんなさい」
 真紅が口を開いた。
「え?」
「迷惑、かけたわね」
 言いながら、ジュンの胸にすり寄る真紅。
「…いや」
 くしを置くジュン。
「嬉しいんだ、僕は」
 真紅がかたた、と揺れ、顔を上げる。
「嬉し、い?」
「ああ、正直」
「……」
「会えずに別れるのかと」
379: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:04:01.71 ID:sJ/gI8PxO
真紅…言葉が…
380: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/31(土) 01:10:47.17 ID:9npyM/pM0
「……」
「荷物は全部、別便で名古屋に送った」
「……」
「電車にも間に合うように行動した」
「……」
「でも、お前らに挨拶出来ずに終わるのかなって…」
「………」
「悲しかったよ」
「ジュン…」
「お前が人目も気にせず走って追いかけてくるまでは」
 真紅が不思議そうな顔をする。
「………」
「僕は嬉しかった」
「…どうして?迷惑じゃなか、ったの」
「ああ、ごめん、真紅…」
 頭を撫でる。
「鞄とゼンマイ、実家に置きっぱなしだな」
「………」
「姉ちゃんに、すぐに送ってもらうようにするから」
 真紅は視線を伏せ、黙ってしまう。
「……ね」
「うん?」
382: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:19:26.46 ID:0f/o7cgdO
支援
ローゼン復活したけどラストはみたくないな
383: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/31(土) 01:19:48.92 ID:9npyM/pM0
「嬉しかったって?」
「うん?」
「ジュンは、私が、あんな事して、あれだけ、ジュンの、生命を危険にさら、して」
かたたた、と大きな音がする。
「嬉し、かったの」
「………」
「ああ」
「そ、れは、どうして」
「分からない」
「わ、から…ない?」
「ああ。…でも、うまく言えないけど」
 ジュンの胸をつかんでいた手が、かくんと落ちる。
「いつもプライドや世間体や、信頼とかそういうものを」
「………」
「大切にして、自分が我慢ばっかりしてた」
「…………」
「そのお前が泣いている」
「……」
「僕が行かなきゃ、抱きしめてやんなきゃ、そう思った」
「………」
「義務感じゃない、そうしたかったんだ」
「…そう」
「お前のもとに行けて」
 真紅が目を細める。
「抱き合えたから」
384: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:20:14.72 ID:fKC/N+3eO
わっふるわっふる
385: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:21:32.96 ID:OoFqyyDB0
真紅が黙ってると俺の心臓止まりそうになる
386: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:21:47.48 ID:sGXADW5h0
http://live24.2ch.net/test/read.cgi/livevenus/1212161883/
http://203.131.199.131:8020/murakami.m3u
童貞の質問に童貞が答える童貞の童貞による童貞のためのラジオ

童貞たちがひっしにオナニーについてかたってます
あたたかくみまもってください^^
387: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:22:51.10 ID:sJ/gI8PxO
いつからジュンの独り言になるのか不安

お別れだけは…ちゃんと…
388: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:24:10.11 ID:7QZxpPh/O
真紅の喋り方に胸が苦しくなります
389: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/31(土) 01:27:38.62 ID:9npyM/pM0
「…」
「それだけだよ、嬉しかった理由は」
「……」
 真紅の口元が緩み、とん、と胸に寄り添う。
「ねえ、ジュン」
「ん」
「私ね、私は…」
「何だ?」
「全て、のローザ、ミスティカ、を集めて、お、父様に会う」
「……」
「今、はそん、なの、どうでも、いいの」
「………」
「お父、様の、ための、アリスな、んて」
「真紅…」
「私は、真紅」
 かた、かた、と、小刻みに震え始める。
「ローゼ、メイデンの、第5、ドール」
「………」
「そして、幸、せな、あな、たの、お人、形」
「………」
「いいの、私は、それで」
「真紅………」
「ジュン」
「うん?」
 震える手で、ジュンの左手を持ち上げる。
390: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:31:31.41 ID:sJ/gI8PxO
真紅いかないで…
391: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/31(土) 01:33:10.08 ID:9npyM/pM0

 薬指にぎこちなく口づけをし、まばゆい光がすぐに消える。
「これで、契約は、破棄。貴方、はもう、私の、家来でも、何でもな、くなった」
 ジュンを見上げ、虚ろな眼で、それでも微笑む真紅。
「だか、ら、ここ、からは、私の、ワガ、ママ」
 ぎゅっと、ジュンの両手が握りしめられる。
「私、貴方に、ついて、いきたい」
「え」
「やっぱり」
「……」
 真紅の目に、涙がにじんでいる。
「だっ、て、私、生き、てい、るもの」
「真紅……」
「もっと、貴方と、一緒にいた………」
 言葉が途切れる。
392: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:33:11.74 ID:djwikD0r0
真紅・・・
393: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:37:44.67 ID:qeAQhDlAO
甘き死よ、来たれ
394: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/31(土) 01:38:29.40 ID:9npyM/pM0
「お、おい、真紅」
「……」
「無理するなよ」
「…だいじょ、ぶ」
「…」
「あの、ね、私、こと、いら、なくな、たら、捨てて、いいから」
かた…かた…と、震えが次第に小さくなる。
「だから…………」
 真紅の蒼い瞳が、そこで閉じられた。
 寄り添った身体から、急激に力が抜けていく。
「………」
 ジュンの両手を握っていた手は、だらんと垂れさがっていた。
「眠っちゃったか…ごめんな、真紅…」
「………」
「早くネジ、巻いてやらないとな…」
 動かなくなった真紅の髪を、何度も撫でるジュン。
395: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:39:31.00 ID:JmvrmSDN0
ああああああああああああああああああああ
396: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:40:49.40 ID:sJ/gI8PxO
やっと本音が言えたのに……

ああああああああああああああああ
397: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:43:22.30 ID:lsa5ieIr0
uwaaaaaaaaaaaaaa
398: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:43:56.58 ID:QCAB8TFA0
(´;ω;`)ウッ
399: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/31(土) 01:44:32.66 ID:9npyM/pM0




 いつの間にか、窓の外に晴れ間が広がっていた。

雨上がりの空に、虹の橋が架かっている。

薔薇乙女たちと同じ、七色の、大きな橋が。


「…………」
 ジュンはしばらく外を見つめ、やがてあくびをする。
「…僕も一眠りするかな」
 ポケットからMDウォークマンを取り出し、イヤホンを繋げる。
「……」
 思い直したように、片方を、真紅の耳につけるジュン。
カチッとスイッチを入れる。

 流れてきたのは、BoAの「JEWEL SONG」。

「お前、好きそうだから…こういう曲」
 そう言って、もう一度、真紅を見やる。
 その眠りの表情は、少し笑っているように、
ジュンには見えた。
400: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/31(土) 01:48:18.65 ID:9npyM/pM0


―――私、貴方についていきたい


―――やっぱり


―――だって、私、生きているもの


―――もっと、貴方と、一緒にいたいもの


―――私のこと


―――いらなくなったら、捨てていいから


401: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:48:34.01 ID:QCAB8TFA0
朝まで保守…たのむ…
402: ◆JtU6Ps3/ps 2008/05/31(土) 01:48:49.32 ID:9npyM/pM0




―――だから…………






―――ずっと、貴方の傍にいさせて










ローゼンメイデンの話  完



403: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:49:31.18 ID:lsa5ieIr0
うわあああああああああああ

乙でした!
404: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:49:42.40 ID:QCAB8TFA0
とおもったら乙
405: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:50:18.16 ID:sJ/gI8PxO
うあああああああああああああああああああ

乙!
406: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:50:31.14 ID:F9IAYxEy0
(´;ω;`)
407: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:50:31.98 ID:RSBcUXlp0
>>1 お疲れ様!
408: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:51:09.82 ID:sJ/gI8PxO
>>402
もうこのシリーズは書かないの?
409: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:52:03.97 ID:2wrPEvtkO
>>1 乙 ローゼンめ……
411: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:52:41.78 ID:Mt9cyv+cO
>>1
また何か書いてほしいぜ
412: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 01:52:50.02 ID:7QZxpPh/O
>>1
今回も泣かせてもらったよ
またいつか帰ってきてくれるの待ってるぜ
432: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 02:17:32.95 ID:LMc/w12PO
>>1あなたがお父様か!?
リアルタイムで二回も遭遇できるとはおもわなんだ
433: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 02:18:34.07 ID:7KW8u3jz0
俺この話がもう見れんとか世界に絶望して死ぬかも試練
434: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 02:19:08.22 ID:+zCtN4qwO
泣け
泣けよ泣き虫
悔しかったらいつでも戻ってきやがれ泣き虫野郎
435: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 02:23:17.17 ID:fhv5bw960
もう…書かない…だと…?

…乙でした。
437: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 02:29:00.51 ID:Mxeokl1TO
乙だった…

そして俺は幸せな>>1のお人形
438: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 02:29:45.37 ID:RSBcUXlp0
>>1 のすべての作品に心打たれた
いい物語をありがとう
439: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 02:31:17.27 ID:weNFSx9n0
皆さん、次の>>1の作品をお楽しみに!
440: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 02:33:09.07 ID:7QZxpPh/O
双子メインの話がよみたかったなぁ
441: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 02:34:21.00 ID:Rlm4taz40
>1乙。
いろんな意味で桃種には描けないローゼンの結末だったとおもう。
442: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 02:45:20.57 ID:AhN08KFZO
本当に乙・・・俺も幸せな>>1のお人形
気が向いたらまた頼む
443: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 03:00:55.16 ID:JM+wixU9O
ローゼンメイデン
みんなの幸せなお人形
444: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 03:11:13.39 ID:QrI6wgn0O
今、追い付いて読み終わった
これ原作でいいよ…久々に泣かせてもらいました

乙です
446: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 03:39:22.37 ID:I5KXqKN30
おああああああああああああ
今、漏れは猛烈に感動している

番外編的なものを書いて欲しいが気のせいにしたいと思う。
447: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 03:53:22.23 ID:HEfaeqfBO
まとめサイトないの?
448: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 04:05:44.14 ID:OiwIo1510
久々にVIPで涙腺決壊した

>>1に心のそこから乙!
449: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 04:13:16.51 ID:I5KXqKN30
>>447
近い内にぷん太にまとめが乗ると思う
450: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 04:18:20.79 ID:HEfaeqfBO
>>449
ぷん太?
451: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あいよ2008/05/31(土) 04:21:20.69 ID:I5KXqKN30
href=”../test/read.cgi/news4vip/1211975349/450″ target=”_blank”>>>450
そんなぐらいググれカス
http://punpunpun.blog107.fc2.com/
452: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 04:28:39.33 ID:HEfaeqfBO
>>451
すいません
ありがとうございます
453: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 06:23:37.70 ID:uZ4wUAEHO
保守
今から前日の続き読むよ
わっふるわっふる
454: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 06:25:47.36 ID:gh6mBpLSO
一昨日見つけた時、スレも開かずにスルーしてしまった事を非常に悔やんでる。
455: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 07:06:01.94 ID:uZ4wUAEHO
目から汗が止まらない
>>1本当にお疲れ様でした。このSSに会えてよかった。
>>1さんの話に出てくるローゼンメイデンみんなが幸せになる事を祈ってます
456: 荒ら島さん 2008/05/31(土) 07:47:31.94 ID:HC/uDN9jO
あれ、目から紅茶が・・・
>>1お疲れ様でした。
もし、書きたくなったら
いつでも戻ってきて下さい
458: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 10:28:22.85 ID:6EqV8wVv0
じっくり読ませてもらいます>>1乙!
459: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 11:44:49.76 ID:PTqRD6b+O
>>1おつ!
帰ったらPCでゆっくり読ませて頂く。

これが最後っぽいけど、気が向いたらまた書いてくれ
久々にいい作品に出会えて俺も嬉しかった。
ありがとう
460: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 12:11:47.07 ID:pZtM1xbHO
>>1
乙!
BoAか…ちょっとCD買ってくる
462: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 14:21:40.12 ID:z77hl9M50
>>1
僕は君に会うために生まれてきたのかもしれない。
463: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 14:54:02.43 ID:RSBcUXlp0
after story みたいのは無いのだろうか・・・
真紅が次の時代まで目覚めないのか
それともJUMと一緒になるのかが気になる
464: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 14:56:24.30 ID:sKo1aptD0
今更だがここまで人気の書き手を見た事が無い
465: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/05/31(土) 15:25:28.15 ID:fhv5bw960
なんとなく保守

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